第3話
うーむ、成り行きで助けてしまったがどうしよう?
まあ、宿などに着いてから事情を聞くか。
そのためにもこの森を抜けなきゃだな。
とりあえず、彼等が来た方向に進んで行くか。多分、自然と抜け出せるだろう。
そんなことを考えていた時期が、俺にもありました。
~~~八時間後~~~
いつまでも歩いても同じ景色だ…………。
本当に彼等がこっちから来たのか疑ってしまうほどに、だ。
だが、生き物には出会えた。まあ最悪なことに1番会いたくなかった奴らだがな。
そう、何を隠そう俺は歩いている間に、スライムやキノコ、ゴブリン、ゴースト、骸骨、蜂、蛇、猿、狼、鳥、キマイラ、ドラゴン、龍などのモンスター達が五分おきくらいに俺に向かって襲って来るのだ。
なので俺は[蓄積]を使い、全て倒していった。
ある時は魔法を[蓄積]で防ぎ、そのまま撃ち返し、ある時はキマイラのブレスをくらい、腕が吹き飛んだりと、死闘を繰り広げた結果俺のステータスが今こうなってしまっている。
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ヨツヤ シロウ 18歳
種族 人間
性別 男
レベル 368
命力 1104000
魔力 0
ライフ 114
スキル
蓄積 痛覚無効
ギフト
全言語理解 固定レベルアップ
称号
神の祝福
異世界人
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そう、俺のレベルは3桁代になってしまっていた。てっきり、レベル100で打ち切りかと思ったのに、ここまで高くなってしまった。
多分ここまで高くなったのは[固定レベルアップ]のおかげだ。
これがあるおかげで、レベルがアップするほどレベルが上がりにくくなるということがなかった。
しかし、敵を倒す度にレベルが1ずつ上がるので、脳内ではずっと「レベルが上がりました」というアナウンスが流れていて、正直に言ってうるさかった。
しかし、これまでのことは全て、そんなに重要ではなく、本当に重要なのはここからだ。
なんと俺はこの戦闘の中で、死んでいるのだ。
しかも、一度や二度じゃない、それこそ、10回以上だ。しかし俺は今生きている。
そのカラクリこそ、ステータスの[ライフ]という項目だ。
俺は初め、この項目は俺の倒したモンスターの数でもカウントしているのかと思い、無視していた。
だが、[ライフ]が本当にカウントしていたのは、俺がいままで蓄積した命の数だった。
つまり、ステータスが正しいならば、俺は後百回以上生き返られるということになる。
さらには、一度死ぬと身体の欠損や毒や麻痺などの状態異常も治るのだ。なので俺の吹き飛ばされた腕も今では元に戻っている。
ただ、辛いのはレベルが上がり命力が上がっているのに、力などの能力が全然上がらないのだ。そのせいで、最初のうちは殴る蹴るで倒せていたものが、次の敵では腕力を蓄積しないと倒せなかったり、終いにはドラゴンを倒す時は、自分の腕が蓄積した力に耐えきれず、何本折れたか、10を超えた先から数えてない。
そのおかげなのか、痛覚無効というスキルを得ることができてラッキーだ。
ところで、今俺に向かって襲ってくるモンスターは一体もいない。
実は、少し前に、この森の主のような喋る黒い龍が「何故こんなところに人間が!!」、と言いながら、俺に襲いかかってきたので、気になったから[蓄積]で亜空間内に送り込んだのだ。
そうしたら、モンスター達は俺から怯えるように去っていった。
あいつは一体なんなんだろう?気になるなぁ。
そういえば、あいつを送った先には助けた奴らもいたな。
「気になるし、行ってみるか」
俺は[蓄積]を発動させ、亜空間の中に飛び込んだ。
~~~亜空間内~~~
「よっ、と」
そう言って俺は亜空間内に降り立った。
以前までは、閑散とした真っ白な空間だったが今は向こうの方に、黒い影が見える。
多分あそこに奴らはいるのだろう。
行ってみるか。
しばらく、走っていくと何やら話し声が聞こえてきた。
「―――――様、やつが―――ら、――――てしまいましょう」
「待て、バル――――。―――は早計だ。――――話し―――だろう」
「承―――――ました。では、――――――のように」
ん?何を話しているんだ?まあ、直接聞き出せばいい事か。
そう思い俺は、彼らに話しかけた。
「お前ら、何話してんだ?」
すると、彼らは一様にこちらを振り向き、目を見開いていた。
しかし、俺は気にせずに話を続けた。
「まあまあ落ち着いて。私からは危害を加えられない。まずは自己紹介から始めましょう。私の名前はヨツヤ シロウ、人間です。貴方達はなんていうんです?」
そう言うと、彼らは落ち着きを取り戻したのか、俺の方へ近づいてきて、先程の少年が話かけてきた。
「先程は助けてくれてありがとう。俺の名前はシンだ。よろしく」
と、俺に手を差し出してきたので、俺はその手を握り返した。
すると、それで安心したのか後ろの3人も挨拶してきた。?俺が送ったのは3人だったはずだが…………。
あの少年の次に来たのは、先程の少年と同年代くらいの赤髪美少女と執事のような燕尾服を着た白髪優男の老人で、それぞれ名前をリンとラーナルドというらしい。
最後に来たのは、俺と同年代くらいの鶯色の髪をした女だった。美少女というより、美女の方が似合ってそうなくらい、綺麗だった。
彼女の名前はバルージュと言うらしい。
さっきそこの少年と話していたやつだな。
―――――――――――――――――
俺は、各々の自己紹介も終わったと思ったので、彼らに本題を切り出した。
「何故貴方方は、こんなところにいたのですか?」
そう言うと、少年が切り返してきた。
「そういうアンタこそ、ここで何をしていたんだ…………?まさか………、魔王を倒しに来た、なんて言わないよな」
「魔王?この世界には魔王がいるんですか?」
「おいおい、その言い方だとまるで、アンタがこの世界の人間じゃないみたいじゃないか」
「ん?そうですが…」
そう言うと、彼等が揃って目を見開き、こちらを凝視していた。
何か不穏な空気を感じたので、本当のことを話した。
「信じるか信じないか、それは勝手ですが、私は訳あって、自分のいた世界で死に、神にここへ転生させられた、所謂転生者というものです」
「「「「なんだって!」」」」
そう言って、彼らは俺に敵意を剥き出しにして、身構えた。
俺は話を続けた。
「?どうしたんですか、そんなに慌てて」
「お前もしかして、異界からの勇者か!」
「いや、違いますが………」
どうやら彼らは何か勘違いをしてらっしゃるようだ。
「まずは落ち着きましょう」
「何を落ち着けというんだ!」
今度はシンさんではなくバルージュさんが叫んだ。
「まあまあ、まず、私が魔王を倒しに来たんだとしましょう。そうしたら、私が魔王の存在を知らないはずがないでしょう?」
「まあ、………そう言われてみれば、そうだな?………」
「そういう事です、なので信じてください」
「しかし、………」
そう言いつつ、彼らはまだ武器を下ろさない。うーん、じゃあ、もう一押しのために、ここでは武器が意味無いことでも教えるか。
「ところで…」
「なんだ」
「ここでは私にダメージは与えられませんよ」
「それは知っている。お前、死んでも蘇るからな」
ん?なんでその事を知っているんだ?と疑問の顔をしていると、バルージュさんが、
「何故知っているのか?という顔をしているな。実はここから、お前のことを見れるんだよ」
へぇー、そうなのか。俺でも知らなかったな、その情報。というか、脱線し過ぎた。そろそろ、話を戻すか。