第2話
「そうか、行くことにしてくれたのか」
「この場所にひとり、永遠にいるというのはつまらないし、異世界には少なからず興味があるしな」
「そう言ってくれると、助かるよ」
そう言って、俺と神の、行くのか行かないかという問答は終わった。さて、俺は異世界に行くにあたって、頼みたいことがあるのだが……、
「さて、君が行くということは決まった訳だが、巻き込んでしまったお礼に、何か私が手伝えることはあるか?」
と聞いてきてくれた。これは、好都合だ。では、お言葉に甘えて注文させてもらおう。
「ああ、実は―――――――――――――」
俺が頼んだことは、
「この場所の使用を許可して欲しい」
「この場所で[スキル]の訓練をさせて欲しい」
の、2つだ。
「どちらもいいよ。スキルを使いたいならば、『ステータスオープン』と言えば確認できるはずだ。でも、期間がある。異世界への門を開けておけるのが、持って1日なんだ。だから、訓練の期間は、今から8時間くらいかな」
「それくらいあれば充分だ」
「そうか。では、私は用事かあるので、終わったら呼んでくれ」
と、虚空に消えていった。
(呼べば、本当に来るのかな)
なんて考えつつ、訓練を始めた。
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~~~約八時間後~~~
能力の確認は終えたので(ここで出来ないものが多いが)、
「おーい、神よ」
と、言われた通り呼んでみた。
すると、突然虚空から、
「準備は終わったかい?」
と、神の声がした。
もうそんな時間かと思ったら、俺の様子を見て終わったと思ったのか、着いてこい、という意味なのか、指でジェスチャーしていた。
後をおい、しばらく歩いていると光の門が見えてきた。
そして、神はそれの前で止まり、門の横に行き、俺に、
「これは異世界に通づる門だ。ここから異世界へと行ける」
と、告げた。俺は、そういえばと思い、
「俺が、これから行く世界はどのような場所なんだ」
「それについてだが、その世界の名はガンダルシス、君達の世界で言う、剣と魔法の世界という所だ」
「ありがとう。……説明は終わりか?」
「……ああ、そうだね」
「…では、ここでお別れだな」
「…そうだね」
…………………………
数秒の沈黙の後、門の方へ振り向きながら、
「じゃあ、行ってくるな」
「ああ、私のせいではあるが……………、新しい人生を楽しんでくれ」
「ありがとう。じゃあな…、神様」
その言葉とともに、門をくぐった。その時、
「頑張れよ」
と、そう、聞こえてきたような気がした。
刹那―――――――――――――
目の前が真っ白に染まった。
――――――――――――――――――――
眩しかった光も消え、目を開け、辺りを見渡すと一面木だらけだった。
そして次に自分の身体を見ると、事故にあった時は学校の制服だったのだが、今は旅人のような服装をしていた。
何故このような格好なのか疑問に思ったが、俺がこの世界で怪しまれないようにするための、神の気遣いだろうと自分を納得させた。
さらに、俺は少し気になっていた、ステータスの確認をしたかったので、ステータスオープンと、唱えた。
すると、あの世界でなったように、目の前に光る文字で書かれた黒い板が、浮かび上がった。
―――――――――――――
ヨツヤ シロウ 18歳
種族 人間
性別 男
レベル 1
命力 3000
魔力 0
ライフ:0
スキル
蓄積
ギフト
全言語理解 固定レベルアップ
称号
神の祝福
異世界人
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これを見た時俺は魔力が0なことにガッカリしたが、これは俺が地球出身だからなのだろう、仕方ないかと割り切った。
ところで俺のスキルとギフトだが、文字を触って調べたら、説明書きのようなものが出てきた。
蓄積
あらゆるものを蓄積できる
全言語理解
全ての言語を理解できる 神の加護によるもの
固定レベルアップ
魔物や人などの生き物を倒すと、必ず1レベル上がる
はっきりいって、[全言語理解]はありがたい。神様ありがとう。[固定レベルアップ]はよく分からないが有能であって欲しい。[蓄積]はあちらの世界で一応試した(あちらでできる限りの事は)ので心配はしてないが。
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自分の現状確認も終わり、俺は人里に出るために鬱蒼とした森の中へ足を踏み入れていくことにした。
しばらく森の中を歩いていると、急に前に3匹の狼のような動物が現れた。そして、俺の方を向いて
「グゥルルルルッ」
吠えてきた。が、襲ってくる様子はない。なので、こちらから行くことにした。
俺はまず、腕に[蓄積]を発動させた。しかし、相手を十分に倒しきるには蓄積の時間がかかる。なので、時間を稼ぐために狼達と向かいあって、相手に向かって石を投げて、威嚇をした。
しばらくの間石の投擲をし続けていると、ふと腕に力が溜まったような感覚がしたので、投擲をやめて、[疾走]を発動し、狼達の後ろに回り込み、3体まとめて殴った。
殴られた狼達は、錐揉み状態で飛んでいって木にぶつかり止まった。そして、驚くべきことに、3匹の狼は光に包まれて消えていった。
俺がその事に疑問を持っていると、脳内から無機質な声が聞こえてきた。
「レベルが上がりました。ライフが蓄積されました」
それを聞いた俺は咄嗟に、ステータスを確認した。
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レベル 1→4
命力 3000→12000
魔力 0→0
ライフ 0→3
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これはあれだな、ゲームで得た知識だが、多分さっきの戦闘で倒した狼が俺の経験値になったんだな、きっと。
気を取り直して歩いていると、前方から3人くらいの男女が俺の方へ走って向かってきた。
俺は[蓄積]を発動させようと身構えたが、向かってきた彼等は俺のことに気づいたのか目を丸くし、10メートルくらい先で止まり、何かを話し合い、そして1番先頭にいた少年がこちらへ来た。
そしてその少年は俺にこう言った
「こんな所にいるなんてさぞかし有名な方とお見受けする。突然だが事情は聞かないで、今すぐに俺たちを助けて欲しい」
それに対し、俺は少し迷ったが、
「事情は後で聞く。今は助けよう」
と言い、[蓄積]を発動させ、時空の穴をつくり、そこに彼を亜空間に放り込んだ。
何故このようなことにをしたのかというと、その少年が急いでたっぽかったから説明を省くためだ。
途中、彼の悲鳴が聞こえたと思ったが、無視した。
そして、次に俺は彼の願い通りに他の仲間たちも助けてやろうと思い、振り返るとそこには、怒りの形相をして走ってくる彼等がいた。
俺は咄嗟に、目の前に[蓄積]を発動させ、全員をまとめて亜空間に入ってもらい、難を逃れた。
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~~~とある亜空間内~~~
「ここは………、どこだ………」
亜空間内で目を覚ました少年はそう呟いた。
《確か…………俺はある男に助けを求め、そしてここに入れられたんだったんだっけな…………》
その事に気づいたのもつかの間、
《そういえばみんなは!?》
その事を思い出した少年は、辺りを見渡した。しかし、自分の目に映るのはただただ白い光景だけで、仲間たちは1人もおらず、少年はその事に打ちひしがれていた。
しばらくすると、少年は自分の周りが光っているのに気がついた。その事に呆然していると、突然、光の中から、
「シン様!」「シン君!」
と、仲間の自分のことを呼ぶ声が聞こえ、少年の頬には自然と涙が流れ、仲間に再び会えたことへの安心感か、少年は意識を手放した。