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異世界を気まぐれで生きてもいいですか?  作者: アドレナリン弁当
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第1話

 目が覚めるとそこは知らない天井だった。


 というか天井はおろか、床や壁もなく、辺り一面真っ白だった。しかも、ここへ至るまでの記憶が無い。さらに、自分の姿すらぼんやりしている。

 とある施設の人体実験として拉致された、もしくは、変なクスリでも飲まされたかもしれないという可能性も一応考えたが、夢の中であるという可能性を信じたかったので、とりあえず目をつぶろうとしたら、突然、


「あっ、起きたね。では早速せつめ」


 という声が聞こえたが、とりあえず無視して寝た。


 しばらくして起きてみても、まだ辺りは真っ白いままだ。

 ただ、先程と違う点を上げてみれば、目の前に少年が1人立っているということだけだ。


 すると、俺が起きたことに気づいたのか少年近づいてきてこう言った。


「え~、では改めまして、おはよう。そして、もう寝るなよ。早速説明しますが、四谷司郎(よつやしろう)さん。君は、異世界転生中の事故によって死亡した」

「へぇ、そうか」

「え?驚かないのか?自分が死んだこととか、異世界転生中の事故とか」

「自分が死んだことについては、そういう運命だったと思っている。まあ、異世界転生中の事故というのには疑問があるけどね」

「へぇ~、淡白だね。では事故についてだ

 が、簡潔に言うとトラックに跳ねられそうになった人を君が救った結果死んだというかたちになるね」

「そうか、分かったよ」

「え~?もう分かったのか」

 ああ、多分よくある異世界転生するはずだった人を、助けてしまって俺が異世界転生することになったというところだろう。

「おぉー!スゴい。よく分かったね」


 !? 思っていることが分かるのか。


「そうだね」

「じゃあ、思ったことは言った方がいいな」

「そうするといいよ。まあ、そういうことで君はここにいます」


「そうか。ところで、幾つか聞きたいことがあるのだケド」

「なんだろう?」

「何故俺の記憶が無いんだ?」

「事故による後遺症だろうね」

「治るのか?」

「君のスキルを使えば簡単に」

「何っ?」

「おっと、その事については後で話そう」

「分かった。では次に、お前は誰なんだ?」

「私は神だ」

「そうか。ではもうひとつ―――――――」


 と言おうとしたら突然、


「…………………………………え?」

「ん?」

「え。………神の存在に疑問を持たないのか?今までの転生者達は私に根掘り葉掘り聞いたものだ

 が………」

「興味がないなぁ。それよりも自分のことを知る方が重要だな」

「ほ~、そうか、そういうものか。では気を取り直して、次の質問を聞こうか」

「ああ、ここは何処(どこ)で、俺はこの後どうすればいいんだ?」

「その質問で最後かな?」

「ああ、そうだ」

「では、先程の話とともに説明しよう」



「まず、[スキル]についての話をしよう。[スキル]と言うのは、君の世界で言うところの[才能]みたいなものだ。」

「へぇ~。つまり、俺にも何かしらの[才能]があるという訳だ」


「察しがよくて、助かるよ。さらに言うと、ひとえに[才能]と言っても色々とあり、知恵の[才能]があれば、生まれた時から頭が良かったり、逆に運動の[才能]があれば、身体能力が高かったりする」

「では、俺にはどのような[才能]があるんだ?」


「君の[才能]は、スキル名でいうと[蓄積(チャージ)]だ」


「蓄積?どういう能力なんだ?」

「[蓄積(チャージ)]という能力は、君の世界では、記憶力がよくなるくらいの力しかないのだが……、試しに、『記憶蓄積(メモリーチャージ)』と言ってみてくれ」

「分かった」


 神(謎)の言う通りにすれば、記憶が戻る、と言うので試しに呟いてみた、


「……記憶蓄積(メモリーチャージ)……」


 すると、一気に濁流のように、記憶が頭の中へと流れ込んできた。


「何ッ?うぁーーーー!!!!」


 そして俺は、意識を手放した。

 ――――――――――――――――――――――


 しばらくして、目を開け、意識を覚醒させると、何故(なぜ)忘れていたのかも分からないくらいの情報量で、頭がガンガンしていた。


「目が覚めたかい?」


 と、再び、神(謎)の声が聞こえた。


「その様子だと、記憶が戻ったんだね~」

「では、早速だけど、君のことを教えてくれよ」

「ああ………、俺の名前は…………四谷………司郎……、性別は……男……、年齢は……18歳……」

「他には?」

「…元は学生で…………、家の近くの交差点で………、跳ねられそうになった人を………、体当たりで救って………、死んだ……」

「おぉー!無事、記憶は元に戻ったようだね」

「………これは………、どういうことなんだ?」


 まだ戸惑い気味の俺に向かって、神(謎)はこう言った。


「どういうことか聞かれても、君のスキルが、そういうものだということだ」

「つまり?」

「沢山の記憶が一気に戻ったせいで、鈍くなっているようだね。つまり、君のスキル、[蓄積(チャージ)]で蓄積していた記憶を、記憶蓄積(メモリーチャージ)によって、復元したわけだ」

「……………そうか」


 俺は、これしか言うことがなかった。いや、()()()()()()といった方が正しい。人間は、想像以上の事が起きると、思考が停止するらしいが、俺は今、その状態らしい………。


 しばらくすると、俺は思考回路だんだんと復旧してきた。そして、その間に気がついたことを神に訪ねてみた。


「[スキル]についての説明はもう十分だ。次に、説明してくれ、ここはどこなんだ」

「この場所については、何故君がスキルを使えるようになったのか、そして、君の今後の説明にもなる」

「どういう事だ?」


「説明しよう、この場所は、地球のある世界と異世界の中間地点みたいな所だ。だから、君がスキルを使えたんだよ」

「つまり、スキルは、俺から見て異世界の力と言うわけか」

「そうだ。そして、君の今後についてだが、君には実は、ひとつの道しか無い」

「どういう事だ?」


「私は、君が助けてしまった人を異世界転生させるために、転生用の席を用意していたのだが、君が助けてしまったために、その席が今空席の状態なんだ」

「つまり、俺に、その席に座れと」

「そういうことだ」


「俺がその事に反対したらどうする?」

「何もしない、かな」

「何っ?」

「何もしない、つまり君は今、僕がここから去れば、永遠にこの場所にひとりというわけだ。その意味は分かるだろう?」

「脅し、みたいだな」

「そんなことをないよ~、これは提案さ。実はさ、僕も席を埋めないと色々とマズイんだよ。君が行くなら、僕も少しは協力しよう。頼むよ」


 そう言われて俺は、しばらく考えた結果、


「分かった、行ってやる」


 と、そう、答えた。

























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