架空職業・監視屋ときお 『Twinkle』
超巨大国際都市、東京。通称帝都。
ここには『仕事屋』と呼ばれる者たちが人知れず潜んでいる。
『監視屋』『護り屋』『奪い屋』『運び屋』『修復屋』…。
あるものは異能で、
あるものは知恵で、
あるものは技術を使い、
彼らは帝都に蔓延る悪意と戦う。
渦巻く光と闇の中、『仕事屋』は確かに存在しているーーー。
診断メーカー『仕事屋さんになったー』から触発され、Twitter上で投下したストーリーを、編集、加筆したのものです。
Twitter上では『#架空職業』のタグ付きで投下しています。
【診断結果】
TOKYOは監視屋です。性別は男、桃色の髪で、変態的な性格です。武器は不明。よく一緒に仕事をしているのは掃除屋で、仲が悪いのは奪い屋です。
http://t.co/T57mAsrH
監視屋ときお
張り付いたような笑顔が特徴的な、長身の監視屋。髪はピンク。謎が多く、不気味な噂が絶えない。そら豆に手足と一つ目がついたような不思議な生物『メマメ』を使役する。壊れた玩具のような、ほのかな狂気を身にまとっている。
街の中でもひときわ高いビルの屋上に監視屋ときおはいた。
今日の仕事は既に終わっていたが、ついつい高い場所に移動してしまうのだ。
ショクギョービョ一ってやつだナぁ、と一人肩をすくめる。
だがこうして街を見下ろすのは悪くない。
むしろ好きだ。
下品な車から巻き上がる砂ぼこりも、ここまではやってこない。
遠い日の何かに、浸ることもできる。
久しぶりにいい気分一一の、筈だった。
「あ、あの…」
躊躇いがちに、ぼそぼそと話しかけられた。
微かに震えるその声に、ときおは聞き覚えがあった。
「なンの用ダぁ?」
振り向きもせずに訊ねる。
どうせ向き直ったところで、彼女の姿は見え無いのだから。
「す、すみません…!」
問いかけに何故か謝罪を返した彼女に、笑顔が張りついたときおの顔が微かに歪んだ。
ゆるりと振り返ったが、やはりそこに声の主の姿は無かった。
彼女は『見えない監視屋』と呼ばれている、ときおからすれば同業者だ。
その名の通り誰も彼女の姿を見たことがなく、名前すらわからなかった。
しかも名乗らない理由が『恥ずかしいから』だという。
この業種ではときおも相当異端児扱いされていたが、彼女もなかなかのものだろう。
「…だから、何しにキた?」
もう一度尋ねる。
監視屋にはその能力によって、『縄張り』を持つものがいる。
縄張り持ちの監視屋自体が少ないため滅多に争いにはならないが、基本的にはお互いのテリトリ一に関わらないのが暗黙のルールだ。
ときおも彼女も、テリトリー持ちの監視屋だった。
「そっ…そのっ!…と、トラブルがありましてっ…!」
ぷるぷるぷるぷる。
声の調子から、ときおはぼんやりと小動物を連想した。
ハムスタ一とか垂れ耳のウサギとかそこら辺。
「あ一…」
「とっ、ときおさんのお仕事の邪魔はしませんので…っ!」
「ン一」
「ほ、ホントですっ…!」
「…しばらクこっち居ンの?」
「も…もしかしたら…」
「む一…ホン卜に荒らすなヨぉ?」
「は、はい!ど、努力します...!」
その声の直後、ふつりと気配が消えた。
全く、どうやって移動してるのやら。
自分の事は棚にあげて、ときおは小首を傾げる。
実はときおは一度だけ、彼女の姿を見たことがある。
といっても曲がり角に消える一房の髪だけだが。
街灯の光を弾く黄金色のその髪を見て以来、ときおは彼女の事をひそかに『トゥインクルちゃん』などと呼んでいる。
「サテサテ、トラブルってなンでしょウね一」
軽い口調でときおは笑みを深める。
少しだけ、興味がわいた。