愛のリペアマイスター ♡第3話 告白♡
楽しいひと時♪
「なんにする? あ、ちなみにここのコーヒーバツグンにおいしいよ? お好きだったらおすすめ」と暁斗。
「あ、あたしコーヒー、大好きなんです。ではモカを戴きます!」
「うんうん。オレはブルマンにしよう」
「暁斗さんもコーヒーがお好きなのね?」
「うん、大好きだよ。仕事の合間は手軽にインスタントを飲んでるよ」
「そうなんだ~…… ン、と……暁斗さん? 訊いてもよい?」
「ああ、なんだい?」
「今日……誘って下さったのは『お財布のお礼』だけ?」
「ブ」ちょっぴりお冷やを吹いてしまった暁斗。
「失礼」とおしぼりで口を拭った。
「ンフ…… 聴きたいです」屈託のない笑顔の燈。
「……うん、正直に言うね。燈ちゃんが……素敵で、興味を持ったからだよ」
「あ」
ふたりはしばし、恥ずかしそうに下を向いていた。
「燈ちゃん、オレは、ずるい奴だよね。だって、指輪で判ってるでしょう? 結婚していること……」
燈は思い切って言葉にした。
「そうかな……お互いときめいて、好きになったら、仕方ないじゃない」
「あ……燈ちゃんもオレのことを」
「はい」斜め下に視線を落とす燈。(凄く照れる)
「うん、『オレと一緒にいたいから』って、靴修理の時に言ってくれたでしょう、燈ちゃん。オレと同じ気持ちなのかなーって……想っていた」
「はい」
そこへふたり分のコーヒーがやって来た。品の感じられる男性店員がそっとコーヒーソーサーをテーブルに置いた。
テーブルの上には、なんとノスタルジックな角砂糖が、美しい切子硝子の入れ物に入っており、燈は喜んだ。
「素敵ですね! 子どものころ角砂糖をコーヒーに入れて……お行儀が悪いですけど、ビスケットをひたして食べました。クスッ」
「そうなの、燈ちゃん。なんともかわいらしいね」
「そうですか」
笑みがふたりに零れる。
「ネェ暁斗さん? 今度はあたしが……お食事にお誘いしちゃ、ダメですか?」
「え」
「あ、ああ、ごめんなさい。さっき大切なお話の続きでしたね、まだ……」
「うん。燈ちゃん、オレこんな気持ち初めてなんだ。これまでお客様に想いを寄せたこともなければ、ひと目惚れも……ない」
「ひと目惚れ」
「うん。お財布を拾ってもらった瞬間からだよ」
胸の鼓動がどんどん速まる燈。
「あたしと一緒だったなんて」
ふたりはあっという間に、しかし自然と恋人になったのだ。だがまるでドラマみたいだ。
「うん、今度食事に行こう。お誘いを断ったりしないよ? もちろん」
「あ、ありがとう!」
ふたりのおしゃべりはとても盛り上がった。
「へ~、じゃあ、岡山から東京へ? 燈ちゃん。勇気あるね! 16で、ひとりでさ。凄いよ!」
「いえいえ、なんにも凄くなんかありません。半分家出みたいなものです。賃貸の件はママが何とかしてくれましたけど。最初は死に物狂いでフリーターをしました」
「そうなんだ。オレはずっと東京だからさ、燈ちゃんがしたような苦労を知らないと思うんだよね」
「ンー、けどホームシックはあんまりなかったです。自由を謳歌してました。アハハ」
「じゃあ、ずっとアルバイトを?」
「ええ。18からは水商売一筋でした。今は休職中の身です」
「そかそか。がんばってきたんだね」
なんだか燈は、触れられてもいないのに、暁斗に頭ナデナデされている心地がした。とっても甘えたいような……。
「オレはね、中学を出てすぐに靴職人の親方についたんだ。店に就職し、見よう見まねで仕事を憶えた」
「お偉いですね! カッコいい」
「ううん、必死だっただけさ。この仕事が好きだしね。 ……ところで、燈ちゃん、誤解しないでほしいんだ。純粋に燈ちゃんのことを知りたくて」
「はい。暁斗さん、なんでもお訊きになって」
「うん。燈ちゃん、お子さん居るの?」
「あ……はい。一度結婚経験があります。子どもはハタチの男の子です。大阪の百貨店に勤めていますよ。あの子には辛い思いを沢山させてしまいました。いい結婚生活じゃなかったから……離婚するまで大変だった。だのに、あたしと違ってウジウジしてないの。ドライというか。たくましいです!」
「そうなんだ……燈ちゃんもお子さんも立派だね! 実は……オレにも子どもが居るんだ。そんなオレは嫌かい?」
「まさか! ステキなパパだわ、暁斗さん」
「そか。よかった。うちの娘もハタチだよ。息子は15才。受験が終わってホッとしてるんだ」
「まあ! そうですか」
興味深く真摯に話を聴く燈。
燈は商売上様々な男性を見てきた。ダメンズだった夫が働かなくなってしまったので、結婚中も懸命にラウンジ等で生活費を稼いでいたのだ。
暁斗は誠実な男性だなと分かる。
もちろん、妻帯者でありながら燈を好きになり、こうしてお茶を飲んでいるが……純愛と法律のどちらがだいじで重たいだろうか、と燈は昔から時々そういうことを考えていたのだ。愛に決まっているじゃないかと。
ふたりは話し込み、喫茶アンジェラスルナで2時間は優に超えるほど語ったり、黙って見つめ合ったりしていた。
あっという間にランチタイムだ。
グ~…… 黙って熱く見つめ合っている時、あろうことか燈のハラペコ虫が鳴いた。
「あ」と暁斗。「ヤダ、恥ずかしい!」と燈。
「おなかすいた? 燈ちゃん。どうする? なにか注文しても良いし、他のお店に行っても良いよ。うんとごちそうさせて!」
「あ、そんな……お食事まで、悪いです」「いいから、いいから! どっちがいいかな?」
燈の小悪魔が疼き始めた。
「どっちもいや」
「え!」
「コンビニで食べ物を買って……ラブホテルで戴けば良いわ」
カー! 小悪魔のつもりが、天使も混在しているのか真っ赤に頬を染める燈。
「うん。わかった」
テーブルに置かれていたまっ白な燈の指が、暁斗の大きな手に包みこまれた。
わ! 燈ったら大胆っ……




