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第86話 番外編⑬-2 学び始めた者たちの交差点

 ラウラとエルウッドの再会は、思ったより早かった。


 港町ディストンでひょっこりである。


「エルウッドじゃない! まだこの町にいたのね!」


「ラウラか。どうした、魔法学院で勉強してるんじゃないのか?」


「ちょっと事情が変わったのよ。っていうか、久しぶりなんだから、元気か? とか言えないわけ?」


「元気そうなのは見ればわかるからな」


 そこに見知らぬ男がやってくる。


「どうしたエル。知り合いか?」


「ああ、以前のパーティの仲間だ。オレに読み書きを教えてくれた」


「エル?」


「オレのあだ名だよ。このおっさんは、オレの鍛治師匠のケンだ」


 ラウラとエルウッドは互いに近況報告をし合った。これからメイクリエ王国へ行くことも、その事情も含めて伝える。


 するとケン師匠が口を挟んだ。


「エル、お前もメイクリエに行け」


「おい師匠。修行はどうなる。オレの腕じゃまだ、弟子として雇ってくれる工房もないって言ってたじゃないか」


「ああ、だがな。戦争になるなら職人としちゃチャンスだ。どこも人手不足になる。多少不出来でも構わず使ってくれるだろうよ」


「しかしな……」


「それに下手すると、まともに船が運航しなくなるかもしれねえ。行くなら早いほうがいい」


「師匠も来るよな?」


「俺には行けねえ事情がある。そんな目をすんなよ。しょうがねえな。俺以上の職人に紹介状を書いてやる。そこで魂ごと、学んでこい」


「師匠以上……? どんな職人なんだ?」


「俺のライバルで……ダチ公、かもな」


 弟子を想うケンの気持ちを汲んで、エルウッドは紹介状を受け取った。


 そしてラウラと共に、メイクリエ王国行きの船に乗る。


 肩を落としたエルウッドに、ラウラはそっと寄り添ってやる。


「あなたも、いい師匠に巡り会えたみたいね」


「……ああ」


「寂しい?」


「まあ、な」


「また会えるんでしょ?」


「ああ、冒険者ギルドを介して、手紙のやり取りはできるようにした」


「なら定期的に手紙書きなさいよ?」


「そうする」


 ラウラはため息をついた。なにこの落ち込み様は。


 こいつ、あたしと離れたときは未練なんかまったく見せなかったくせに。


 なんか悔しい。


「エルって呼んでいい?」


「ん? なんでだ?」


「誰かがそう呼んであげてれば、少しは気が紛れるでしょ? ダメ?」


「ああ、ダメだ」


「なんでよ! あたしのほうが付き合いは長いのに!」


「師匠は師匠なんだよ。お前に呼ばれたら調子が狂う」


 ラウラは妙に悔しくなって、エルウッドの尻を引っ叩く。パチィンといい音がしたが、エルウッドにはまったく効果がなかった。


「はあ、まったく……。それで? あなたは、どのあたりまで行くの? 方角が同じなら、また一緒に組みましょうよ」


「ああ、そうだな。オレの行き先は……ガルベージって貴族が関係してる工房らしい」


「へえ、どれどれ? ん? ちょっと待って?」


 ラウラはボロミアからもらった紹介状と、エルウッドが見せてくれた紹介状を見比べた。


「あたしたち、目的地おんなじみたいよ?」

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