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戸 ←これで木こり

 ステータス。

 それは便利な能力だった。


 世界の理を超える力であり、如何なる敵も相手にならない。


 スティは魔境を突き進む。


「そーいっ」


 ステータスウインドウを両手で持って独楽の様にグルンと一回転すると、ゴブリンウォリアーが構えた大盾ごと一撃で横に真っ二つ。身体能力強化(超特大)によって腕力脚力その他諸々が向上していると言っても、まるでバターの様に生物を両断する事など出来るわけがない。


 おめでとう!

 スティ は レベルが 3 にあがった!


≪いや。いやいやいや……≫


 少女にその特別な能力を授けた女神は困惑の声を上げている。彼女の思惑通りにスティは魔境を生き延びる力を得て戦っているというのに、なぜだろうか。


≪ステータスはそういう使い方をするものじゃないって……≫


 どうやら女神が考えているのとは違う使用法だったようだ。しかし事前にどうやって使うのかを説明していない彼女の落ち度である、スティには何一つ罪はない。女神が訳の分からない力を勝手に授けたうえで『※能力やスキル等に関する不明点は、顧客相談窓口の女神までお問い合わせください。』とステータスにご丁寧に記載してあるのだから、製造物責任を負うのは当然である。


「よしっ」


 周囲の魔物をステータスウインドウで撫で斬りにし終えてスティは一つ頷いた。死骸は何故かキラキラと発光した後に霞のように消える。と同時に、そこに爪やら骨やら宝石っぽいものやらが出現した。


「?」


 スティは首を傾げた。

 魔物を解体して皮を剥いだり、肉を取ったりする事はある。しかし突然消滅したり、何もせずに爪などが出現する事など見た事が無い。更には魔物が持っているとは思えない宝石が出てくるなど有りえない事だ。


 彼女が疑問に思いながらそれらを集めていると、女神が説明をしてくれる。


≪それはドロップアイテムというものです。貴女に授けたステータス、その付属効果の一つが倒した相手に設定されたアイテムを取得する力なのです≫

「……ふーん?」


 説明になっていない説明に首を傾げつつ、スティは素材を一か所に集めて置いた。


「ま、いっか」


 分からない事を考えても仕方ない、彼女はやるべき事に着手する。


 まずは周囲を見回して。


「ステータス」


 ステータスウインドウを出現させて。


「えい」


 その中に腕を突っ込んで。


≪え、ちょ≫


 中から『顧』の文字を取り出して。


≪え、え、えぇ?≫


 その左側の『雇』の戸に手を掛けて、ふるとりを足で押さえて。


「んんんんん~~~……っ!」


 思い切り引っ張り。


バキッ!


 スティは『戸』を手に入れた。


≪……ハァ?≫


 ステータスウインドウを出現させられて、それで切断という物理干渉が出来る。ならばそこに表示されている文字を物体として取り出せても何らおかしなことではない。文字を引きずり出して、具現化した文字を分解するなど出来るに決まっているではないか、何を女神は驚いているのだろうか。


「ちょうどいい感じ」


 戸の払い部分を握ってスティはそれをスイングしてみる。重そうな『口』部分が想像通りの重量を持っており、目的のために使いやすそうだ。


「この辺にしよう」


 丁度良さそうな平坦な場所を見付けた彼女は、密集して生える木の一つの前に立った。肩に担ぐように持っていた『戸』を両手で持って構え、そして。


「せいっ!」

コォン!


 木の幹に『戸』が食い込んだ。


「せいっ、せいっ」


 こおん、こおん、と音が響く。水平に数度、斜めに数度『戸』を叩きつけて幹に十分な切れ込みを入れたスティは、切り込みの上部を足で押した。バキバキという木が割れる音と共に、それが倒れていく。


「次っ」


 同じ要領で彼女は次々と伐採を進める。スキルによって色々と強化されている肉体は疲れを知らず、およそ一時間でそこに生えていた木は全て切り倒された。


「んー」


 倒した木は担いで一か所に放っておいたが、まだそこには切り株が残っている。

 スティは顎に手を当てて少し考えて。


「ステータス」


 またもステータスウインドウを出現させて。


≪またぁ?≫


 手を突っ込んで『ル』を取り出し。


「んしょ」

バキッ


 左右に引っ張って解体し、それを『レ』に変えた。


 それの上部を両手で握った彼女は切り株の上に乗って『レ』を振りかぶり、切り株の側面に垂直に叩きつけた。しっかりと食い込んだ事を確認してスティは切り株から降りて、刺した側とは反対側に立ってそれを引く。


メリッ、メリメリメリッ!


 大地に張られていた根が露になる、そしてズボっと切り株は除去された。


「ん、上手くいった」

≪……もう好きにして≫


 ステータスを上手く使ったスティは満足そうに頷き、自分の想像とはまるで違う行動を取る彼女を軌道修正するのを諦めた女神は溜め息を吐いた。


 その場の切り株を全て除去したスティ。


 彼女は次の段階へと取り掛かる。

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