都市までどうやって行くか、考えてみた
取り敢えずスズの事はミコトに任せる事にして、ノリトと都市に行く方法を話す。
「それでカツヤ…都市に乗り込むのも問題だが、その前に…」
「どうやって都市まで行けば、一番リスクが少ないか…っていうかそもそもどうやって都市まで辿り着くのか…ちゃんと考えてあるさ」
この町から都市までの距離は、直線距離にして約16km。
その間、どれ程の魔獣が居るのか分からない…
普通なら、誰も移動しようなんて考えない。
スズだけならまだしも、俺とノリトが普通に歩いて移動するのは無理だ。
俺がやり合った魔獣とどれだけ遭遇するか分からないし、それ以上の怪物も居るだろう。
ノリトは今回の立案者として自分なりの考えをまとめていたらしく、それを言い始める。
「まず、俺の考えから聞いてくれ…
このバッグに入ってる銃で遭遇する魔獣を牽制しながら、山道を通って木や岩影に隠れながら移動する。
これなら魔獣を必ずしも仕留めなくていいから、手持ちの弾でもどうにかなるはず。
どうしても対応しきれない時には、俺がドラゴンを召喚すればいい。
時間は掛かるかもしれないが、明日の夜明け前には都市に着くだろう」
ノリトらしい考えだが、俺はそれを否定する。
「駄目だな。
手持ちの弾でどうにかなるって言ったけど、魔獣との遭遇率がどれぐらいになるか分からない。
町の周りに居るヤツらとは桁違いのはずだ。
多分弾が足りない…
対応しきれない時にだけドラゴンを頼るのも無謀だ。
お前が1日の間…つまり24時間でドラゴンを召喚していられる時間はどれくらいだ?
1時間か…もって1時間半、てとこだろう?
この時間は、短時間ずつに区切ったからっつって増える訳じゃない。
むしろ、召喚する度に精神的負荷が掛かるから、トータルで見れば減る。
んで、最も大事なのは…都市に辿り着いた時に、体力も装備も底をついてる状態なら、遺物ってのが保管されてる場所まで行けるわけがない」
「…そうだな…今の指摘には反論できない。
で、お前の案は?」
「まず、この町を出る時点でドラゴンを召喚してもらう。
そしてそのまま最短距離を通って、都市まで行く。
召喚したドラゴンは、都市に辿り着くまで召喚したままだ。
これなら、1時間も掛からずに行けるだろ。
俺達はその間、ドラゴンの首や背中にでも掴まっておけばいい」
それを聞いたノリトは一瞬言葉に詰まるが、すぐ反論してきた。
「おいおい、俺のドラゴンは切り札なんだ。
それに召喚したまま都市まで行くって事は、都市に着く頃にはほとんど召喚できる時間は残ってない。
それじゃ都市に入ってからの戦闘で切り札が無くなるぞ?
ドラゴンを残しておく為に、これだけの銃と弾を集めたんだ」
「そう思うか?でもよく考えろよ?
ドラゴンを都市での戦闘の切り札にするにしても、使えるのはおそらく一度きりだぞ。
ドラゴンがいくら強くても、都市での戦闘は数も土地勘も相手方が圧倒的有利。
統制の取れた圧倒的数で囲まれれば、ドラゴンが負ける事はないかもしれないが、身動きできなくなって俺達はジリ貧だ。
それよりも、単純に力だけで襲ってくる魔獣にドラゴンを当てた方が理に適ってる。
弾丸が効かない魔獣は居るが、生身の人間で弾丸が効かないヤツは居ないだろ?
だからお前が苦労して集めた銃と弾は、都市に入ってからの対人用にするべきだぜ」
俺の考えを聞いたノリトは、しばらく俯いて悩んでいたが、
「分かった…お前が正しい」
苦笑しながらそう言って、俺の考えを受け入れた。
(やっぱりノリトは頭が良い。
自分の意見をそう簡単に変えるなんて、なかなかできるもんじゃないからな。
普通なら、感情に任せて反論するところかもしれないが、それよりも冷静に考えて自分の目的をより高い確率で達成できる方を選ぶ)
ノリトの頭の切り替えの良さに感心して後ろを振り返ると、スズとミコトが話しながらついて来ている。
何を話しているのかまでは分からなかったが、どうやらミコトが上手くやってくれたらしい。