スサノオの見解
「そう言えばスズよ、お主に言われた食い物だがな…あのトカゲ共に食われておった。
すまぬな」
「そっか、いいよ!しょうがないもん」
スサノオが俺の怪我を治してから、スズは俺の体を触りまくって確かめて、ようやく俺の体を離して立ち上がった。
俺も立ち上がりながら、ふと思った事を呟いた。
「しっかし…俺らって客観的に見れば、ただの悪党じゃね?
そうでなきゃテロリストだな。
都市の兵士達とあれだけやり合ったのに、最後は手ぶらで帰るだけ…
まあ、こうなるとは知らなかったからここまできたんたが。
もうこういうのは二度と御免だ。
穏やかなのが一番良い」
俺の呟きに、スサノオが口を挟む。
「穏やか、か…お主が平穏を望むか。
竜族と戦っておる時のお主の顔からは、考えられぬな」
「どんな顔してたか知らねえが、俺は平穏なのが一番良いんだよ」
スズはもうさっさと帰りたいらしく、俺の肩を揺すりながら催促してくる。
「ねぇカツヤ、早く帰ろうよぅ…お腹減っちゃった」
「そうだな…まあ帰るにしてもまたここの兵士達とやり合って、その後魔獣を相手にしながらのマラソンだから、結構時間掛かるけどな。
腹減ったなら、取り敢えずここの食糧庫からでも拝借するか?
アレだけやらかしたんだ…今更食い物貰うくらい大して変わらねえだろ」
「早く帰る方法なら、私にいい考えがあるんだけど!」
「お前がマトモなアイディアを出すとは思えないが…取り敢えず言ってみ?」
「えっとね…こうするの!」
スズは、俺が全く反応できない速度で俺の肩を掴んで後ろを向かせ、
ドッ…
俺の後頭部に手刀を当てて、一撃で意識を刈り取った。
それを見ていたスサノオが、初めて額に汗を一筋垂らす。
「…スズよ、命懸けでカツヤを守ったかと思えば、身もふたもなく意識を刈り取って…いったいカツヤをどうしたいのだ?」
「ああこれ?
だって、カツヤが私と一緒に走って逃げるより、こうやって動かなくなったカツヤを私が運んだ方が早いし、カツヤにとっても安全よ。
一緒に逃げたなら、また絶対に無茶な事しようとするもの」
そう言って、スズは着ていたYシャツを脱いで意識を失ったカツヤを背負い、そのカツヤの体が落ちないように、自分とカツヤの体をYシャツで縛り付けた。
「さ、帰ろうよミコトちゃん」
「スズには言うておらなんだが、我の名はミコトではない」
「そう言えば、カツヤはなんか違う呼び方してたわね…何ていう名前?」
「そうさな…カツヤが意識を取り戻したならば、カツヤの口から聞くとよい。
我は今少しここに留まるとしよう…やる事が残っておるのでのう」
「そっか、じゃあまたあとでね!
私達を助けてくれたお礼に、私のスペシャルメニューをご馳走してあげる!」
開かなくなった部屋の扉を、スズが強引に力で捻じ曲げ、その隙間から走り去って行った。
スサノオは部屋の中央までトコトコと歩いて行き、ドラゴンに刺さったままだった剣を引き抜き、それを手の平に乗せて消し去ってから、しばらくの間何をするでもなく死骸となったドラゴン達を見ていた。
やがてそのドラゴン達の死骸は、黒い霧となって中央に集まりだし、最後には元あった壺とノリトの死骸だけが残った。
その壺を拾い上げ、剣と同じように手の平に乗せて自らの中に取り込んでから、スサノオはノリトだった死骸に言葉を掛け始めた。
「さて…お主のような存在は、どの時代にも居るのだな。
牛若にとっての頼朝。
吉法師にとっての光秀。
まあ頼朝にしろ光秀にしろ、それぞれにそれなりの大義があったのであろうが…しかし理由は何であれ、我はそなた達をこう呼んでおる。
裏切り者よ…
お主がどういう経緯と考えで、スズとカツヤを裏切ったのかは知らぬ。
しかしまあ、お主に関していえば…礼も言わねばならぬとも思う。
2人の信頼を裏切った事に変わりはないが…結果として見れば、カツヤは己が意志と生きる糧を取り戻し得た。
スズは己の想いを、死してまでカツヤに伝えた。
そして、我もこうして力を取り戻し得た。
何より…
お主やあの2人を見ておるのは、誠に面白かった。
人の子も、まだまだ捨てたものではない…と、そう思えるほどにな。
で、あるに…お主の望みを叶えてくれよう。
今後一切、カツヤとスズが居る町には魔獣とやらが現れぬように、結界を張ってやる。
我やあの2人にとって、お主のした事が全くの無駄ではなかったように…お主にとっても、お主の死が全くの無駄にはならぬように。
これは別にお主の為だけでは無い。
カツヤが、穏やかが良いと言うておらなんだならば、そもそも我は契約に従い、力を使う事ができなんだからのう」
そう言って部屋を去ろうとして、スサノオがスズが捻じ曲げた扉まで来た時、
「ふむ、穏やか…か。
なれば、結界の他にも…この都市にも施すか…」
そう言って部屋を去った。




