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この世界は…

俺達3人の関係は、簡単に言えば幼馴染みなんだが、ちょっと普通じゃないところがある。

それは、3人共住んでいる場所が同じだという事。

別に三角関係のまま同棲してるとか、そんな複雑な…もしくは愉快な?関係では無い。


ただ単に、今通っている中高一貫校に入るにあたって、それぞれ別の理由で特待生という形で優遇され、1つの建物を3人で共有しているだけ…

一人部屋でキッチンとトイレは有るが、風呂は共有となっている。

一応それぞれの部屋にカギは付いているが、小学校の時からお互いを知っている俺達にとってはあまり意味が無いので、今までお互いの部屋を訪れた際にカギが掛かっていた事は、一度も無い。

前にスズが来ないようにカギを掛けたら、ドアを蹴破られそうになったのも理由なのだが…


スズは、その非常識な行動も目立つが、見てくれも変わっている。

生まれつき身体の色素が薄く、腰の辺りまで伸びる真っ直ぐな髪は、1本残らず真っ白だ。

肌も白磁のように白く、瞳も茶色ではなく、薄い青。

しかし、決して病気がちとか太陽の光の下に長時間居られないような、そんな【おしとやか特性】は持っていない。

むしろ、少しは普通の人間のレベルにまで体力を落としてくれる事を、俺は切に願っている。

同じ年齢の女子が、日々スタイルや体重を気にしてダイエット等しているにも関わらず、スズは食うだけ食っているのに、そのエネルギーは全て体力に回ってしまうのか、いつもスマートでスタイルも良く、太った姿は見た事が無い。

ただ、胸が大きいのが本人にとっては問題らしい…


ノリトは精悍な顔立ちにスラリとした背を持っていて、黙っていれば本当に絵になる男だ。

まあ、黙っていなくとも成績は良いし、いつでも沈着冷静でモテる男の基本みたいなヤツだが、本人が恋愛に興味が無いらしく、好意を寄せられたとしても誰か1人になびく事が無いので、俺と同じで未だに彼女が居ない。

俺から見ると、何で俺やスズと未だに友達でいてくれるのか分からないぐらいの、立派な意志と才能を持っているように見える。

正直ノリトを見ていると、人間捨てたもんじゃない…と時々本気で思ってしまう。


俺の見た目は2人に比べれば、これと言って特徴がある訳では無く、一言で言うならどこにでも居そうな男子高校生だ。

1つ良いところを挙げるとしたら、身体を鍛えるのは毎日欠かさないようにしているので、体型はそれなりだ。

しかし身体を鍛えているのも、カッコよくなりたいとかそういう一般的な理由ではなく、単にスズにできるだけ対抗する為でしかない。


それから、住んできる場所以外にも俺達に共通している事がある。

俺達には親が一人も居ない…

もう何年も前に死んでしまったからだ…


この世界は、50年前に一変した。


何処の誰だか知らないが、今俺達が暮らしてるこの宇宙とは違う別の宇宙。

俗に言う、パラレルワールドを実証しようとした奴が居た。

問題は、それまで理論でしか証明できなかったそのパラレルワールドへの扉を、実際に開いてしまうだけの才能と運と資産を、そいつが持っていた事だった。

ただ…この扉自体は、数秒開いただけで実験施設ごと消滅したらしい…


しかし、その扉が開いたせいで次元に亀裂が入ったのか、あるいは世界を構成している【0】と【1】の確率が、向こうの世界とこの世界で変わってしまったのか…詳しい事は誰も分からないが、この星のいたる所で【魔獣】と呼ばれる獣が現れるようになってしまった。

魔獣は、簡単に一言でまとめると恐竜みたいなヤツだ。

つまり、せっかく奇跡的に開いた別世界は、恐竜がうようよいるだけの、一般人からしてみると迷惑なだけの世界だった。


この魔獣のせいで、それまでこの星にあった国家というものは消え失せる事になる…

なにせ、街中だろうが、山奥だろうが、都心だろうが、どこに魔獣が現れるか分からない。

しかも、何の前触れも無くいきなり現れるのだから、国というデカ過ぎる治安体制では対策の立てようが無かった…

だから人々は自分達の力で身を守るしかなくなり、魔獣の出現率が低い場所に集まっていき、大きい集団で5万前後、小さいものでは3千弱というように孤立していった。


数に大きな差があるのは、言うまでもなく魔獣の出現率と、魔獣を撃退できるだけの武力が有るか無いか…

例えば自衛隊の駐屯地や米軍基地のような、軍事施設が有る所では強力な魔獣にもある程度対応できる為に、人々は多く集まる。


最初の内はそういう軍事施設から、ヘリや輸送車で孤立した町への救援も行われたらしいが、それはすぐに中止された。

当然だ…

世界中が混乱している状態で、燃料やその他の物資が一体何処から入って来るというのか…

限られた物で今ある集団を維持する為には、他を切り捨てるのは自然な選択だった。


今俺達が暮らしているのは、人口2500に満たない町。

町の周囲は高さは6mの防壁で囲まれており、防壁の内側では人より大きなサイズの魔獣は現れないので、比較的安全と言えるが、それでも俺達の親は魔獣に殺されてしまった。


まあ、生活自体は不自由だと思った事は無い。

学校もあるし、お菓子もある、電気、水道はもちろん、服やアクセサリー等の嗜好品を扱う店もちゃんと有る。

どんなに世界が変わっても、人間の貪欲さには変わりないという証拠だろう。


それと、これも魔獣が現れるようになってからの事だが、極稀に【召喚士】と呼ばれる人間が現れるようになった…

童話に出てくるような妖精、ドラゴン、ワイバーン、等をこの世界に出現させ、使役する事ができる連中の事だ。

ノリトいわく、

「この世界に魔獣が現れるようになった事の反動で、召喚士も現れたんだろう。

そうする事で、この世界自体がどうにかバランスを取ろうとしてるんだろうな」

だそうだ…



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