建物内の攻防…2
駆け出してすぐは、トカゲの魔獣達が起こした騒ぎのおかげで俺達は順調に進めたが、やがて警報と共に警告放送があった。
『警告!侵入者に注意せよ、侵入者は3名。
いずれも火器で武装している。
見つけ次第拘束せよ、発砲も許可する!
繰り返す、侵入者に……』
「何人かに見られたからな、監視カメラにも映っただろうしな」
ノリトの後について走りながらぼやく。
そのや先、奥に見える階段から、武装した兵士達が何人も駆け下りてくる。
ガガガガガガガガガガガガッ…
ノリトがアサルトライフルの引き金をひきながら、叫ぶ。
「こっちだ!」
すぐ左側にあった通路に入るが、そこにも兵士が居た…距離が近過ぎて狙いを付けるのが間に合わない。
「どけえ!」
ライフルで兵士を殴り飛ばし、そのまま通路を走り抜けて今度は右に曲がる。
その通路の先から、10人ほどの兵士達がこっちに向かって来た。
咄嗟に俺は左手にあった部屋のドアを蹴破り、そこにノリトとスズの服を掴んで、倒れ込むように駆け込んだ。
「ノリト、爆薬があっただろ!?早く出せ!」
ノリトからそれを受け取ると、俺は通路に身体を半分だけ出してスイッチを押しながら投げる。
ズドンッ!!
衝撃と共に爆発音が鳴り響き、その兵士達が倒れるのを見た直後、ノリトに腕を掴まれて部屋の中に引き戻された。
通路の反対方向から、3人の兵士達が射撃してきたからだ。
ノリトは俺を引き戻すと同時に、その3人に向かってアサルトライフルをフルオートで連射した。
兵士達は倒れたが、ノリトも左腕の上腕を撃たれ、ライフルを置いて傷口を押さえる。
「馬鹿野郎!
ノリト、俺が何の為に付いて来たと思ってる!
俺を助ける為にお前が怪我したら意味無いだろうが!」
「別にいいさ…俺がお前を連れて来たのは、弾除けにする為じゃないからな」
ノリトのバッグから止血用の布を取り出し、ノリトの腕に巻く。
その間にスズに通路を見張っておいてもらう。
応急処置が終わると、俺達は再び銃を持って駆け出す。
「ノリト、無理しちゃ駄目だよ!」
スズがノリトに向かって声を掛けるが、ノリトは傷口に構わずに走る。
「グズグズしてると、あっという間に囲まれるぞ!
今は走るしかない!」
その後も兵士達の数は段々と増えていき、俺達はどうにか応戦しながら走る。
しかし…目的の部屋が見えた時には、打つ手がほとんどなくなってしまっていた。
たった3人でこんな所に喧嘩を売ったのだから、当然の結果ではあるのだが…
目的の部屋の手前は、大きなドーム状の空間になっていて、そこを通り抜けるまでにほとんどの弾と爆薬を使って兵士達を足止めするしか無く、部屋にたどり着いた時には、ノリトの持っているハンドガンの中にしか弾は残っていなかった。
この部屋の天井にあるダクトを抜ければ、遺物のある部屋に侵入できるのだが…
「このままじゃダクトを上がりきる前に、この部屋まで制圧されちまうぞ。
最低で5分は時間を稼がないと無理だ」
俺がそう言うのを聞くと、スズは俺を押しのけていきなり天井まで跳び上がり、一蹴りでダクトに嵌め込んであった大きな網を蹴り剥がした。
そして、俺とノリトにこう言った。
「私が時間を稼ぐ。
このままじゃ兵士達から逃げ切れないでしょ?
こんな時の為に私は付いてきたんだから…2人は先に行って」
スズは手ぶらのままでドーム状の空間に行くべく歩き出す。
その背中にノリトが声を掛けた。
「スズ、必ず来いよ!」
「早く行って…カツヤ、また後でね」
スズは振り返らなかった。
だから俺達はスズを止めようとせずに、ダクトに這い上がった。
スズは一度決めたらてこでも動かないし、そうしている間にも、この部屋を制圧されてここまでしてきた事が台無しになってしまう。
また後で…とスズが言った以上、スズは必ず俺達の所に来る。
…スズが部屋のドアを開けてドーム状の空間に出た時、そこには30人以上の兵士達が居た。
さらに、兵士達の後ろの通路から対魔獣用に機械で強化された兵士達が増援として来ている。
「おい、女だけだ」
「他の2人はあの部屋か?」
「ああ、間違いない」
「女を盾にするとは…腐った奴らだ」
兵士達がお互いに言葉を交わしてから、その内の1人がスズに言う。
「おい!手を上げても無駄だ。
お前らには既に射殺許可も出ている!
だが、こちらの質問に答えれば、数日は生かしておいてやろう。
手を上げて出て来たという事は、投降するのか?
そして、ここまでの事をして何をしに来たのだ!?」
スズは、手を下ろして伊達メガネを捨て、スーツの上着を脱いだ。
「何をしに来たか…って言っても、私は2人に付いて来ただけよ。それにしても、言うに事欠いて…
…腐った奴ら?…カツヤが?
…時間稼ぎはやめたわ…」
スズはYシャツの腕をめくりながら、
「人間相手は初めてだけど…
カツヤを侮辱したあなた達が悪いのよ?
…さあ、クソッタレの兵士共、正々堂々殺し合いましょう!」
その言葉と共に、スズは瞬間的に動いた。
自分達の方に、女が走って来るのはかろうじて分かった。
だが、何をしに走って来たのかが分かったのは、自分達の最前列に居た仲間が、血を撒き散らしながら高い天井に叩きつけられた時だった。
女の目的が分かった時には、既にもう1人が頭を打ち砕かれる。
さらにもう1人が弾き飛ばされた時、ようやく兵士達はこの女が異常だと判断できた。
それほど目の前の光景は信じられず、それほど常軌を逸した速さで3人は殺された。
兵士達が銃を構え終わるまでに、さらに2人が弾き飛ばされ、銃口から弾が発射されるまでに1人の胴体が真っ二つにひしゃげた。
女を撃てる位置に居た全員の銃口が火を噴くが、女の動きは全く衰えない。
スズは自分に向かって来る弾丸を避けようともしない。
弾を避けられるほど兵士達から離れている訳でもなく、そもそも避けるという判断をしない。
頭に弾が当たっても、頭皮を削られるだけで弾は軌道を変えて別の方向へと跳ねていく。
傷を負った頭皮も、数秒で血が止まり再生が始まる。
スズの異常性を魔獣並だと判断した強化兵が前に出るが、スズを攻撃しようと伸ばした腕を一撃で叩き折られ、次の瞬間にはチタンに覆われた胴体を完全に潰されて転がった。




