防壁での攻防
防壁までたどり着いた俺とノリトは、そこでドラゴンから降りて、ドラゴンをその場に残したまま防壁に沿って全力で走り出した。
ドラゴンから300mほど離れると、ノリトのバッグからワイヤーとウインチを取り出して、防壁に登る準備をしてから、
「じゃあ頼むぞノリト」
「ああ」
ノリトがドラゴンに向かって手を叩いた。
するとそれを合図にして、ドラゴンが防壁を打ち壊し始めた。
ここまで離れていても、防壁に衝撃が伝わってくる。
その音を聞きながら、俺達はワイヤーとウインチを使って防壁を登る。
この都市の防壁は、俺達の町の防壁と違って随分高く10mをゆうに超えている。やがて…
ドォォンッ
一際大きな音を立てて防壁の一部が崩壊し、ドラゴンより一回り大きなサイズの穴が空いた。
その穴の向こうには、騒ぎを警戒して出て来た兵士達が集まって、それぞれが銃口を穴に向けている。
兵士達は防壁の穴から現れたドラゴンに一瞬怯んだが、すぐにそれぞれの引き金を引いてドラゴンを迎撃し始めた。
だが、その行為はほとんど意味が無い。
対魔獣の専用弾でも、ドラゴンの頑強な身体にはほとんどダメージを与えられないからだ。
ドラゴンを討ち取るつもりなら、相当な火力を備えた兵器が要る。
必死に銃を撃つ兵士達を、ドラゴンの容赦無い一撃が薙ぎ払った時、俺達は防壁の上まで上がりきった。
目の前には目的の建物があり、その建物は俺達が居る場所を起点に、ドラゴンと兵士達が戦っている所まである大きさだ。
俺達はその建物を見ながら、ある場所を探して防壁の上を走る。
その間も、増援の兵士達とドラゴンの戦いは続いている。
俺達が探しているのは、この建物の資材搬入口。
それを探す理由は、そこならばおそらくこの建物のある程度の地図が手に入るから。
資材を搬入した際、それぞれの種類と目的に応じて運搬しなければならず、その為には建物の区画や経路の情報が必要だろう。
「カツヤあったぞ、多分アレだ」
ノリトが見つけた資材搬入口の近くの防壁にワイヤーを垂らし、素早く防壁を下りた。
何人か人が居たが、兵士達ではなく民間業者と仕分け担当者らしい。
ノリトはその数人に向けて、用意していたサプレッサー付きの銃を向ける。
プシュ…プシュプシュ…プシュ
その場に居た全員が倒れたのを確認してから、俺とノリトは搬入口の先にあった部屋まで駆け、そこにあった端末から建物の地図をダウンロードし始める。
用意していた端末を操作しているノリトに、俺は声を掛けた。
「なあノリト、さっきの人達は兵士じゃない。
俺達はこの都市に乗り込むって決めた時に、人を殺す覚悟をして踏ん切りをつけたつもりだった。
人殺しに良いも悪いもないが…兵士じゃない人間、つまり死ぬ覚悟を持ってない人達を殺すのは…」
「安心しろよ、今撃った弾は麻酔弾だ。
俺だって目的に関係無い民間人を殺すのは、できるだけ避けたいからな」
顔を上げないまま、指を動かし続けているノリトが答えた。
やがて…
「よし!これで建物の構造とある程度の経路の情報は手に入れた。
カツヤ、スズとの約束までの残り時間は?」
端末をバッグに仕舞いながら、ノリトが聞いてくる。
「あと8分20秒、間に合いそうだ。
ドラゴンの召喚時間はどうだ?持ちそうか?」
2人で防壁に向かって走りながら、声を掛け合う。
「大丈夫だ、まだ少し余裕は残ってる…
予定通りやるぞ!」
防壁の下まで来た時、ノリトがドラゴンの召喚を解いて、そしてまたすぐに錠言を言い始める。
その間俺はワイヤーを防壁に掛けて、登る準備をする。
そして、再びドラゴンが召喚された場所は、俺達が最初に防壁を登った所よりも、更に100mほど先。
そしてドラゴンはまた防壁を打ち壊し始めた。
俺達は防壁の上に登って、ドラゴンが最初に開けた大穴に向かって防壁の上を走る。
防壁の下には、再召喚されたドラゴンに向かって走って行く兵士達が見える。
ドラゴンを囮として使ったが、今のところは上手くいっているようだ。
「さすがだな、お前の予定通りだぞカツヤ」
「ドラゴンには囮役ばかりさせて申し訳ないな」
「かまわない…できるだけリスクの少ない方法で、って言ったのは俺だ」
大穴まで着くと、そこには3人の兵士しか残ってはいなかった。
その兵士達をノリトが銃で仕留め、防壁の下にワイヤーで下りた。
ちょうどスズがワイヤーネットに入った魔獣達を引きずりながら、こっちに向かって来ている。
「やっほー、時間ピッタリだね」
「ああ、スズも上手く捕まえられたみたいだな」
さて、いよいよ建物の中に突入だな。




