都市に入る前の休憩時間で、これからの行動を考えた
「早くドラゴンに乗るぞ、召喚の時間が惜しい」
ノリトが声を掛けてくる。
ドラゴンはまだ息を荒くついていたが、俺達にその太い腕を伸ばして乗せてくれた。
その後も何度か魔獣に襲われたが、あの巨大な魔獣に比べると問題にならない奴等ばかりで、全ての魔獣をドラゴンだけで迎え討ち退けていった。
「俺が最初からドラゴンを召喚して行こう、って言っといてなんだが…順調過ぎる感じだな」
俺の言葉に、ノリトが返してきた。
「いや、やっぱりお前が正解だった。
このやり方でなきゃ、こんな短時間でここまで進む事はできなかった。
何だカツヤ、順調なのが気に入らないのか?」
「そんなんじゃないけどな…ま、余計な事は考え過ぎないようにするか…」
やがて山を抜けて川に出る。
川幅は15mほどで、見た目にはそこまで深くもなく渡るのに問題は無さそうだった。
「どうするノリト、ここで少しだけでも休憩するか?」
こういう開けた川沿いなら、周りが良く見えるから山とは違い、何かあってもある程度の余裕をもって対処できるだろう。
「疲れたのか?
珍しいな、カツヤが自分から休憩とか言うのは。
まあ、こないだ大怪我したばかりだから無理もないな。
この川を渡れば、廃墟を抜けるのにはそこまで時間は掛からないだろうし、ドラゴンの召喚時間にもまだ余裕はある。
休憩するか」
「いや別に俺の怪我はどうでもいいんだが…」
「よくないの!ちゃんと休まなきゃダメでしょ!」
スズに怒られるが、俺は違う事を気にしていた。
「俺が言ってるのは、ドラゴンの事だ。
ここまでの魔獣との戦闘は、全部ドラゴンに任せきりだった。
都市に着くまではドラゴンが頼りだ、無理はさせられないだろ」
口に出しては言わなかったが、ノリトの事も気がかりだった。
ここまでずっとドラゴンの手綱を取ってきたのだ。
訓練のように生易しくはなく、町の周りで魔獣を相手するほど短時間で終わるわけでもない。
常に臨戦態勢の緊張の中にあって、ドラゴンのような強大な力を持った召喚獣を制御する事は、相当な集中力と精神力を消耗するはずだ。
ノリトはちょっと逡巡したが、俺の意見に頷く。
「そうだな、さっきのデカイ魔獣との戦闘もあったし、少しだけでもドラゴンを休めてやろう」
休憩している間、ノリトが都市に入ってからの大まかな案を説明する。
「まず、都市に入って最初にやる事は目当ての建物に侵入する事。
でも、これはそこまで難しくないはずだ。
都市の防壁のすぐ先には、その建物があるからな。
で…建物に入ってからだが、始めに情報収集だ。
重要なのは、建物の構造と詳しい経路が記されている地図を確保する事。
でも、青写真なんかは手に入らないだろうから、用意してきた液晶端末にデータとして入手する。
建物の構造自体は、その建物の中に居る連中にとってはそこまで重要なものじゃないだろう。
だから、ある程度の情報設備が有る部屋に入りさえすれば、手に入れるのは難しくないはずだ。
あと、その建物は遺物を保管する為の警備施設でもあるから、できれば地図と一緒に配置されてる警備システムとかも分かればベストなんだが…それ以外は建物に入ってからでないと戦略の立てようがない。
それと…」
ノリトが俺を見て、ついでのように言ってきた。
「カツヤ、防壁の中に入る為の案…防壁にたどり着くまでに考えてくれ。
一番リスクの少ない方法を。
一応崖登り用のワイヤーと、電動ウインチは持ってきてある、あと爆薬も少しだが…」
「お前な、簡単に言うんじゃねえよそういうのを。
…とりあえずそのバッグの中身を全部見せろ、これ使っときゃ良かったのに…とかならないように」
ノリトが足元に下ろしていたバッグを開き、中身を確認する。
何に使うか分からないような物もあったが、それもノリトに聞いた。
「ん〜…だいたい分かった。それじゃ行くか」
再びドラゴンに乗って川を越え、廃墟が広がる町に入る。
廃墟の町の中には大きなサイズの魔獣は居なかったが、体長1mぐらいのトカゲみたいな奴らが結構な数で走り回っていた。
(コイツら使えるかもな…)
俺は咄嗟に閃いたアイディアを頭の中で組み立て、スズに声を掛けた。
「なぁスズ、頼みがあるんだが」
「なに?」
「ノリトのバッグに、ワイヤーネットが入ってる。
それを使って、走り回ってるコイツらをできるだけ無傷のまま、十匹ぐらい捕まえといてくれ」
「どうするんだ?」
ノリトが振り返って聞いてきた。
「上手くいくかどうか分からないが、やってみたい事がある」
「分かった」
ノリトはドラゴンを止めて、バッグの中からネットを取り出してスズに渡す。
「私がコイツらを捕まえている間、2人はどうするの?」
「俺とノリトは、その間に防壁の中に入って建物の地図を手に入れる。
スズも腕時計はしてるだろ?
今から20分後に、ここからまっすぐに見える防壁の所で待ち合わせしよう」
「うん、いいよ」
スズは頷いたが、ノリトは違った。
「いやいや待てよ…20分?
その間に防壁を乗り越えて、地図まで手に入れるなんてできるのか?」
「まあ、大丈夫だろ」
俺の答えを聞いて、ノリトは溜息を一つ吐いて、
「いいさ、お前ができる、って言うならできるんだろ?
じゃあスズ、頑張れよ」
「まっかせといて!ちゃんと時間通りに来てね!」
そう言ってスズがドラゴンから飛び降りたのを合図にして、ドラゴンが走り出す。




