ドラゴンと魔獣の戦い
町の外側は、腰の高さほどの草が生える草原が遠くに見える山すそまで広がっている。
俺がやり合ったサイズの魔獣があちこちに居るが、さすがにドラゴンに挑み掛かろうとはしない。
力の差を獣の本能が理解しているのだろうか。
しかし、その内の5頭がドラゴンから距離をとって追い掛けて来た。
「ねえ、魔獣が何頭か追い掛けて来てるよ?」
スズの言葉に、簡潔に答える。
「ほっとけ、どうせあいつらは単体じゃドラゴンには勝てないからな…こっちが何かしらの弱みや隙を見せない限り、ただ追い掛けて来るだけだろ。
水牛の群れを追い掛けるハイエナみたいにな」
草原を抜けて、山に入る。
ノリトの話では、この山を抜けた先に川があり、それを越えれば昔人が住んでいた廃墟があり、そこを通り抜けた所に都市があるらしい。
「そろそろ山に入るぞ」
ノリトが、バッグから片手で器用にアサルトライフルを抜きながら言う。
「カツヤ、こいつで後ろから襲われた時の牽制を頼む。
俺は前だ」
「分かった、でも学校の射撃訓練みたいに上手くいくか知らねえぞ。
それにノリトは銃を撃ってる場合じゃねぇだろ。
ドラゴンの制御だけに集中した方がいい。
スズ、お前なら片手でドラゴンに掴まったまま、俺の服を掴んで支えられるだろ?
魔獣が襲ってきたら俺は両手で銃を構えるから、落ちないようにしっかり掴んでてくれ」
「まっかせない!」
山に入ってからも、しばらくは魔獣に襲われる事はなかったが、
「後ろから来てる魔獣の数が減ったね、諦めて帰ったのかな?」
「いや、木や茂みに紛れてチームプレーで来るかもな。前にも回り込まれるかも知れん」
「何か上から来るよ!」
スズが指差した先…木々の上から何かが飛んできた。
「何だ!?岩なのか!?」
飛んでくるのは、2m弱の大きさの岩らしきもの。
ドガッ、ドドンッ!
飛んでくるそれを、ドラゴンが右に左に避けて行く。
どういう理屈で飛んでくるのか分からないが、避けられるなら問題ないか…
「また来るよっ…今度は4つ!」
ドラゴンが一つ目をギリギリで躱した時、
バッババッ
遅れて飛んできた残りの三つが、いきなり広がった。
「こいつら岩じゃないぞっ!」
広がったのは手脚…この魔獣達はダンゴムシやアルマジロのように身体を丸めて、体表の頑強な部分をぶつける事で、攻撃と防御を同時にやっていたのだ。
ドゴォ!
取り付こうとしてきた魔獣をどうにか避けるドラゴン。
だが、残りの二匹は回避が間に合わない…
俺が咄嗟にアサルトライフルの引き金を引こうとするが、
ガギンッ!ドガッ!
俺が引き金を引くよりも早く、ドラゴンがその背中の腕で魔獣達を殴りつけて弾き飛ばした。
「凄えな、流石は最強の召喚獣だ!」
その後も、驚異的なジャンプ力で自身を砲弾に変えて襲ってくる魔獣達を、ドラゴンが難なく避け、あるいは殴り飛ばしていく。
「スゴイね、偉い偉い!」
ドラゴンが魔獣達を迎撃する度に、スズがそのたくましい身体を撫でている。
「感心してる暇は無いぞ!」
ノリトの声に振り返ると、最初から俺達を追い掛けて来ていた魔獣達の二匹が正面に回り込んでいた。
「後ろのヤツらも距離を詰めてきやがったな…
ここで挟みうちにするつもりか?」
ドラゴンと魔獣達の距離がみるみる縮まる。
が…その時、更に別の魔獣が現れた。
グギャオオオォッ!
叫び声と共に、正面に回り込んだ魔獣が引き裂かれながら弾き飛ばされたのだ。
それをやったのは、俺達が初めて見るサイズの馬鹿デカい魔獣。
その姿は大型のネコ科の猛獣にそっくりで、ドラゴンの倍以上の大きさ。
「マジかよ…ノリト、大丈夫なのか!?」
「俺もあんなサイズは初めて見たが、大丈夫だ!
ドラゴンは怯んでない!」
ノリトの言う通り、ドラゴンの走るスピードは全く変わっていない。
そのまま巨大な魔獣に迫る…
だがこのままじゃ俺達がヤバイ!
「ぶつかるぞ!飛び降りろ!」
俺達がドラゴンから飛び降りた直後に、
ドガアァッ!
ドラゴンが魔獣の前足の片方に額をぶつけた。
それと同時に、魔獣がもう片方の前足を上から振り下ろす。
大木が降ってくるようなそれを、ドラゴンは背中の二本の腕を使って受け止める。
無理やり受けるのではなく、その衝撃をそのまま受け流すように利用して、額をぶつけた魔獣の前足を肩から生える二本の腕で殴りつけた。
ドドォッ!
さすがにその威力に耐えられなかったのか、魔獣が前のめりに倒れた。
その隙を逃さず、ドラゴンが魔獣の喉に喰らいつく。
魔獣は反射的に、全ての足を使って全力でドラゴンを引き剥がそうともがくが、どうにかドラゴンを引き剥がした時には、ドラゴンが魔獣の喉を喰い破っていた。
血を噴水のように辺りに撒き散らしながら、魔獣の巨体が痙攣し、やがて動かなくなった。
「本当に強いのね、ドラゴンて!」
スズの声に俺も答える。
「ああ、ただ単純に力が強いだけじゃない…
相手の攻撃を利用したり、弱点を的確に攻撃したり…
正に戦う為に存在する感じだな」




