幼馴染みの3人は、こんな感じ
俺は、憧れていた…
だから、どうあっても助けたかった…
俺は、余りにも遠くに居た…
だから、どんな事をしてでも勝ちたかった…
私は、唯一緒に居たかった…
だから、全てを懸けて守りたかった…
だからこそ…
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放課後、3人で駄弁りながらの帰り道…
スズがピタリと足を止めた。
「そうだ!」
「?」
つられて、俺とノリトが足を止めると、
「ねぇねぇ、久しぶりにさ…小学校の近くのオッチャンの店に行ってみようよ!」
ものすげえ発見をしたような勢いのスズの提案に、ノリトが思い出しながら相槌を打つ、
「ああ、妙に美味い駄菓子ばかり扱ってた店か…」
「そう!あそこさ、小学校が無くなっちゃってから全然行ってなかったじゃん!」
「駄目だな、今日は持ち合わせが無い」
ノリトが軽く首を振って歩き出そうとするが、スズはそれを引き止める。
「いいんじゃない?
私が行く時にはあそこのオッチャン、けっこうタダでお菓子くれてたし」
俺はちょっと考えてから、首を横に振る。
「だったら尚更ダメだな」
「?なんで?小学校の時の私の可愛さより、今の方がレベルアップしまくってるのに?」
不思議そうな顔をするスズに、ノリトは諭すように、
「あそこのオヤジはな、昔のお前…つまり男の子みたいな女の子に気があったんだよ」
「今のお前のレベルアップしまくったその胸じゃ、無理に決まってる」
俺に胸を指差されて、スズはまたピタリと足を止める。
「どうした?」
「…く、またこれが仇になろうとは…ねえカツヤ、私ね…前は胸が大っきくなったらきっと良い事ばっかりなんだろうなって、そう思ってたんだ。
やっばさ、女子なら誰でも憧れるの…でもね、良い事よりも悪い事の方が多いのよ」
沈んでいくスズを見ながら、慰めるのと放置するのと、どちらの方が早く帰れるか考えていると、ノリトに背中をつつかれた。
どうやら慰める方向らしい…
「そんな事無いだろ…
巨乳の方がスタイルも良く見えるし、男にだってモテるんだ。なあ、カツヤ」
「そうそう、だいたい何で悪い事の方が多いって分かるんだよ?いちいちカウントしてる訳でもないだろ?」
「カウントしてるのよ最近…
うつ伏せになると痛いし、可愛いブラは小さいのがほとんどだし、メイド服とかも小さい方が似合うでしょ?
1回ゴスロリにも挑戦してみたけど…イタイだけだったわ…」
(うわぁ…めんどくさ…)
俺の本心としてはもうさっさと帰りたかったが、この放置したまま帰るというパターンからすると、夜には大量の料理…と呼べるのかも怪しい物を引っさげて、なぜか俺の部屋に押しかけて来やがる。
(ちくしょうっ…)
「なあスズ、今お前が言ってるのは悪い事の方だろ?
良い事言ってみろよ、何でもいいから…それに俺とノリトが思ってる良い事を足せば、悪い事の数を上回るだろ?」
俺のセリフを聞いてノリトが眉をひそめるが、知った事か先に慰め始めたのはお前だ。
「…良い事?
そうね、こないだ初めて着てみたんだけど、ドレスとかなら良く似合うかも…
あとノリトが言ったように、スタイルに自信が持てるようになったかもね…
たまにクラスの女子が向けてくる視線に優越感感じる時もあるかも…
あ、こないだね、ムカつく生徒会長居るじゃん、ちょっとイケメンで勉強できるからって、いい気になってるヤツ。アイツが告ってきて、それを大袈裟に振ってやる事ができたのも、胸の魅力?
他には?」
(コイツ会長に告られてやがったのか…まあいい)
「ドレスが似合うって事は、大人っぽく見えるって事だろ?それって他の女子からしてみれば、十分羨ましい事なんじゃないか?」
俺がスズのプラス発言を補足するようにしながらノリトに目で合図すると、ノリトも更に上乗せしてくる。
「そうだな…他の奴らからしてみれば、魅力的な要素のはずだ。
スズがゴスロリやメイド服の似合うヤツを羨ましいと思うように、スズだって周りから見ればそういう嫉妬や憧れの目で見られてると思う」
「…そっかな…う〜ん、そう考えるとなんか胸が大きいのも悪い気はしないかも…」
次第に晴れやかな顔になっていくスズ、
(どうやら上手くいったか…これでスズが俺の部屋に来る事は無いだろう…)
「じゃカツヤも私の事魅力的だと思う?」
俺の腕を引いて聞いてくるスズ、
「俺が?お前を?…いやそれは無いんじゃね?
性格とか趣味、思考傾向ほぼ知ってるんだ。
10年以上一緒に居るのに、それはねえよ」
「…そう…ま、そうよねぇ、カツヤだし」
ノリトが一瞬固まって、そして心底諦めたように首を振りながら、さっさと歩き出した。
そしてその日の夜、
「さあカツヤ、今日は新しいのを見つけてきてあげたわ!」
スズが俺の部屋に心底嬉しそうな声で襲来した…
その姿を見ても、俺はスズが来た理由が分からずに、すぐには行動(逃げる事)ができなかった…
俺の部屋に先に上がり込んでいたノリトは、なぜか驚かずむしろ予想していたように落ち着き払っている。
(なぜコイツが来た?帰り道ではきちんとフォローしたはずたろ?一体どこで何をまちがえた?
いや、それも気がかりだが、今のコイツの言い方は…)
「スズ、お前今見つけてきたって言ったのか?
新しく開発したんでも無く、作ったんでも無くて見つけてきたって、言ったよな?…何を?」
俺のセリフに対して一切言葉を返さずに、スズは唇を三日月のようにして袋に包まれたそれをテーブルに置き、中身を見せる。
「…ヘビかよ!」
「ヘビじゃ無いわ…ヘビによく似た魔獣よ♪」
「どっちでも一緒だ!ってか余計に悪いわ!
こんなん食えるかよ!」
「ちゃんと焼いてあるけど?」
「焼けば良いってもんじゃねえんだよ!
皮とかそのままじゃねえか!
ヘビとか皮の硬い爬虫類を調理する時には、ちゃんと血抜きとかして皮をはいでから焼かないと食えない…いやそもそもこんなん食えねえよ!」
「食った事が無い物の調理方法まで知ってるのが、俺には不思議だが?」
ノリトがつっこんでくるが、今はそんな事どうでもいい。
ガタッ!
ガシッ…
逃げようとした俺の腕は、あっさりとスズに捕まり、そのまま床に押し倒されてマウントポジションを取られる。
相変わらずの反射神経と馬鹿力だ…
そしてあろう事か、ノリトがスズの手に箸とヘビモドキの皿を乗せた!
「ノリト、何やってる?」
「見て分からないのか?スズに協力する事で俺はこの場から逃げるんだよ」
「なぜだ、俺が何をした!?」
「それは自分で考えるんだな…そもそも帰り道でのお前が悪い。
身から出た錆ってやつだ。
それじゃあスズ、あとはごゆっくり」
「ありがとノリト、また明日ね」
俺には挨拶も無しに、裏切り者が部屋を出ていった。
「さあ、カツヤ」
「待て、お前が力技で来るなら俺も強行手段を取るぞ」
「ふうん…腕相撲でも勝てないこの私相手に?」
「ああ…ただの腕力ならばお前に勝てるヤツなんて居ないかもしれんが…」
スズが箸と皿を持っているおかげで、俺の両手は自由だ。
その両手をスズの前に突き出して、とっさに思いついたにしては効き目が有りそうなセリフを言ってやった。
「お前の胸を揉んでやるぞ」
俺のセリフにスズの表情が止まり、言葉を返さない…
(…勝ったか?)
「へえ…カツヤが私の胸を揉むんだ?
ンフフフフフ…好きなだけ揉んでて良いわよ?」
「ナンダト?」
「ああ…可哀想ねカツヤ…まだ分かってないの?
貴方が私の胸を揉んでる間、どうやってこれを食べさせられないように拒むつもりなの?」
(あ…)
「お前!付き合ってもないヤツに胸を揉まれても平気なのかよ!」
「だからカツヤならいいって♪
さあ食べて…その間揉んでていいから♡」
「ちょ…まってくださああああああああああああい!!」
敬語で言ってみたけど、待ってもらえませんでした…