青を重ねた紫の花
ここは、誰も立ち入ることが許されない場所。王の思い出の地と民の間で囁かれている、城の離れ。
窓辺に机と椅子。壁際の硬いベッド。家具はたったそれだけしかない。本棚も無い、王が使うには粗末な部屋。
机にはシンプルな花瓶と一冊の本が置かれている。
その本のページは思いを綴っただけの、何の変哲も無い物。小さく、濡れた後の残った、何の変哲も無い、普通のページ。
これは、四人の人間の思いを綴った、一つの日記。
風が本を捲る。表紙が捲られ、頁が捲られ、そこには一枚の絵が張り付けられていた。
黒髪の女性と金髪の男性。そして、花を女性に差し出している黒髪の少女。
少女の瞳の部分は色が滲んでいるが、青みを帯びた紫色の瞳なのだろう。紫の上から青が重ねられている。
幼い子供が書いたのだとわかる拙い絵。
絵の中では女性と男性が優しく、少女は嬉しさを前面に出して笑っている。
絵の隅には『Beloved family ―――大切な家族』と書かれている。
それは、泣きたくなる程に暖かい絵だった。
からり、窓辺のラベンダーが揺れた。




