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プロローグ
目の前に広がるのは、無機質な白で覆われた空間。病院のベッドに横たわる君は、まるで眠っているようだ。穏やかな寝顔は、普段と変わらない。ただ、呼吸の音が、微かに、機械音混じりに聞こえるのが、現実を突きつける。
触れると、まだ温かい。けれど、この温かさが、いつ消えてしまうのか、不安で押しつぶされそうになる。
「起きて」
何度も、心の中で叫ぶ。けれど、君は目を覚まさない。
君の手を握りしめる。力を込めても、握り返してくれることはない。
「お願い、気づいて」
涙が頬を伝う。こんなにも祈ったことは、今までなかったかもしれない。
君のことを、どれほど大切に思っているか、伝えたい。
君との思い出が、走馬灯のように駆け巡る。
初めて出会った日のこと。
一緒に笑い合った日々。
ケンカしたこともあったけれど、それも大切な思い出。
もし、このまま、君が目を覚まさなかったら。
そんなことを考えると、恐怖で息が詰まりそうになる。
「置いていかないで」
心の叫びは、あなたに届くのだろうか。
ただ、君の手を握り、祈ることしかできない。