針路
地球に向かうことが決まった。
宙森の原型の人々の意見がまとまったためである。パックもそうだが、その場にいる全員が、地球に強い好奇心を抱いていたのである。
パックたちはシルバーの巡洋艦【弾頭】に乗り込むことになったが、数十人いたガラスの管理人は、最初の一人を除き、姿を消していた。
「お供するのは、わたくしだけです。我々はすべて同じ鋳型からできておりますので、一人だけ同行すれば充分なのです。ここに残った仲間たちは、常に連絡が取れますから」
それを聞いて、パックはほっとなった。正直、ここにいる総ての管理人が【弾頭】に乗り込むことになったらと思って、ひやひやしていたのである。
いくら巡洋艦とはいえ、今現在の乗り込んでいる原型だけで、艦内はかなり混み合っていたからだ。この上、数十人ものガラスの管理人が乗り込む余裕はなかった。
全員が乗り込むと、パックとミリィは操縦席に座り、手早く出発の準備を整える。
操舵室の中央には、サークのタンクが据えられた。タンクのディスプレイからサークは真正面の船窓に見えている地球を見上げる。
「地球か……。色々な伝説が語られているが、そのどれが真実なのか、またただの昔話なのか。我々原型があの星から宇宙へ飛び出し、銀河系に広がった。しかし、今は……」
サークの顔に憂愁が浮かぶ。ルーサンは首を振って話し掛ける。
「おれたち、故郷に戻ることになったんだ。もう、どの〝種族〟から追いかけられることもない! きっと新たな歴史が生まれるさ」
管理人は、ぽつりと謎めいた言葉を洩らした。
「きっと、皆さんが驚く真実がありますよ」
【弾頭】は浮かび上がり、地球へと針路を取った。