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ヘロヘロ

 じわじわと怒りがこみ上げてくる。


 あの親爺、おれをからかってやがる! こんなスクラップの山から宇宙船を組み立てろだって?


 パックはスクラップの山を見上げた。

 確かに、山の中には無数の部品が雨ざらしになり、積み上がっている。中には宇宙船の部品らしいものも散見される。

 親爺の言うとおり、根気よく探せば宇宙艇を組み上げられるだけの部品は見つかるかもしれなかった。が、どうやって探せばいいんだ?


 やっぱり無理なのか……。


 パックは諦めて背を向けた。

 その時「なあ、あんた」と声がかかる。


 ぎくり、とパックは足を止めた。振り返る。

 確かにあのスクラップの山の中から声がした……ようだったが?


「ねえ、そこの……あんた、宇宙船が欲しいんじゃないのか?」

 パックは声の方向を見つめた。ごたごたと部品が山になっている真ん中から、ひこひこと小さな明かりが瞬いている。明かりは細いホイップ・アンテナの先についているようだった。その明かりが声とともに明滅していた。


「だれだ、お前は?」

「だから宇宙船が欲しいのか、って聞いているんじゃないか!」

 声に苛々した調子が加わる。

「欲しいさ……」

 パックは答えた。どんな相手が話しかけてくるのか判らないが、興味が湧いてきた。

「あんた、原型プロトタイプだな?」


 声にパックは、むっとなった。こんな相手にまで原型呼ばわりとは……!


「だから、なんだ!」

「原型なら、宇宙船を上げるよ。僕、ずっとあんたみたいな人を待っていたんだ。ここに宇宙船を探しに来るのは、〝種族〟の連中に限られていたからね。やっと原型の人間を見つけられて、ほっとしているんだ」

 ますます興味が増してくる。まるで嘘みたいな話だが……それが本当なら?

「おれが原型だから宇宙船を貰える、ってのか? どういう訳で、そういうことになるんだ?」

「船が欲しくないのか、欲しくないのか、どうなんだい!」


 声が急に強い調子になった。パックは唾を呑みこんだ。


「欲しいさ、そりゃ……」

「それじゃ」

 ホイップ・アンテナが興奮したように、ぷるぷると震える。

「僕をここから掘り出してくれ! ずっとこのスクラップに埋まって動けないんだ」

 がらがらと崩れそうになるスクラップの山をパックは苦労してよじ登った。瞬いている明かりの前に立つ。

「掘り出してくれって……ここに埋まっているのか?」


 手を伸ばし、アンテナを握る。ぐいっと引っ張る。


 やたら重い。ずるずるとスクラップの山に埋もれた声を掛けてきた相手が、どうにかゴミの間から引き出された。

「な、なんだあ、お前は?」

 パックは叫んでいた。

 アンテナにくっついていたのは、まん丸の顔だった。黄色い肌の、どうやらロボットの顔の部分らしい。大福餅のような柔らかな素材で、真っ直ぐな口と大きな目玉がついている。

 口をにたりと笑いの形に歪ませ、ロボットは口を開いた。

「へへへ……僕、ヘロヘロっていうんだ。よろしく」

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