始動
あとには、バングだけが残される。バングは背中でハッチを押して、外から開かないようにしていた。
パックはハッチの覗き穴から状況を見て取り、どんどんどんと何度も内側から叩く。
「バング、何やってんだ! お前こそ、なんで入らない?」
「早く宇宙船を!」
バングはハッチの向こうから叫ぶ。
叫ぶや否や、バングは警備員たちの中に突っ込んだ!
警備員たちは「おっ!」と叫ぶと、銃口の狙いをバング一人につけた。
一斉にビームが放たれる。
バング一人の身体に、ビームが吸い込まれた。
「ぐああああっ!」
バングは声を限りに咆哮した! 苦痛に全身が痙攣する。
勝利の色がバルト人の顔にのぼる。
だが、バングは苦痛に耐えながら、バルト人に迫り、腕を振り上げ、拳を最初に目に付いた男に叩き込む!
「ぐえっ」という悲鳴をあげ、バルト人の一人が吹っ飛ぶ。残りのバルト人の間にさっと緊張が走った。
バングは再び叫んだ。
「早く! 何してやがるっ!」
それを見守っていたパックの肩を、ぐいっと掴んだ手があった。
ふり返ると、ルーサンの悲痛な顔があった。
「パック、頼む! 宇宙船を動かしてくれ!」
「だ、だけど……」
パックの抗議にルーサンは首を振った。
「時間がないんだ!」
叫ぶなり、手を伸ばしてパックの肩を掴んだままぐいぐいと操縦席へ引っ張っていく。操縦席にはミリィが座っている。
ルーサンはパックを強引に席に座らせた。操縦席の窓から、バングが孤軍奮闘しているのが見えていた。ビームの集中砲火を浴びながら、バングは当たるを幸い、獅子奮迅の働きで暴れまわっている。
たった一度、それも掠っただけで死ぬような苦痛を味わう神経衝撃ビームを、さっきからまともに、それも何本も浴びているのに、バングは信じられないほどの活躍を見せている。
「パック! さあ、この宇宙船を動かしてくれ!」
ルーサンが叫ぶ。
パックはバングを見た。
とうとうバングは、ばったりと格納庫の床に大の字に倒れこむ。ぴくぴくと全身が痙攣している。警備員たちは念のためか、気絶したバングの身体にビームを注ぎ込んだ。ビームが当たるたび、バングの意識を失った手足が、がくがくと壊れた操り人形のように跳ねている。
ひと言「糞っ!」と叫ぶと、パックはぐいっ、とエンジンの始動ボタンを捻った。
ひいぃぃぃぃん……と、悲鳴のようなエンジンの響きが船内に満ちた。その音に、警備員が「はっ」と顔を仰いだ。
もう一度「畜生っ!」と叫び、パックは宇宙艇【弾頭】を浮かび上がらせる。
「逃がすなっ!」
叫んで警備員は、それまで手にしていた神経衝撃銃から、熱線銃に持ち替えた。腰だめに【弾頭】の船腹を目がけ、熱線銃のビームを当てる。
ばちばちばちっ! と【弾頭】の船体が火花を散らした。攻撃をまるで意に介せずに【弾頭】は格納庫から飛び出していく。