バング
格納庫の入口付近から、警備員の制服を着た数人のバルト人の一団が姿を表した。
先頭に立つのは、パックとミリィが出会った、秘密の通路の警備員をしていた男だ。男の顔には「してやったり!」という表情が浮かび、残忍な復讐心がてらてらとした赤みを帯びさせている。
「そいつはシルバー船長の持ち物だ! お前たちに手を触れさせるわけにはいかねえ!」
パックは、さっと神経衝撃銃を構え叫ぶ。
「すっこんでろ! この銃が見えないのか?」
「おおっと……」とバルト人は踏鞴を踏む。
にやり、と笑顔が浮かんだ。
腰の所に巻いたベルトのバックルに手を掛けた。
と、バルト人の全身を、輝く薄い膜が包む。
「これが判るか? 察しの通り、空間歪曲バリアーさ! あの時これを装備していれば、お前の神経衝撃銃など恐れることはなかったよ。さあ、撃って見ろ!」
他のバルト人たちも、同じように全身がバリアーに包まれた。まだ船内に入っていない原型の中から、恐怖の叫び声が上がる。
パックは引き金に指を掛けた。
銃口から神経衝撃ビームが迸り、バルト人のバリアーにぶち当たった!
が、バリアーの表面がぱちぱちいうだけで、バルト人は平気な顔をしている。パックは唇を噛みしめ、手にした銃を投げ捨てた。
がちゃん、と大袈裟な音を立て、神経衝撃銃は格納庫の床に転がった。
それを見て、バルト人は高らかな笑い声を上げる。
「それでお終いか? それじゃ今度は、こっちからだ!」
バルト人もまた、神経衝撃銃を手にしていた!
細い、神経衝撃ビームがまだ船内に入っていない原型の人々に襲い掛かる。ビームが素早く人々の中を薙ぎ、次々に悲鳴が上がった。バルト人の警備員たちは、ビームを次々と繰り出しながら、大股に近づいてきた。
それを見て、ヘロヘロは「ひえっ」と悲鳴を上げながら、船内に駆け込んだ。
悲鳴を聞きつけ、バングがハッチから顔を出す。
一目で状況を見て取り、その顔に怒りが差し上った。ハッチの近くにいるパックとミリィに早口で命令する。
「お前たち、なにボヤボヤしてるんだ? さっさと中へ入れ。お前たちがいなければ、こいつら逃げることはできねえんだ!」
逡巡するパックとミリィの襟首をむんずと掴み上げ、物凄い膂力で【弾頭】のハッチへ投げ込む。
「バング!」
パックは叫んだ。バングはパックたちが船内に入ったのを確認すると、残りの人々を無理矢理ぐいぐい押し込み、なんとハッチを外から、ばたんと大きな音を立て閉めてしまった。