協力
原型の指導者、サークとの面会に、パックとミリィは衝撃を受けていた。さすがに気絶はしなかったが、こみ上げる悲鳴を堪えるのに必死であった。
ところが、ロボットのヘロヘロは、ロボットのくせに早々と気絶し、白目を剥いて引っくり返っている。「僕は気絶している!」と主張するつもりなのか、頭のホイップ・アンテナの先端からホログラフィーで、くるくる回転する星のマークが五個、古代オリンピック・マークのような輪を描いていた。
「信じられない……わ!」
唇を真っ青にさせながら、それでもミリィは気丈さを見せた。
「でも、どうしてその姿を曝すの? 仮想現実なら、その姿を見せずに、人と対応できるでしょう?」
画面のサークは生真面目な顔つきのまま、無言で頷いた。その無言に、パックは「そうか!」と合点する。
「あんた、その姿を見せれば【大校母】がやっている酷い行為の証明になると思っているんだな! そりゃそうだ! あんたの姿を見れば、どんな馬鹿でも【大校母】には捕まりたくないと思うしな」
サークは再び頷き、口を開いた。
「そうだ! わたしだって、自分がこういう目に遭うまでは信じられなかった。噂では聞いていたが、まさかという気持ちもあった。その油断が、わたしを【大校母】の手に落とさせ、こんな姿にさせた原因でもある。わたしは二度と、他の原型をこのような無残な姿には断固させたくない!」
サークの言葉によって、その場にいたパックとミリィ、それに、迎えに来たバング、ルーサン、なぜかその場に立っているアルニの間を、粛然たる静寂が支配する。
と、何かを思い出したように、ルーサンがサークに向かって口を開く。
「サーク、それより、例の計画のことを……」
画面のサークは「おおっ!」と叫び、苦笑いをした。
「失礼……! つい、この姿になったときのことを思い出して、われを忘れてしまった。わたしのこの姿を見れば分かるだろうが、我々原型は、ここ宙森に未練は一欠けらも持ち合わせていない! 一刻も早くここから脱出することで、全員の意思が統一されている。しかし、今までは、その手段が皆無だった……」
パックは首を捻った。
「どうして……? だって、宇宙船がやってくれば、そこの船長に頼んで……。ああっ、そうか! うっかり、そんな真似をすれば【大校母】の手に捕まっちまう!」
サークは苦い顔を見せた。
「そうだ。我々は格納庫に姿を見せることすらできない。君らが燃料補給の際、甲板員に妙な言いがかりをつけられたのは、【大校母】の差し金だろう。だが、今は【大校母】の統制が緩んでいるチャンスだ! 今のうちに格納庫の宇宙船を乗っ取り、脱出しようというのだ。それには、君らの強力な協力が必要だ」
パックとミリィは顔を見合わせる。
「おれたちの協力? おれたちが、何をできるっていうんだい?」
ルーサンが、ぼそりと呟いた。
「あんたら、宇宙船の操縦ができるんだろう?」