混乱
「ほう」と、シルバーは皮肉な笑みを浮かべる。
「それで、どうするつもりだ?」
「ミリィから手を離せ」
怒りを全身に顕し、パックは銃口をシルバーに向けている。
「厭だと言ったら? お前に撃てるかな?」
「撃てるさっ!」
言うが早く、パックは引き金に指を掛けていた。引き金を絞る。
途端に銃口から青白い、神経衝撃ビームが迸り、シルバーの胸板にぶち当たって砕け散った!
シルバーは微動だにせず、逆にせせら笑った。意外な展開に、パックは呆然となり、だらりと手にした銃口が下を向く。
「そんな……」
神経衝撃銃は、人間の神経組織を直に刺激する武器である。身体には傷一つつけることなく、猛烈な痛みを与える。このビームが掠っただけでも、人間は絶叫し、転げまわる苦痛に耐え切れることはできない。そのビームをまともに受け止めたに関わらず、シルバーは笑っている!
「馬鹿者めが! おれの神経組織は人間と違うのだ。そんな玩具が、おれに効くわけがない!」
シルバーの嘲笑に、パックは唇を噛みしめた。目が忙しく部屋の中をさ迷う。
「そうか……それなら!」
さっとパックは一方の標的に銃口を向け、もう一度、引き金を引いた。
「ぎゃあああああっ!」
と絶叫が上がる。
ビームの先には【大校母】がいた!
絶叫し、苦痛に悶え、【大校母】は巨体をどすんどすんと地響かせ、部屋の中を転げまわる。
シルバーは、ぽかんとなっていた。
その手が緩んだようだ。ミリィはシルバーの把握から逃れ、身を捩って地面に転がる。
さっとパックが近づき、手を伸ばして、ミリィを引き起こした。ヘロヘロに向かって叫ぶ。
「今だ! 逃げるぞっ!」
「うんっ」と、ミリィとヘロヘロは強く頷いた。
パックとミリィは手を握り合い、猛然とダッシュする。それを見たシルバーは追いかけようと走り出したが、その目の前に転げ回った【大校母】の肉塊が立ちはだかった。
苦痛に転げ回る【大校母】の肉塊が持ち上がる。
シルバーは「はっ」と慌てて口を開き、逃げようとする。だが、時すでに遅かった!
どすん、と【大校母】の肉塊が、シルバーの頭の上から圧し掛かってきた!
「ぐわあっ!」
シルバーは押し潰された。
「やった!」
それを見たパックは、思わずガッツ・ポーズをとる。ミリィは早口で叱り付ける。
「逃げるって言ったのは、あんたでしょ! さあ、早く!」
「わ、判った……」
混乱を後に、パックたちは逃走を続ける。