激変
教授は大声を上げた。
「シルバー! さあ、立ってみろ!」
銀色の巨体が、おずおずと身動きした。足が上がり、台から降りると、床に降り立つ。
バランスがとれないのか、しばしの間、ふらふらとしていたが、やがてしっかりと力を込め、立ち上がった。
ミリィは息を呑んだ。
銀色の巨人の表情が変化する。それまでの彫像のような無表情から、いきなり驚きの感情を浮かべたのだ。
「わたしは……生きている! これが、生きているということか! 知らなかった……」
教授は、ほくほくとした笑顔を見せた。
「うむ! お前の身体は、ほとんど金属だが、神経組織に関しては、人間のものと同じだ。今まで感じなかった感覚は、どうだね?」
巨人はじろりと教授を見つめた。
ミリィは「はっ」となった。
その目付き! なにか、とても危険な感じがする……。
教授もまた同じ感情を抱いたようだ。さっと一歩、後じさる。
「どうしたシルバー……。気分が悪いのか?」
「ふっ」とシルバーと呼びかけられた銀色の巨人は笑いを浮かべる。
人格が激変したかのようだ。
「気分? 気分は上々だ。これまでにない、いい気分だよ、フリント教授」
どすの利いた、低く轟くような声音。
教授の顔が蒼白になった。
ゆっくりとシルバーは、部屋の出口へと向かう。じろりとミリィの顔を見る。
ミリィはシルバーの目に、冷やりとした鋭い光を認めた。
教授は追いすがった。
「待て! どこへ行く?」
シルバーは教授を振り返った。
「あんたには、礼を言う。この身体に生まれ変わらせてくれて、おれは今まで知らなかった世界を感じることができた。おれはこれから、もっとこの世界を楽しんでやる!」
シルバーは出口へ向け、悠然と歩き出す。ミリィと教授は呆然とシルバーを見送るだけだった。
シルバーが出て行くと、ミリィは教授に話しかけた。
「お祖父ちゃん、いったいシルバーは、どうしちゃったの?」
「判らん!」
渋面を作り、教授は頭を振った。ごしごしと両手の手の平で顔を擦る。
「あのような態度に出るとは、想像もしなかった! これから奴は、何をしでかすのか……」




