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追跡

 通常空間に出現した宇宙戦艦【鉄槌】は、すぐさま外部走査装置を全開にし、あたりの空間を探った。


「【呑竜】発見! 一天文単位と離れてはいません!」


 部下の報告に、シルバーは頷いた。

 火事に見舞われ、頭から消火液を被ったシルバーは、部下に命じて自分の身体をごしごしと磨き砂と鑢で磨かせている。

 手持ちのグラインダーがぎゅるぎゅるぎゅると小気味いい音を立て、シルバーの肌にくっついた油や汚れを削り取っていく。

 ほどなくシルバーの肌は、ぴかぴかの鏡のような輝きを取り戻した。

 すっかりさっぱりした気分になって、シルバーは新しい制服を身に着けた。


「無反動スラスターの航跡は?」

「見てとれます。現在、光速の九十パーセントを超えています。もうすぐ、九十九パーセントに到達! 今、到達しました!」

 別の部下が報告する。

「【呑竜】の超空間フィールドが展開! ジャンプをするつもりです!」

 シルバーは緊張した。

「行き先は推測できるか?」

「はい、近場の星へ向かうようです……方向は……」


 すると別の部下が声を上げる。


「違います! こちらの計器では【呑竜】は再び洛陽へと向かっております!」

「馬鹿な! こちらでは銀河を飛び越え、マゼラン雲へ向かうと出ているぞ!」

「間違いだ! 間違いだ! どっちも間違いだ! こっちの計器では、ジャンプなんかしないと出ているぞ!」


 艦橋の部下たちは口々に違うことを言い合い、たちまち喧騒が巻き起こる。

 苛々とシルバーは足踏みをした。


「ええい! いったいどうなっているんだ!」


 シルバーの大声に艦橋はしーん、と静まり返る。

「なぜお前ら、違うことを言うのだ! いったい【呑竜】はどこへ向かっているのだ?」

 すると、一人の部下がおずおずと口を開いた。

「あ、あのう……シルバー艦長、お聞きしたいのですが【呑竜】とはなんです?」


 ぎくりとシルバーは、その部下を見つめた。


「なんだと? もう一遍、言って見ろ!」

 名指しされた部下は、おどおどと視線をあちこち動かす。

「はあ、いったい皆さんが何を仰っているのか? 【呑竜】というのは、宇宙船の名前ですか?」

 真相に思い当たり、シルバーは呻いた。


「シュレーディンガー航法! ミリィの奴、不確定性原理の海へ逃げ込むつもりだっ!」

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