まさか!
モニターの【呑竜】が床から浮き上がり、格納庫の外へと飛び出していく。
それを見つめ、シルバーは悔しさに唸り声を上げた。
「糞、あいつら、まんまと……。まさか真空に生身で立ち向かうとは思わなかった……」
操作卓でコンピューター・グラフィックで再現された【呑竜】を分析していた部下に尋ねる。
「どうだ、メモリー・クリスタルの在処は、突き止めたか?」
部下はシルバーを見上げ無言で頭を振った。表情に疑いが表れている。
「これを見てください」
指し示したモニターの【呑竜】は、文字通りばらばらになっていた。ありとあらゆる部品が分解され、モニターの画面一杯に散乱している。
「螺子一本にいたるまで分解し、走査したのですが、それらしい部品は見当たりません。本当にあるのでしょうか?」
だん、とシルバーは椅子の肘を叩いた。
「あるはずだ! ミリィは祖父のフリント教授から〝伝説の星〟の所在を示す星図を受け取っている! 必ず、ミリィは【呑竜】に隠している! もっと探せ!」
シルバーの命令に、部下は渋々とモニターに向かう。
シルバーは、ぎゅっと拳を握りしめた。
「あるに決まっている。絶対、ミリィは星図を隠している……。しかし、どこだ? 洛陽シティに隠したのか? だが、自分は停滞フィールドに逃げ込んで在処が不明になる、などという危険を冒すだろうか? 誰もが探さず、疑いを持たれない場所。そもそも、そんな場所が、あるのか?」
シルバーの両目が大きく見開かれた。
「まさか! そんなことが! 星図をあそこに隠したというのか?」
さっと航法士に向かい、叫ぶ。
「【呑竜】の位置は?」
「現在、本艦より急速に離脱中。あと数秒で超空間フィールドの外へ出て、通常空間に転移します。こちらも通常空間に戻りますか?」
シルバーは頷いた。
「超空間から通常空間に戻る。戻ったらすぐに【呑竜】の航跡を探査せよ! 【呑竜】の超空間フィールドが展開したら、それを即座に観測するんだ!」
シルバーは星図の隠し場所について、確信があった。
その隠し場所とは……。