表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/127

 フラッシュのような眩しい光の爆発に、パックはぎゅっと目を閉じていた。

 恐る恐る薄目を開け、強烈な光に目を慣らしていく。


 ぴちゅぴちゅぴちゅ……と、小鳥の声が聞こえてくる。一面の緑、ここは森の中だ。


 宇宙船の中に、森?


 全長五十キロにもなろうかという巨大な小惑星である。その小惑星に艦橋や、超空間ジェネレーター、無反動スラスターを備え付けた戦艦であるから、森の一つくらい内部を刳りぬいた中に存在してもおかしくはない。

 それにしても、予想もしなかった光景にパックは驚いた。


 空は、ぎらぎらとした光に覆われている。壁面が発光しているのだろう。太陽は見えないが、昼間の光を再現していることは直感で分かる。

 隣でヘロヘロが、ぽかんと口を開けていた。

「凄いや……」

 パックの耳は微かな水音を捉えていた。水音に誘われて歩いていくと、森の中に小川が流れているのが判る。

 覗き込むと、日差しに銀鱗がきらりと光り、小魚がつんつんと小石についた苔を突っついている情景が見えた。

 パックはずっと首都洛陽シティで育ってきた。だから、こんな自然を目の当たりにするのは初めてである。

 振り仰ぐと、圧し掛かるような大木が聳え、枝を四方に伸ばして空からの光りを一杯に受けている。緑の葉むらの裏側がエメラルド・グリーンに光っている。

 さっと枝から枝へ目にも止まらぬ速さで小動物が走っていく。


 栗鼠だ……。


 子供のころにホロ図鑑でしか見た記憶のない動物である。動きがあまりに素早く、はっきりとは見定めることはできないが、確かに栗鼠だ。

 歩いていくと、唐突に前方の視界が開ける。森を抜けたのである。


 日差しに揺れる金色の穂、麦畑だ!


 なだらかな草原と、糸杉の小道。典型的な田舎の風景である。遠景に山脈が迫り、ここが小惑星の内部であることを忘れさせる。

 パックの目は丘の上に建つ、小さな家を認めていた。赤い屋根瓦、白い壁。切妻屋根には、風見鶏が付いていた。


 と、ヘロヘロがとととと……と、足を速めた。


「どうしたヘロヘロ!」

「ミリィだ! 近くにいる!」

 ヘロヘロは叫び返した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ