計画
「ねえ、どっちへ行くんだい? パック」
ヘロヘロに促され、パックは弱りきった。
ガラクタ倉庫を脱出したときは、それから先の予定など、まるで頭に存在しなかった。ただ、閉じ込められるのが厭で、脱出したのだ。
さて、いざ自由になってみると、さっぱり先の計画は考えてなかった間抜けさに、我ながら気付いた。
「うるさいなあ……今、考えているところなんだ……」
「パック。ちゃんと先の行動を頭に入れていなかったのかい?」
いかにも呆れた、というようにヘロヘロは呟いた。
「ちぇっ!」とパックは舌打ちした。ロボットに呆れられたら、世話はない。
ヘロヘロは分別臭く忠告した。
「一つ。この戦艦【鉄槌】から逃げ出すには【呑竜】に乗り込むしか手がない。しかし【呑竜】にはミリィが防護装置を施している。その防護装置を解除できるのはミリィだけである。二つ。従って、まず最初にすることは、ミリィを見つけて【呑竜】に戻ることである! どうだい、この計画?」
得々と説明するヘロヘロに、パックは苦りきった。
「はいはい! お前の計画、その通りで御座いますよーだ! ちぇっ! そんなこと、おれだって考え付いたはずだよ」
「はて、どうだかね」
ヘロヘロは、にやにや笑った。
かっとなったパックは、ヘロヘロに向かって、ぐい、と顔を突き出した。
「だったら、どうやってミリィを見つけるんだよ?」
「うふっ!」ヘロヘロは得意そうな表情を浮かべる。「何も知らないんだね」と言いたそうに、上目遣いになった。
「ミリィの居場所は、ちゃーん、と判ってるんだ。僕はミリィの発信するビーコンを受信できるからね。ミリィには生きている限り、僕だけが受信できる周波数の発信装置を持っているからな」
「それを先に言えよ!」
パックは叫んだ。ヘロヘロは慌ててパックの口を塞ぐ。
「パック! 声が高いよ!」
「うぐっ!」とパックは声を呑みこんだ。小声で囁く。
「それで……今も居場所は判っているのか?」
ヘロヘロも小声で返した。
「もちろんさ! こっちの方角が、強く感じる」
ちょこちょことヘロヘロはパックの側をすり抜け、二股になった換気ダクトの内部を歩いていく。パックはヘロヘロの後に続いて、ごそごそと四つん這いを続けた。