表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/127

牢屋

 シルバーの命令どおり、パックとヘロヘロは、牢獄に限りなく近いガラクタ倉庫に「ぶちこまれ」た。

 二人を連行した河馬のような姿の手下は扉を開けると、ひょいと手を伸ばし、二人を宙吊りにして思い切り放り投げたのである。恐ろしいほどの馬鹿力であった。

 がちゃん、と音を立て鋼鉄製の扉が閉められ、ロックが掛けられた。


「いてててて……」


 ヘロヘロは情けない泣き声を上げた。

 パックも放り投げられた時に激しく腰を打ち、一瞬、悶絶した。それでも、悲鳴を上げるのは我慢した。あいつらに一瞬でも満足感を与えたくないという意地である。


 倉庫は寒々として、壁際に壊れたベッドやら椅子やら、原型不明のガラクタ類が無造作に積んで置かれ、反対側には簡易便器が剥き出し状態で置かれている。窓などは見当たらない。もっとも戦艦の内部だから当然だが。


 天井は高く、床はもちろん、壁も総て剥き出しのスチールだ。触るとひやりと冷たい。


 そろり、とパックは扉に近づいた。


 ロックを調べると、パックの手に負える機構ではない。もしかすると解除できるかという淡い希望は、あっさり砕けた。

 パックのズボンのポケットには、宇宙パイロット必携の修理工具が入れられている。手下はパックが原型であるという先入主から、身体検査の必要性など頭には端からなかったに違いない。これを使ってロックを解除しようと考えたのだが、さすがに戦艦の牢獄兼用の倉庫である。それは無理そうだった。


 ヘロヘロは倉庫の床を、うろうろと歩き回っていた。


「大丈夫かなあ……ミリィ。シルバーと二人きりにされて……」

「シルバーが何かする、と思うのか?」

 パックの問い掛けにヘロヘロはぶるん、とかぶりを振った。

「違うよ、ミリィが妙な気を起こさないか、心配なんだ。ミリィって、ほら……ちょっと気が短いところがあるだろう?」

 パックは短く笑って同意した。

「まあな。停滞フィールドから目が覚めたら、次には早速おれに銃を突きつけるくらいだからな。ちょっと、どころじゃないけど」

 諦めてパックは壊れかけのベッドに、ごろん、と寝ころんだ。頭の後ろに手を組み、天井を見上げる。


 高い天井には換気口が覗いている。


 ここで三流娯楽ホロ・ムービーのスパイ物だったら、主人公は換気口から忍び込んで牢屋を脱出する、なんてのが定番だ。しかし、飛びつくには、とてもじゃないが手が届かない。

 それでもパックは無意識だが呟いていた。

「あーあ、あの換気口に手が届けばな……高すぎて無理だけど」


 ヘロヘロが振り向く。


「届くよ」

「へっ?」


 パックは起き上がった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ