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 宇宙船……いや、宇宙船と言うには大げさすぎる。やはり宇宙艇だろう。宇宙艇【呑竜】は、一世紀もスクラップの中に埋まっていたとは思えないほど良好な状態だった。


 コンソールのデザインは古臭く、計器の中には見慣れない形式の表示も多く、それらには戸惑いを隠せない。


 それでもパックの受けた記憶移植と潜在意識下への教育効果は抜群で、まるでベテランの宇宙飛行士のように易々と操縦ができた。


 宇宙艇は成層圏を抜け、どんどん加速していく。すでに窓外は真っ暗な闇で、瞬かない星々が張り付いたように見えてきた。


「どこへ行こうか?」

 パックは呟いた。


 そうだ、目的地を決めなきゃあ……。


 パックの目がコンソールの計器に留まった。

 無意識に表示を確認する。


 燃料よし! 気圧よし! 各計器類は正常……。

 おや?


「なんだこりゃ、船倉にエネルギー反応があるな」

 パックは船内のエネルギー表示を見つめて呟いた。

 隣に座るヘロヘロの顔色が、さっと変わった。本当に変わったのである。

 レモン色だったロボットの顔の表面が、真っ白になり、ついで真っ青になった。まるで絵の具を塗ったように、本当にその色に変化したのだ。多分、ヘロヘロの皮膚はカメレオンのように変色する機構が組み込まれているのだろう。

「どうした? ヘロヘロ」

「……」

 ヘロヘロは硬直したまま動かない。顔からは、ふつふつと大量の汗が噴き出す。玉のような水滴を見て、パックは呆れた。


 ここまで人間の表情を真似することないのに……。


 ちらり、とヘロヘロはパックの顔を見上げる。ひくひくと口が動き、なんとか笑顔を浮かべている。

「な、なーんでもないよ! 多分、計器の間違いだ……そ、そうだ、そうに決まってる! だ、だから気にしないで……」

 パックは操縦席から立ち上がった。

「ちょっと見てくる」

「パック!」

 ヘロヘロは慌ててパックの前へ立ち塞がった。

「やめようよ、ねっ? 船倉に行っても、何にも無いからさ!」

 パックはヘロヘロを無視して操縦席から船倉へ続く階段を見つけ、降りていく。

 ヘロヘロの悲鳴が背中から聞こえてくる。

「頼むよ……パック、行かないで……!」

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