最大出力
ひゅう──ん……
操縦席の無数のランプが灯る。
船が目覚めた!
「おいっ!」
パックは操縦席に突進した。
ヘロヘロが操縦席にかじりつき、片手で操縦桿を握っている。パックの声に、ひょいと顔を上げた。目がきらきらしている。
「パック、有難う! あんたのおかげで【呑竜】が目覚めた!」
「【呑竜】? この船の名前か。おれのせいで目覚めたって、おれがいったい何をしたってんだ?」
早口に質問するパックに、ヘロヘロは大きな口をにんまりと笑みの形に歪める。
「この【呑竜】は原型の遺伝子を持つ人間が入室しないと動力炉を作動させないようセットされているんだ。だから、あんたを連れてきたってわけさ!」
「おれを利用したってことか……さっき、入り口でスキャンしたのはこのためなんだな。あのビームでおれのDNAコードを読み取ったんだ!」
パックは、ちょっとむっとなった。なんだかこのロボット、下心がありそうである。
にたりと笑ったヘロヘロは操縦席を指し示した。
「いいじゃないか! ともかく出発だ。そっちの席が空いているぜ!」
無言でパックはヘロヘロの隣に座った。操縦席の計器を見て、呆れた。
「おいおい、この船、どのくらいここに埋まっていたんだ。この装置は、優に一世紀は前の型だ。こんなんで、飛べるのか?」
「心配なんぞ要らないよ。とにかく飛ばしてくれよ。操縦資格あるんだろう?」
ヘロヘロは、しゃらっと言い返す。
一応の文句は言ったが、パックの心は躍っていた。資格を取ってからというもの、パックはいつしか、こうして宇宙船を動かすことを夢見ていたのである。
指先を操縦桿に伸ばす。
目の前に広がっている窓には、びっしりとスクラップが埋まっている。船内の明かりに照らされ、べっとりと泥や小石、その他ありとあらゆるゴミがぎっしりと窓ガラスに押しつけられ、壁を作っていた。
パックは反重力装置のスイッチを入れた。
だしぬけに、背中を蹴飛ばされたような衝撃が襲った。
しまった! 最大出力にしたままだった!
パックは悲鳴を上げていた。