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空気

 喚声を上げ突入していく【鉄槌】の戦闘部隊を追いかけ、パックたちは宙森の格納庫から司令センターを目指す。


「司令センターは、こっちだ! 遅れるな!」

 シルバーは先頭に立って、部下たちを叱咤した。【大校母】のフェロモンに対抗するため、部下は一人残らず、顔に呼吸装置を装着していた。通路の角々には宙森側の防衛部隊が待ち構え、物陰に隠れながら撃ってくる。


 宙森内部は、ふんだんに木材が使用されている。そのせいで、レーザーなどが焦点を結ぶと焼け焦げ、焦げ臭い匂いがあたりに満ちている。

 不燃処理をされているので燃え上がることはないが、ぶすぶすと燻って空気に白い煙が混じって、ひどく視界が悪い。しかしシルバーは平気な顔をしている。部下たちに、シルバーは大声で命令を下した。


「視界が悪い! 赤外線視覚に調整しろ!」


 シルバーの部下が一斉にマスクの上から眼鏡を装着して、赤外線視覚に切り替える。シルバー自身は視覚を調整できるので、そのような必要は一切ない。

 宙森の抵抗は意外と頑強であった。数倍する攻撃側に対し、まるで諦めというのを知らないかのようである。


 パックは宙森の敵兵を見て、ぞっとなった。


 全員、例外なく目が吊り上がり、口を真一文字に引き結んでいる。たとえ至近距離にレーザーや、弾丸が撃ち込まれても、微動だにしない。手にした武器を黙々と操作して応戦している。

 まるで死の恐怖というのを知らないかのようだ。事実、すぐ近くで誰かが直撃を受け、全身から血吹雪を噴き出しながら倒れても、ちらりと見向きさえもしない。


 苛々とシルバーは足踏みを繰り返す。


「糞! 【大校母】のフェロモンというやつに操られているに違いない! なんとかできんのか?」

 ヘロヘロが、ぽつりと提案した。

「だったら空気を入れ替えたらどうだい?」

 シルバーは呆気に取られ、口をあんぐりと開いた。

「空気を……入れ替える?」

 まじまじとシルバーに見つめられ、ヘロヘロは真っ赤になった。

「ご、御免! 馬鹿なこと言っちゃった……」


「いいや! そうではないぞ!」

 シルバーは首を振り、にんまりと笑顔になる。

「確かに、空気を入れ替えれば、それで【大校母】のフェロモンは、すっかり吹き払われる理屈だ!」


 パックは疑問を投げかけた。


「どうやって空気を入れ替えるつもりなんだい? ここにエア・コンでも持ってくるつもりか?」

 シルバーはぐい、と背筋を伸ばした。

「いいや! そんな必要はない! おいっ、それを貸せ!」

 喚くと、部下の一人から通信機を取り上げる。ぱちりと通信機を開き、叫ぶ。


「おれだ! 我々の位置は把握しているな? うむ、そうだ……おれたちから少し離れた距離の壁、そこに穴を開けろ! 構わん! ぶち開けるんだ!」

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