攻撃
【鉄槌】と宙森の宇宙戦艦は、じりじりと接近を始めた。【鉄槌】側は主力の戦艦、巡洋艦、駆逐艦などが前面を固め、宙森からも同じような構成の陣形で近づきあう。
まず、宙森から攻撃は始まった。
宙森のハブ部分から大出力のレーザーが放出され、それは【鉄槌】側の防護バリアで中和される。
宙森からの攻撃に応じて【鉄槌】の陣形からも宇宙魚雷が発射される。魚雷は無反動スラスターを装備し、宇宙空間に細い重力レンズの航跡を残し、亜光速の速度で殺到した。
宙森から再びレーザーが発射される。宇宙空間に大出力のレーザーによって宇宙塵が励起され、光の棒が瞬いて魚雷を貫き、次々と空間で爆発を繰り返す。
ここまでは手はじめである。お互い手の内を明かさないための、軽いジャブの応酬、といったところだ。
「こっちからも攻撃するかい?」
パックが艦長席にどっかりと腰を据えているシルバーを振り向き、尋ねる。シルバーは軽く首を振った。
「馬鹿を言うな! 要員が足りんのだ。この巡洋艦が機能するためには、本来は訓練された要員、五百名を必要とするのだぞ。戦闘などできるわけない」
「ちぇっ!」と、パックは不満を漏らす。
ホロ・ドラマみたいな戦闘ができるかと思っていたのだが、あてが外れた。
ミリィ、ヘロヘロ、ガラスの管理人などはコンソールに陣取り、計器を読み取ったり、あるいは調整などしたりして、それぞれ忙しい。
だが、アルニはなにもすることなく、退屈そうに髪の毛を捻くっている。欠伸を噛み殺し、呟いた。
「ねー、これからどうなるの?」
パックは悪戯心を抑え切れない。顔をアルニに近づけ、強いて冷静さを装い囁く。
「戦争だぜ! するとなあ……」
アルニは「なになに?」と顔を近づける。
いきなりパックは「どかーん!」と大声を張り上げた。
「……て、爆発が起きるぜ、きっと!」
「いやーん……!」
アルニは吃驚して目を潤ませる。
「けけけけ!」とパックは笑い出した。