戦艦
望遠鏡の視界の中に、動きを止めた原型と〝種族〟の姿があった。まるでビデオの一時停止のように、ぴたりと動きの途中で凍り付いている。
ミリィはパックの望遠鏡を奪い取るようにすると、目に当てる。
「本当……。どうしちゃったのかしら?」
呟くと「あっ」と小さく叫ぶ。管理人を睨んで囁いた。
「停滞フィールドね! そうでしょう?」
管理人はまた頷いた。指先を上げ、顔の前に持ってくる。その意味を悟り、ミリィは首を竦めた。
全員、そろりとエア・ロックに足を掛け、艦内に首を突き出すようにして内部を探った。
シルバーがコンソールの前に圧し掛かるように立ち、ホロ・スクリーンを開いていた。ホロ・スクリーンには【大校母】が映し出されている。【大校母】は怒りの声を上げていた。
「シルバー! 何が起きたのです? 侵攻部隊からの連絡が、いきなり跡絶えてしまいましたよ! それと、あなたに頼んでいた居住惑星のデータは、どうしたのです?」
「うるさいっ!」とシルバーは喚いた。その大声に【大校母】は、びくりと唇を引き結んだ。
「あんたの魂胆、読めてきたぜ。あんた、この銀河系の総ての〝種族〟はおろか、原型を亡ぼすつもりだな」
【大校母】が何か言いかけるのを、シルバーはおっかぶせて黙らせる。
「おれは、原型の身体を手に入れる方法が判った! しかし、あんたの計画では、総ての原型を亡ぼすつもりだろう。そんなことは許せねえ! おれは、生き抜いてやる。あんたの計画は、なんとしても打ち砕いてやるから、そう思え……!」
【大校母】は「くくくく……!」と忍び笑いを漏らした。
「あなたに何ができると言うのです? あなたにあるのは、その【弾頭】たった一隻だけではありませんか。その一隻で、妾の宙森にある軍団に対抗できるものですか!」
「はっはっはっはっは!」
シルバーは身体を揺すり、大声で笑う。が、その両目は決して笑ってはいない。
「おれが一人だと? 馬鹿を言うな。おれは、お前の知らないうちに宇宙戦艦【鉄槌】を呼び寄せていたのだ! そら、もうすぐ超空間フィールドが開き始めるぞ!」
「まさか!」と【大校母】は叫ぶと、管理センターの部下たちに命じる。
「今のシルバーの言葉、本当かえ?」
すぐ返答があった。
「地球の近くに超空間フィールドを感知! 宇宙船らしきものが出現します! 物凄い大きさです! この宙森とほぼ同じくらいの……ああっ、小惑星が出現! 全長五十キロメートル! 戦艦です! スラスターの軌跡は【鉄槌】の記録と一致……」
【大校母】は、真っ青になった。