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〝種族〟たち

「それで、原型プロトタイプの小僧、どんな顔していた?」

 問いかけられゴロス人のエンジニアは、思い出し笑いを浮かべた。


 販売店近くのパブは仕事帰りの呑んべえたちで賑っていた。カウンターに群がった連中の話題の中心は、パックにスクラップの山を掘り返せとけしかけた例のゴロス人である。

 ゴロス人は酒の肴に、パックとの遣り取りを一同に話して聞かせていたのである。ゴロス人がスクラップの山を指差し、この山の中のなんでもタダで進呈するというくだりで全員がどっと沸いた。


 みな、人類とは懸け離れた姿をしている。多いのは四本腕のゴロス人だが、ほっそりとした身体つきのパリス人もいる。皮膚の色が緑色がかっているのは、葉緑素が含まれているからだ。


 パリス人の故郷は食糧に乏しく、体内で栄養を作り出すため、植物の遺伝子を混入させている。がっしりとした身体つきの身長百五十センチにも満たないのは高重力環境で知られているバルト人だ。むっつりとした顔つきのバルト人は、特に彼ら向きに作られた劣化ウランでできた重いカップを持って、火の噴き出るような強い酒を啜っている。


 話に弾んでいる彼らから少し離れ、数人の原型の客たちが固まって目立たないように安酒を飲み続けている。

 遺伝子に変更を加えている人類の子孫は〝種族〟で、変更を加えず祖先の人類のままなのは〝原型〟と呼ばれている。

 原型は〝種族〟により徹底的に差別、侮蔑の対象として存在した。


「それがなあ……情け無さそうな顔してやがってよ……それでもスクラップの山を見上げて、何か考え込んでやがったのよ! あの小僧、本気で掘り返すつもりかな?」

 わはははと笑い返した、もう一人のゴロス人が聞き返した。

「それで、おめえ、もしその小僧がスクラップの山から宇宙船を組み上げたらどうするね? タダでいいって言ったんだろう?」

 ぐすんとゴロス人は、鼻を鳴らした。

「そんなこと金輪際あるもんけえ! あのスクラップから船を丸ごと一隻、掘り出すなんてこたあ、百年かかっても無理ってもんよ。もしできたら、おいらこの四本の腕で逆立ちしてスカイ・パレスの屋上まで歩いて登ってやるさ!」

「そいつは豪気だ。そのときゃあ、おれも付き合ってやるぜ」

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