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報告

 宙森の管理センターに設えられている豪華な玉座に巨体を横たえた【大校母】は、苛々と爪を噛んで報告を待っている。

 時折、鯨のような巨体に蠕動が走り、その度に新たなボーラン人の嬰児が排出された。

 待っている間に、もう十人は出産したろうか。シルバーの奴、いったい何を愚図愚図と報告を引き伸ばしているのやら……。


 センターで通信装置の前に座っていた要員が顔を上げた。


「【大校母】さま! 報告です! 通信が入っております!」

「すぐスクリーンに出しておくれ!」

【大校母】は、待ってましたとばかりに身を乗り出した。要員は素早く目の前の装置を操作して、センターの中央に浮かんでいるホロ・スクリーンに映像を映し出す。

 映し出されたのは、ボーラン人の通信部隊である。複眼を煌かせ、ボーラン人の部下は早口で報告をする。


「シルバーは立方体の入口を抉じ開けました! たった今、侵攻部隊が内部に進入成功致しましたので、そちらからの回線を繋ぎます!」


 スクリーンに立方体の内部の様子がくっきりと映し出された。十万キロもの距離を感じさせない、鮮明な映像である。

 真っ黒な壁面に、奇妙な斑模様が映し出されている。それは一瞬も休むことなく、変化を続け、見ていると目が眩むような気がする……。


 しかし【大校母】は、そのようなものには目もくれなかった。その代わり、中央の壇に立つ、一人の見窄らしい貧相な老人に目が釘付けになった。


「あれは……フリント教授……!」

 すぐさまボーラン人の部下が報告をしてきた。

「いえ、シルバーの報告によりますと、あれは教授の記憶を再生したものだそうです。実体はなく、投影されたものだそうで」


「ほっほっほっほ……!」


 巨体を揺らし【大校母】は自分の思い違いに苦笑した。あまりに真に迫っている姿のため、百年以上も前に死んだフリント教授が、てっきり生き返ったのかと、一瞬、大きな勘違いをしたのである。

 再現されたフリント教授の前に、シルバーが怒りの表情を顕わにして立ちはだかっている。シルバーの唇が動き、怒号ともいえる叫び声が聞こえてくる。


「おれが失敗作だと! どういうことだ?」


「おや?」と【大校母】は興味が湧いてくるのを憶える。口を挟もうかと思っていたが、気が変わった。少し、この場の様子を見守ったほうが良さそうである。

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