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宇宙船

「やれやれ、いったいこのゴミの中で何年いたことやら……。やっと外へ出られて、ほっとしたよ」

 ヘロヘロと名乗ったロボットの表情は、喋るにつれ、目まぐるしく変化した。

 パックはロボットの顔をスクラップの山に置き、その前に座り込んで話に耳を傾けている。


「それにしても、なんで顔だけなんだ?」

 パックの問いかけに、ヘロヘロは渋面を作った。ロボットにしては、やたら表情が豊かである。

「失敗したよ。このスクラップ置場には、ちょくちょく近所の悪ガキが遊びに来るんだ。部品を失敬しにね……。もっとも、ここの親爺はぜんぜん気にしていないけど。そいつらに見つかって、面白半分に足を外されちまったのさ」


 ヘロヘロは急に熱心な表情になった。

「なあ、あんた! 僕の足を探してくれないか。このままじゃ動けないし、動けなきゃ、あんたに宇宙船の有りかを教えて上げられないからさ! どっか、その辺に僕の足が転がっているはずだよ」


 パックは立ち上がった。

「判った、探してやる。しかし、おれの名はパックだ! あんた、なんて呼ぶな!」

 ロボットは、しゅん、となった。

「判ったよ……パックさん」


 立ち上がったパックは、スクラップの山を見渡した。


 日差しにきらりと銀色の光が目に入る。他のスクラップと違い、新しい。

 近寄ると、二本の自在ジョイントの先に太い三本の指がついた部品が見つかった。それを手に取り、ヘロヘロに翳して見せた。


「これか?」


「そう! そうだよ、それだっ!」

 ヘロヘロは動けない顔だけで精一杯の勢いをつけ、ぴょんぴょんとその場で跳ねた。パックが手に持ったまま近寄ると、待ちきれないのか「早く、早く!」と急かす。


 ころり、とパックはヘロヘロの顔を引っくり返した。顔の裏側に二つの接続部分があった。

「これだけでいいのか? 胴体は、ないのか?」

「いいのさっ! 僕は省エネタイプなんだ。無駄な胴体なんか要らないっ!」

 パックは二本の部品をヘロヘロにくっつけてやった。かちり、と音がしてヘロヘロの顔に二本の自在ジョイントが嵌まる。


 その途端、すっくとヘロヘロは二本の足で立ち上がった。ぎくしゃくと何度も体操をするように動きを試す。


「おい、宇宙船は?」

「こっちだよ!」


 ヘロヘロは返事をすると、まっしぐらにスクラップの山を駆け上った。慌ててパックは後を追いかける。意外とロボットの動きは身軽だった。

 山の隙間にヘロヘロは駆け寄り、片方の足を使って地面を掘り始めた。


「ここか?」

 ヘロヘロは無言で頷くと、夢中で掘り返す作業を続けている。パックは先端が尖っているパイプを探して地面に突き刺し、手伝い始めた。




 それから当分は、二人の地面を掘り返す作業が続いた。

 がちっ、と音がしてパックは手応えを感じて作業の手を止めた。何か固いものにパイプの先端が当たっている。

 急に興奮が湧き上がり、パックは腕に力を込めた。


「これか……」


 掘り返した地面から宇宙船の外板らしきものが顕わになっている。ハッチの上蓋部分である。これが宇宙船の塗装色なのか、目にも鮮やかなオレンジ色だ。


 ある種の達成感を憶えたパックは顔を上げた。


 びっくりしたことに、いつの間にか時刻は夕刻近くになっていた。夕日が洛陽シティの空を燃え上がるようなコーラル・ピンクに染め上げていた。

 ヘロヘロは蓋の横にあるパネルを引っくり返した。パネルが開くと、そこには十進数のキーが並んでいる。ヘロヘロは太い指先で起用にキーを素早く叩く。暗証番号を入力しているらしい。


 ぴぴっ、と音がして、ハッチの上蓋がしゅっと溜息のような音を立て開いた。覗き込むと、内部に下りる梯子がある。

 ヘロヘロは、さっと内部に飛び降りる。

 パックは慌ててヘロヘロに続いて内部に潜り込んだ。宇宙船が現れた途端、ヘロヘロは人が──ロボットが変わったようになっていた。


「おい……ヘロヘロ……」

 梯子を降りると、どうやらそこはエア・ロックになっているようだ。エア・ロックの入り口は開け放たれて、内部は真っ暗だった。

 相当な長期間ここに埋まっていたのか、微かに埃っぽい。


 かちゃり、という音にふり返ると、入り口の天井近くから監視装置のようなレンズがパックの動きを追尾している。


 いきなりレンズから細いビームが放たれ、パックの全身を舐めた。走査しているのか?


 なんだこりゃ!


 びっくりしてパックは一歩後じさりする。

 一瞬のことで、ふたたびかちゃりという音とともに監視装置のレンズに蓋が閉まる。パックは体中を撫で回すが、なんともない。それきり、監視装置はうんでもなければ、すんでもなかった。


 タダの認証装置か?


 パックはエア・ロックから船内へと移動する。

 足を踏み入れると、いきなり明かりが灯った。


「うぉっ!」

 そこは、操縦室になっていた。人の出入りを感知して明かりのスイッチが入ったのか。

 ぱたり、という音に見上げると、ハッチが閉まったところだった。

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