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追跡

「ミリィっ! 追いつかれちゃうよっ!」

「ヘロヘロ、黙っててよ! こっちは忙しいんだから」


 狭い操縦席では、ミリィと呼ばれた少女と隣の副操縦席に座るロボットのヘロヘロが、切迫した調子で叫び交わしている。

 ミリィは真剣な眼差しで操縦席に座り、必死の面持ちで目の前のスクリーンを睨んでいる。


 スクリーンには巨大な宇宙戦艦の姿が映し出されていた。戦艦はじりじりと接近して、砲門が次々と回転して、ミリィの操縦する快速宇宙艇【呑竜フェイム・ドラゴン】に狙いをつけている。


 操縦席のミリィは真っ赤な赤毛、抜けるように白い肌に、顔には雀斑が散っている。

 いわゆる美人ではない。鼻は低すぎるし、顎は尖りすぎるきらいがある。目立つのは、ぱっちりと見開いた大きな瞳で、灰緑色の、そこだけは神秘的といっていい印象的な眼差しである。


 しかし一度でも見たら忘れられない表情の持ち主だ。たっぷりとした肉付きのいい唇は、笑いを浮かべると生き生きと動く。


 隣のヘロヘロと呼ばれたロボットは……これがロボットであろうか?


 どてっと大きな丸い顔が身体の全体を占める。顔はまっ黄色で、まるでレモンそのものの色をしている。顔はふかふかと柔らかそうで、顔の下半分にまっすぐ横に切れ込みがあり、それが口の役割をしている。

 口の上に、大きな目玉が二つ。顔の造作は、それで終わりである。頭の天辺には一本のホイップ・アンテナがおっ立ち、動くにつれ、ふらふらと前後左右に揺れている。アンテナの先端には光が灯り、ヘロヘロが何か言うたび、ひこひこ、ひこひこと瞬いている。


 顔のすぐ下には二本の……腕だろうか、足だろうか? 自在ジョイントの太い先に、三本の指がくっついている。どうやらこの腕が足の役割をし、場合によっては腕の役割をするらしい。実に簡単な構造のロボットだ。


 ごごごご……


 戦艦が接近すると、物凄い轟音が船内に満ちる。戦艦の立てる重低音が、いやがおうにも恐怖感をつのらせる。

 戦艦の砲門が遂に火蓋を切る!


 ずばっ!

 ずばっ!


 砲門から発射されたミサイルが宇宙空間を飛び、ミリィの【呑竜】の近くの空間で爆発した。


 ずしんっ!

 どかああんっ!


 怖ろしいほどの砲撃音に、船内の壁がびりびりと震えた。

 ミリィはちょっと鼻筋に皺を寄せ、ヘロヘロに命じた。

「ヘロヘロ! 環境音スイッチを消して。喧しくて、まともに考えられないわ!」

「あいよ」と、ヘロヘロは目の前のスイッチの一つを切った。


 途端に、しーん、と辺りは静まり返る……。

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