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他の学校へ行ってみる

学校~朝~

彼は、玄関で立っていた。

場所は学校。朝特有の清々しい空気で満ちている。朝。それは様々なものが起きて様々なことが始まる時間。そして、同時に終わる時間。昼のように活発ではなく、夕方のように哀しくもなく、夜のように怖くもない。


そんな中彼は、1人で玄関に立っている。前を見ながら、立っている。誰かを待っているのだろうか。普通ならそうだろう。

普通なら。

彼は、ただ前も見ている。

学校を見ている。

後ろを気にする様子はない。

誰かを待っている様子ではない。

ただ、立ち続けている。


彼は、玄関で立っている。


彼が、いつから立っているのか。

彼が、何故立っているのか。

彼が、中に入れるのか。


それは、誰も知らない。


彼は、玄関で立ち続けている。





「誰が1番早く学校に来られるか、競争しよう」

この言葉が始まりだった。


それは、放課後。彼らが帰らずに、教室で会話しているなかで出た提案。子どもというのは、1番になりたがる性質でもあるのだろうか。1番に憧れる。かけっこで1番になりたがる。勉強で1番になる。給食を誰よりも速く食べきる。そんなどうでもいいことを競いたがる。

当然誰も、反対はしない。ただ学校に早く来るだけである。たったそれだけ。こんなに簡単なことはない。簡単だからこそ、誰もが1番になれる可能性がある。

私も、そう思った。私は、足が速いわけでもなく、頭がいいわけでもなく、食べるのが速いわけでもなかった。いつも1番になれなくて、悔しかった。だから、この提案が出たとき、私は喜んだ。私の家は、学校から近いところにあった。徒歩で10分くらいだった。周りの友達の家より近かった。これなら、勝てる。1番になれる。私はそう考えた。


次の日、私は早く起きた。そして、いつもより早く家を出た。学校は7:30に玄関が開く。私は7:00には学校に着くように家を出た。外の空気は、朝の匂いがした。少し朝靄が出ていて、遠くは見えない。まるで雲のなかにいるみたいだった。車は通らない。自転車も通らない。人も通らない。鳥も見当たらない。周りには家と田んぼだけ。まるで、世界を独り占めした気分で私は、学校に向かった。30分も早く着けば1番だろうと、笑いながら。玄関が開くまで何してようか考えながら。


でも、そのことを考えるのは無意味だった。


私は、7:00に学校に着いた。着いたとき私は驚いた。玄関の前に、同い年の子どもが立っていたのだ。驚いたあと、私は悔しくなった。1番になれなかったのだ。しかし、私は不思議なことに気づいた。玄関が開いているのである。7:30に開くはずなのに、30分も前に開いている。そして、開いているのにあの子は、入らない。私は少し怖くなった。玄関が開いているのも怖かったし、あの子が動かないのも怖かったし、あの子と自分以外がここにはいないのも怖かった。

とりあえず、玄関に行ってみることにした。私が玄関に近づいても、その子は動かなかった。私は、玄関の前に着いた。彼は、私の知らない子だった。見たことがない子だった。私は、玄関に入らず校舎内を見た。校舎のなかはとても静かだった。下駄箱が静かに並んでいるだけで、人の気配はしなかった。それが、怖かった。校舎が自分を待っている気がした。下駄箱が自分を待っている気がした。校舎が自分を待ち構えているように思えた。下駄箱が自分を潰そうとしているように思えた。


そして、なにより怖かったのが近くにいる彼だった。彼は、私に興味を全く示さなかった。ただ、玄関を見ていた。いや、彼は何も見ていないように見えた。ただ、そこに立っていた。それだけだ。

それだけで、終わっていた。生きているとは思えなかった。


私は、その場にいるのが怖くて逃げ出した。遊具がある庭に逃げた。当然そこにも誰もいなかった。いつもは誰かが遊んでいる場所に、誰もいない。それがまた、私を怖がらせた。ここは、いつもの学校だろうか。私がいつも通っている場所なのか。わからない恐怖を、私に感じさせた。


「ねぇ」


声が聞こえた。後ろから。振り向いた。そこには、女の子が立っていた。玄関にいた子じゃなくて安心した。しかし、すぐに怖くなった。いつ、彼女は来たのだろうか。全く気づかなかった。


「何してるの?」


笑わずに聞いてくる。静かに聞いてくる。私は、怖くて答えられなかった。


「あまり早く来たら駄目だよ。」


「始まる前に来たら駄目だよ。」


「まだ終わってないから。」


笑いながらそう言って、彼女は玄関のほうに歩いていった。私はよくわからなくて、ただ聞いていた。私は怖くて、ただ立っていた。


しばらくして玄関のほうに行ってみると、そこには誰もいなかった。ただ、玄関が開いていた。それは口を開けているようにも見えた。


しばらくして友達がやってきた。1番になれなくて悔しいと言っていた。私は1番になれたらしい。うれしくなかった。玄関のなかに入った。校舎に食べられた気がした。


私は、それから玄関が開くより前に行くことをやめた。

私は、1番を目指すのをやめた。

今日も、どこかで誰かが言う。

「誰が1番か競争しよう」


あ、はい。

学校シリーズみたいな最後です。

よくわかりません。

というか、私の実体験をもとにしてるから怖くないです。


朝早く学校行くのは大変危険ということです。

皆様も気をつけましょう。


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― 新着の感想 ―
[一言] “よくわからない”というのがよくわかりました。 こわいというよりか、ちょっと考えさせられる作品です。あの子はいるのかいないのか。そもそも作者の狙いは何か、などオチも考えてみたり。 ちなみ…
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