松下 彩葉さんのPressure Drop
私の家の隣には菜絵ちゃんという名の綺麗なお姉さんがいる。
気立の良いという言葉は 菜絵ちゃんの為にあるんだと思うほどだ。
そんな菜絵ちゃんのお家に男の子が住むらしい。
おじさんのお兄さんの子供で、菜絵ちゃんとは従姉弟になるみたい。
その関係か、上篠さんの家は色々と忙しそうにしている。
ちなみに私も受験生だったので、忙しい人の一員だったんだよ。
しかも、私が受験した高校は県下でも有名な進学校、緑嵐高校なんですよ。
『菜絵ちゃんが行ったんだから、彩葉も緑嵐に行きなさい』
ママの一言で、私の人生設計が決まってしまった訳なのよ…。
本当、うんざりだわ…。
一応、頑張った甲斐があって、模試では余裕の合格圏内になったけど、私は未だに心配で眠れない時もある。
そんな時に入ったお隣さん情報。
菜絵ちゃんのお家に来る男の子、実はフランスに住んでいて、日本語をうまく話せないのに、緑嵐を受験したらしい。
緑嵐にはフランスに分校があって、同じ日が受験日だったと言う。
これは一大事ですよ。
菜絵ちゃんと一緒に通学計画が、破棄される予感しかしない…。
とにかく今は待つしかないよね…。
そして、合格発表の日。
私は難なく合格を果たしたのさ。問題は菜絵ちゃんのお家に来る男だ!
どうなんだい?
結果はどうなんだい?
誰か教えておくれよ…。
そして私は塾にも報告をするため、緑嵐高校から塾へと向かっていた。
すると、バスを降りると同時にパパから電話が入った。
「もしもし?」
「彩葉、合格おめでとう!」
「うん、ありがとう」
「上篠さんのところに来る子も、合格したらしいぞ」
「グヴァ!?」
「ど、どうした彩葉!?」
「な、何でもない」
「フランスは日本よりも時差で早いからな。夜中に連絡が来たみたいだ」
「そうなんだ…。」
最悪なんですけど…。
菜絵ちゃんと同じ高校は嬉しいけど…。
クッソムカつく男だな!!
そして入学式、当日。
あっ菜絵ちゃん発見!
って何?
誰?
男?
え?
可愛いんだけど?
嘘でしょ?
アレが菜絵ちゃんのお家にいる男の子なの?
無理じゃん…。
私じゃあの子に勝てないじゃん!
私のお姉ちゃんだったのに…。
その後、私は塞ぎ込んでしまった…。
私って菜絵ちゃんのことが大好きだったんだ…。
悔しいけど、どうにも出来ないや…。
そんな事を考える毎日に、嵐が突然やってきた。
菜絵ちゃんの弟が…上篠 瞬が私に話しかけてこようとしている。
しかも菜絵ちゃんと同時にだ!
私がいつも本を読んでいるからって、お勧めの本を聞こうとしている。
顔は良くても中身は大馬鹿者だ!
しかも一緒に帰ろうって? 本物の馬鹿で世間知らずだ!
しかしだ…。
問題はここからだ…。
帰り道で、あの馬鹿は私に綺麗だと言った。
お前の方が、クラスの女子に人気がある、綺麗な顔立ちじゃないか!
嫌味を言っているのか?
そして私の肩だけではなく、私のアゴにそっと触れて…。
前髪を優しくかき分けてくれて…。
そんな行為をした後に、私の目を見て『素敵です』なんて言うんじゃないわよ!
しかも…。
私の手を握って走るなんて…。
私の肩をギュッて抱いて写真を撮って…。
もう!
最低な男だわ!
本当にイヤ!
もう、大好き…。