You know I'm no good
日本での初登校。
菜絵姉さんと一緒に自転車で通うです。
「俺の名前は上篠 瞬です。宜しくです。jouer de la ギターです」
学校に到着し、自転車置き場から歩く俺は自己紹介の練習をしています。
「あー。ノエ君、今のはフランス語だよー」
そう言いながら、俺の腕に絡みつく菜絵姉さん。
「菜絵姉さん。くっ付くのはダメです。みんな見てるですよ」
「やーだよーん」
そう言って、今度は俺と手を繋ぐ姉さん。
「ノエ君は何組かな?」
そう言いながら、貼り出されたクラス表をA組から眺めている。
さすがにA組はないです。
「あった! 上篠 瞬くんはB組ですねー。頑張りましたね」
そう言いながら、俺の頭を撫でる姉さん。
そんな俺たちに、姉さんのお友達が数人、集まって来た。
「おー! 噂の弟君だね! この前、風見と歩いていた時も思ったけど、可愛らしい子だね。それに今日は制服だね? これはまた眼福ですな」
「瞬君、女子テニスのマネージャーにならない?」
「何言ってるの! 瞬君、女子バスケのマネージャーの方がいいって!」
怖い…。
俺の意見は聞かないですか?
しかもマネージャー限定になっているです…。
「お姉ちゃん、俺行くです。みなさんAu revoir!」
(またね! の意。)
「あ! フランス語はダメよ!」
「気をつけるです。Au revoir!」
うわー。美穂先輩は優しかったけど、さっきの人たちは危険が危ない人たちですね。
そして、俺はB組に着いた。クラスの入り口には座席表があり、それに従い座る。
机には丁寧に名前がフルネームで貼られている。
上篠 瞬、と書かれた短冊の座席に座る俺。
早速、後ろの席の男子が話しかけてきた。
「ねえ、名前聞いていい?」
「はい。上篠 瞬です。」
「あれ? 話し方、変じゃね?」
「今、日本語を頑張って覚えているよ。君の名前は教えてくれないの?」
「ああ、ごめん。神谷 拓人。拓人でいいよ」
「メルシー拓人。俺は瞬で大丈夫だよ」
「メルシー? 何語だっけ?」
「フランス語でしょ? 初めまして上篠君、私は井上 亜希子、宜しくね」
後ろが拓人。隣が井上。忘れないようにメモをしますよ。
「ところで瞬。朝、一緒にいた人は彼女かい?」
「彼女? 彼女は俺の姉さんで、2年生です。素敵な人ですよ」
「瞬のこと大好きみたいだな。ウチの姉貴なんて、意地悪だし、俺のことなんて、いつもキモいって言うから、大嫌いだよ。瞬が羨ましいよ」
「メルシー拓人。俺も姉さんが大好きです。お父さんもお母さんも大好きです」
「なんか上篠君が言うとすごいね、キモく感じないよ。多分、私がお兄ちゃん大好きって言ったらキモいんだろうな…」
「わからない言葉がありましたが、何となく感じ取れたよ。でも井上さんも大丈夫ですよ。可愛いです」
「え? やばいんだけど! もう一回、可愛いって言って!」
「井上さんは可愛いです」
「うわー! ありがとう! 元気が出たわ!」
さすが、井上さんも女子ですね。
可愛いと言うと元気が出るようです。
俺たちが会話をしていると、見たことのある上級生が入ってきたです。
わお! 美穂先輩でーす!
「みなさんおはようございます。生活指導委員会の風見です。私の先導でホールへ向かいますので、廊下に整列をしてください」
美穂先輩と目が合いましたでーす。
手を振るでーす。
美穂先輩は俺を見て、肩をすくめながら手を振り替えしてくれました。
嬉しいです。
そして俺たちは廊下に出て整列し、ホールに向かったのでした。