#7 リムの不安と武器屋にて
まだのんびり過ごしていますが、もう少しで戦闘シーンやヒロインなども出てくる予定です!
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ゲイルの怪我を治すために、ショーマが回復魔法を使った場面を近くで見ていたリムは……
(こんな人がたくさんいる中で、ただでさえ数が少ない光魔法の使い手が右も左も分かっていないような新人だと分かったら、良くも悪くも話題になってしまう……)
しっかりとショーマの身を案じていた。
クラウス達のような素行が良くて実力もあるパーティーに誘われたりするのはまだしも、冒険者の中には素行の悪い連中もいるので、そいつらにショーマが騙されてしまうのではないかと心配になる。
なのでリムは一つ、匠真に提案をすることにした。
「ショーマさんショーマさん」
「はい? どうしたんですか? リムさん」
やはり、目立っている自覚が無さそうな顔で匠真はリムの方へと振り返った。
「先程、常識が無くて困ってると仰られていたじゃないですか? なので、案内を兼ねてクラウスさん達にも色々と聞いてみたらどうですか?」
「クラウスさん達にですか?」
「はい、クラウスさん達のパーティーはこのギルドで1番パーティーランクが高いんです。 それに素行も良くて街の人達にも好かれています。 ギルドとしてもとても信頼しているので、相談しにくいことでもクラウスさん達なら口外などはしないでしょうし、相談相手には持ってこいだと思うのですがどうでしょう? クラウスさんも、ショーマさんの相談に乗ってあげてくれませんか?」
そう言ってリムはクラウスの方を見た。
クラウスは少し考えた後、口を開く。
「そうだな、ゲイルだけに任せていたら不安だし、私もついて行こう。 ミリーはどうする?」
「私も行くわ、ちょっと気になることもあるし」
「そうか、私もだ」
「お、なんだリーダーもミリーも来るのか? じゃあ早速行こうぜ、リムもまたな! まぁ、また明日には来るけど!」
「ゲイルさん、ショーマさんの案内お願いしますね」
「あら? リムあなた、ショーマくんに何か言いに来たんじゃなかったの?」
「はっ! そうでした! ショーマさん、ギルドカードなんですけど、失くしてしまうとお金がかかったり、色々と手間がかかるので管理には気をつけてください!」
「分かりました。 失くさないよう気を付けます」
「それを伝え忘れていたので追いかけて来たんです。 また伝え忘れるところでしたけど……」
「そうだったんですか、わざわざありがとうございます」
「いえいえ、それでは街を楽しんできてください」
「じゃあ、行こうぜ! ショーマ!」
それから匠真はゲイルに引っ張られて行ってしまった。
「クラウスさん、ミリーさん、ショーマさんのこと押しつけたような形になってすいません」
「いや、リムの考えていることは分かる。 私と大体同じ考えだろうからな。 あの新人は危うい。 常識もそうだが、実力も未知数だ。 長いこと冒険者をやっていると相手の雰囲気などで多少の実力は分かるんだが、ショーマの実力はよく分からない。 力を隠してるというのは分かったんだが……」
「彼、かなり強いわよ」
「ミリーさん?」
「鑑定したのか?」
「ええ、レベルは1だったけど、パラメーターがそれにしては軒並み高くて、レベルが少し上がれば私たちに追いつけるくらいだった。 けど、そんなことより……」
「何か問題があったのか?」
「見えなかったのよ」
「……なに?」
「見えなかった?」
クラウスはその言葉が信じられないといった顔で、リムはどういう意味か分からないという表情でミリアンヌの方を見た。
「鑑定は自分より高いステータスの部分は見えないの。 彼はレベルが低いからパラメーターは見ることが出来たけど、それ以外の職業やスキルがなにも見えなかった。 つまり……」
「ミリーより高位の職業、またはスキル持ちということか」
「そうなるわね」
その言葉にリムは絶句してしまう。
なにせミリーはかなり高位の魔法使いで、その彼女よりも高位の職業持ちなんて、そうそういないはずなのだ。
「クラウスさんは、彼をどうするつもりですか?」
「まだ何とも言えないな。 だが、この街に仇なす存在であったら」
クラウスは決意のこもった表情と冷たい声で……
「領主の弟として、私が手を下す」
ショーマの後ろ姿目掛けてそう告げるのであった。
*
「おう、リーダー、ミリー遅かったじゃねぇか」
ゲイルに連れられた武器屋に着いたところでクラウス達が追いついてきた。
「リムと少し話していてな。 ……武器屋に何の用だ?」
「ショーマが見たいんだとよ。 俺も新しい短剣欲しいから少し見ていくぞ」
クラウスは少し声を低くしてゲイルにそう尋ねた。
(クラウスさん…… ああ、そういうことか……)
匠真はそんなクラウスの様子を見て、少し思う事があったが、それも含めて後で話をしようと今は思った。
「はい、僕の職業に武器関係のものがあるので、この辺の武器屋はどうなのか興味があるんです」
「武器関係の職業?」
「はい、そのことについても相談したいですね。 今は周りに人がいるので、また後で相談させてください」
「そうか、分かった」
クラウスはそれ以上、言うことはないのか先に武器屋へと入っていった。
(後でしっかり説明しないとなぁ……)
「ほら、ショーマも行こうぜ!」
「はい、今行きます」
ゲイルに続いて武器屋に入ると、まず思ったことは想像以上だと感じた。
剣一つ取ってもとても質が良く、種類も沢山あり、ロングソードはもちろん大きめで両手持ちの剣や、曲刀と呼ばれるような形の剣、それに短剣やダガーなどといったものまでとにかく剣一つだけを取っても沢山の種類が並べられていた。
更には剣以外にも、魔法使いが使いそうな杖や、大きい槍、斧、ハンマーなど様々なものがあり、こういった武器が好きな匠真からすると、とても心地よい空間だった。
だが、来た目的を忘れるわけには行かないので、樽に入れられ均一の値段で売られていたロングソードを手に取り、鑑定魔法を使った
その時、近くで杖を見ていたミリアンヌが少し反応したが、匠真は気にせず鑑定する。
恐らくその事についても相談する事になるだろうから。
鑑定してみると、今匠真が持っているロングソードと比べて効果付与も無く、切れ味等も少し劣るくらいの性能らしい。
(店売りのものより僕が作ったのが悪いものじゃなくて良かったな…… レベル1でこれだから、レベルが上がったらもっとすごい武器作れたりするかな?)
ただ、すごい武器と言われても急には思いつかないので、店内にそういった業物がないか探してみる。
すると、目についたのは店の会計をするであろうカウンターの近くのガラスケースに、他の武器とは一風変わった少し大きめの剣と槍と盾が置いてあった。
「ゲイルさん、ちょっといいですか?」
「おう、なんだショーマ? 気に入る武器あったか?」
「それはまだ見つかってないんですけど、すこし聞きたいことがあって…… あのガラスケースに入った武器ってなんなんですか?」
「ん? ああ、あれはこの店の中でも自信作らしいぜ。 なんでも、なにかしらの効果が付与された武器が出来たらあそこに入れて売り出すらしい。 まぁ、その分値段はちょっと高いがな」
「効果付与された武器って珍しいんですか?」
「めちゃくちゃ珍しい訳でもないが、そもそも効果付与に耐えうる武器を作れる職人が少ないな。 その辺の素材で作った武器じゃ、効果付与の負荷に耐えられずにこわれちまうらしい。 俺の短剣もこの店に置いてあったミスリル製の付与がされたものを使ってるんだけどよ? やっぱり武器って消耗品だから、高い金を出して何個も複数効果が付与してある武器を買うよりかは、それなりにいいやつをそこそこの値段で買った方がいいと思ってな」
「なるほど、ちなみに何が付与されているんですか?」
「物理攻撃力上昇だな。 大体どの武器に付与するにしてもこの付与がこの辺りだと一般的だな」
「他の付与はないんですか?」
「これがまた武器や防具に効果付与を出来る人間もそんなに多くないし、人によって何を付与出来るかがバラバラでな? この街の効果付与師は物理攻撃力、魔法威力、防御力を上昇させる付与が出来る優秀な人がいるおかげで割と入手は難しくないが、この街で付与付きの武器を買う時は、その3種類がメジャーだな」
「そうなんですね…… 教えてくれてありがとうございます」
「おう、他に分からないことあったらどんどん聞いていいぞー」
ゲイルに話を聞いて、匠真は自分の職業である鍛冶師が中々のチートだということ理解した。
(レベルが上がれば付与の数も増やせるみたいだし、鉄の武器にも普通に付与できるし、結構やばい力なのでは?)
内心そんな事を思いながら武器屋の散策を続ける匠真だった。
*
「もういいのか?」
色々と見て回った後、武器屋を出ると、クラウスとミリアンヌが匠真のことを待っていた。
「はい、店員さんとかゲイルさんにも話を聞いて、大体の疑問は解消出来たので」
「そうか」
ゲイルに話を聞いた後、店員にも話を聞いて、この世界の武器に関しての基本的な知識と、改めて鍛冶師の力が規格外だということが分かった。
武器や防具に付与できる数にも限界があり、ミスリルだけだと1個、ミスリルと純鉄を混ぜたミスリル合金で2個といった具合で、3個も付与がされてるような武器は一流の冒険者ぐらいしか持っておらず、その上にまでなるともう国宝レベルの代物になるらしい。
更には、付与できる効果の種類も未だに確認しきれてないぐらいの量がある。
今後、どれほど付与ができるようになるかはまだ分からないが、今の段階でも充分強すぎる性能をしているということは分かった。
「これからどうする、ショーマ? まだ行きたいところあるのか?」
「いえ、大体は回り終えたので最後は宿屋に行きたいんですけど、その前にクラウスさん達3人に相談したいことがあります」
「お、そういやそう言ってたな。 いいぜ、何でも聞くから言ってみろよ」
「ただ、あまり聞かれたくないことなので、出来ればここにいる4人で話せる場所ってないですかね?」
「それなら私に心当たりがある」
*
そして現在、ショーマ達はこの街の領主邸までやってきていた。
この街は冒険者ギルドの近くに領主邸はある。
理由は、街の中で重要な施設が遠く離れてしまうと緊急時に不便だということで、街の真ん中付近には冒険者ギルド、領主邸、あとは衛兵の詰所などもある。
なので武器屋から少し歩いたところで領主邸に到着した。
「着いたぞ」
「ここは? とても立派な建物ですけど……」
「ここは領主邸だ」
「へ? 領主邸に僕なんかが入っていいんですか? というか、クラウスさん何者なんですか?」
「私はこの街の領主の弟だ。 今、兄は王都の方に行っていて留守にしているがな」
「え、そうだったんですか!? だとすると、とても失礼をしたと思うんですが……」
「いいんだ、気にするな。 領主の弟と言っても冒険者だからな。 粗野な連中との付き合いも慣れてるから言葉遣いなども気にしなくていい」
「そうだぜー? ショーマはもっと気楽に行けよー、そんな堅っ苦しい口調じゃなくて」
「あんたはもう少し慎みを覚えなさいよ。 誰にでも気軽に接すればいいってもんじゃないのよ?」
「あはは、大丈夫ですよ。 それに、これが僕の素の口調ですから。 それよりも、心臓に悪いのでもうちょっと早めに言って欲しかったですよ……」
「すまない、あまり直ぐに言うのも立場をひけらかしているみたいになってしまうのでな」
「いえ、クラウスさんにも何か考えがあってのことなら僕は気にしないです」
「そう言ってもらえると助かる。 では、行こうか」
クラウスの案内で4人は領主邸に入っていく。
門を抜け玄関の扉を開けると、この屋敷の執事長を名乗る男性が出迎えてくれた。
「おかえりなさいませ、クラウス様」
「ああ、ご苦労。 これから内密な話をするから私達のことは気にせず仕事に戻ってくれ。それと、客室の方には人を近づけないように頼む」
「畏まりました」
そう言って執事長はススっと仕事に戻っていった。
「なんか、すごいですね?」
「貴族の家に入るのは初めてか?」
「もちろんですよ。 なんか別世界のような気がしますね」
「そんな大それたものじゃないが、一応貴族の端くれなんでな。 領主邸も少しは見栄え良くしなくてはいけないんだ」
「そういうものなんですね」
「ああ。 それでは、客室まで案内しよう」
そのままクラウスは応接室へと案内をしていく。
応接室に4人で入り、しっかりと鍵を閉めていく。
人払いは済ませたので、これで内からも外からも出入りは出来ない。
「それでは話を聞こうか。 何から聞きたいんだ?」
「何でも聞いていいぞー」
「ありがとうございます。 まず、相談したいことは僕の職業についてです」
いきなりクラウスとミリアンヌが気になっていた部分を話すと言われ、2人の顔が少し引き締まぅた。
2人はそれをなるべく顔に出さないように平然を装った。
「ただ、その前に、この事はなるべく口外しない事を約束してもらいたいんです。 それと、僕はこの街に危害を加えるつもりは全くもって無いということを先に言っておきます」
「口外しない事は分かったが、なぜそんな事を言う?」
「だって、クラウスさんとミリアンヌさん、僕のこと疑ってますよね?」
その言葉を向けられた2人は驚きによってつい目を見開いてしまった。
ちなみに隣のゲイルは何が何だか分からないと言う顔をしていた。
「……なぜ分かった?」
「クラウスさんの場合は視線ですね。 人を疑いにかかる目をしていました」
「そんな事が分かるのか?」
「昔、僕の故郷でそういう目を向けられた事があって、あんまり誇れるようなことじゃないですけど、そういう目線には敏感なんです」
「故郷で?」
「はい」
(そんな目線を向けられる事に慣れてしまうような経験とは一体なんなんだろうか)
そんなクラウスの疑問を察したのか匠真は続けて口を開く。
「僕は両親がいません。 母は僕を産んだ時に、父は仕事中に突然死したんです。 父が死んだ時の葬儀で、父を慕ってたりした人からは、あいつは呪われてるんじゃないかとか、あいつのせいで両親が死んだんじゃないかとか、口には出さずともそう思っている事が目や雰囲気で伝わってきたんです。 それで、さっきのクラウスさんの目にも同じものを感じて、領主の弟って聞いてさらに確信が深まりました。 恐らく、この街に危害を加える人間かどうか疑っているんじゃないかって」
「そうか…… 過去に色々あったんだな、すまない」
「いえ、そこはもうちゃんと自分の中で折り合いは付けてますので」
「でも、少しおかしくない? だって、あなたは冒険者に成り立ての新人なのよ? そんな人が一人でこの街をどうこう出来るとは考えられないわ」
「そうですね。 ただ、ミリアンヌさん僕のこと鑑定しましたよね? もしくは、何かしらの方法で僕の職業かスキルを見ようとしませんでしたか?」
「!? ……気付いていたの?」
「はい、冒険者ギルドでなんかこう、チリっと嫌な感じがして、それがミリアンヌさんから発せられた魔力だったので、そうなのかなと」
「どうやって私の魔力だと分かったの?」
「僕に干渉してきた魔力を鑑定したんです。 出所を探るために」
「魔力を鑑定…… そんな方法、試したことなかったわ」
「その嫌な感じを向けられた後から二人の視線や雰囲気に疑いが混ざっているのに気付いたので、僕の職業やスキルが危険なものであると疑っているんじゃないかと思いました」
「なるほどね…… 納得よ」
(ここまでの話を聞くに、ショーマは相当頭がよく、慎重なのだな。 これでも貴族の一員であるから、感情や考えを顔に出さないのはそれなりに出来るつもりだったが、視線で考えを読み取られるとは)
「ショーマが私達の疑いを見破っていたのは分かった。 その上で危害は加えないと?」
「はい、恐らく僕の職業は使い方によってはかなり色んなところに影響が出てしまう力だと思います。 ただ、僕はこの力を無闇に他人のために使うつもりはありません。 誰かに感謝して使うだとか、冒険者の仕事としては使いますけど、他人に危害を加える事になるような使い方はしません。 約束します」
その言葉を聞いて少しクラウスは安心した。
この世界では、個人の力が重視されることの方が多い。
例えば戦争で何万という兵を集めようが、力のある魔法使いの広範囲殲滅魔法をまともに受ければそれだけで全滅することだってざらにあるのだ。
「これから話す上で、まずはクラウスさん達の疑いを晴らしておきたくてこういう話をしました。 疑ってるまま僕の話を聞いたら問答無用で危険人物認定されてしまいそうだと思ったので」
「そうか…… 疑って悪かったな」
「私も、ごめんなさい。 了承も得ずに鑑定してしまって」
「気にしてませんよ。 疑われてもしょうがないと思っているので。 疑いも晴れたところで、色々と相談してもいいですか?」
「ああ、そうしよう」
クラウスは改めて姿勢を正し、匠真の話を正面からしっかり聞く準備をした。
この街を、この国を動かすかもしれない力を持つ、匠真の話を聞き逃さないように。
そして、出来ればこの優しい少年の力になってやりたいと思いながら。
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