#5 異世界の街ハゾット
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匠真は現在、今作ったばかりの剣の試し斬りと、もう一つのユニークスキルであるウェポンマスターを試してみたくなったので、何か試し斬りに出来そうなものがないか辺りを見回していた。
すると、少し大きめの木の枝を見つけたので、試しに鑑定してみる。
『ウロナの木の枝』
↓
・ウロナの木から折れたもの。
・かなり丈夫で魔力も通しやすい上質な素材で、形状を整えれば武器としても使え、高級家具の素材としても需要が高い
一応危険がないか鑑定した限り切っても問題なさそうなので、匠真はそれを手に取った。
そしてそれを地面に突き刺して固定し、早速さっき作った鉄の剣を構えた。
(ん? ちょっと待って? なんでこんなすんなり構えられたんだ?)
確かに前世では剣道を嗜んではいた匠真だったが、真剣の扱いなど初めてだし、今取った構えは剣道の構えとは全然違うものだった。
(これがウェポンマスターの効果かな? なんか、体がこの武器の扱い方を知ってる感じがする)
匠真はその構えの姿勢で一つ息を吐き、迷いなく剣を一振り横薙ぎに振っていった。
その剣はなんの抵抗もなくかなりの硬度を持つはずのウロナの枝をスパッと両断することができた。
(切れ味良好、動きも良かった。 ……うん、鍛冶師もウェポンマスターも実用できるレベルだね)
自分の作った武器の性能と、それを使う技術がしっかりと身についていて匠真は一安心だった。
正直どちらかでも欠けていれば宝の持ち腐れであったかもしれない。
続けて地面に落ちていたそれなりのサイズの石にも剣を振ってみたが、木の枝よりは抵抗感があったものの、なんとこれもスッパリと切れた。
(自衛する手段は十分だね。 でも、魔法と同じようにこれも使い方は間違えないように気をつけよう)
匠真はふと、前世の通っていた道場の師範代が言っていた「強い力は自らを焼く事もある」という言葉を思い出した。
(この力がこの世界でどれくらいの力かはわからないけど、ちゃんと使いこなせるようにしないとな)
決意を固めた匠真は、先程斬ったウロナの枝とウォーターボールの試し打ちで折れた木をできる限り収納魔法に収納しておいた。
おかげで収納魔法の使用率が50%近くになってしまったが、この木は武器にも使えるらしいし、もし収納に困ったらどこかで売ったりすれば良いだろう。
そんな形で片付けも終わったので、匠真は木々の隙間から見える森の出口へと歩いていった。
魔物が出るとも聞いていたので武器は持ったまま警戒は怠らないようにする。
(ラノベの主人公とかはズンズン道を進むけど、いつ何が来るか分からないのは普通に怖いな……)
スキルという非科学的なものがあっても、これは現実ということを忘れずに匠真は慎重に森を進んだ。
そうして歩いていると、いつの間にか森の出口までたどり着いていた。
どうやら魔物などには遭遇しなかったようで一安心だ。
森を抜けると、1kmもないかという距離に壁に囲まれた大きな街が見えた。
(あれが、異世界の街!)
「お? 兄ちゃんそんなところで何突っ立ってんだ?」
「!?」
なんとなく感傷に耽っていると、突然後ろから話しかけられた。
慌てて声の聞こえた方から距離を取り、武器を構えた。
そこに立っていたのは腰に短剣を差し、革鎧を身につけている手には大きめの袋を持った茶髪の体格の良い男だった。
(森を抜けて警戒を解いてた……!)
「おいおい! そんな物騒なもん構えんなって! 別に何もしねぇよ!」
「あ、す、すいません……」
「兄ちゃん見たところ、遠いところから来た旅人ってところか? 見たことない服着てるし」
そう言われてふと自分の服を改めて確認すると、前世で最後に着ていた服のまんまだった。
(この人の服から見るに、この世界の服は前世よりもシンプルな造りっぽいな。 化学繊維とか無いっぽい)
「えっと、そうですね、そんなものです。 すいません、初めて見る街だったのでちょっと眺めてました」
「あー、こっちも急に声かけてすまんかったな。 兄ちゃんがほぼ手ぶらな上、軽装でこんな所に立ってるから気になったんだよ」
どうやら普通に親切で声をかけてくれたようだ。
「そうでしたか、ありがとうございます。 えーっと……?」
「俺の名前はゲイルだ! 兄ちゃんはなんて名前なんだ?」
「匠真と言います。 心配してくれてありがとうございます、ゲイルさん」
「いいってことよ。 ショーマはこれから街に行くところか?」
「はい。 そのつもりです」
「そうか! じゃあ一緒に行くか? 俺も採取依頼が終わって帰るところなんだ」
「いいんですか?」
「おう! あの街、初めてなんだろ? 色々と案内してやるよ!」
「ほんとですか? ありがとうございます!」
異世界での初めての人との出会いはとても良いものになった。
そのまま匠真はゲイルの案内に着いていくことにする。
「ゲイルさんは冒険者なんですね」
「おう、そうだぜ。 普段は俺含めて4人のパーティーなんだが、今日は自由行動だったもんで小遣い稼ぎに薬草採取してたんだよ」
街へ向かう道中、ゲイルから冒険者であることや街に入る時の注意点などを聞いた。
なんでも街へ入るためには身分証が必要で、冒険者だったらギルドで発行されるギルドカードで通れるそうだ。
そういうものを持っていない場合はどうすればいいと尋ねたところ、簡単な検査をして、銅貨5枚を払えば街に入る許可証を発行してもらえるそうだ。 ゲイルさん曰く、ここの領主はいい人だから、入場料が安いそうだ。
高いところだと金貨を取られるところもあるらしい。
(そんな街には行きたくないな……)
ちなみに匠真が持っている財布の中には、金貨が1枚と銀貨が5枚に銅貨が10枚入っていた。
銅貨を鑑定したところ、5枚くらいで食事処で食事が出来ると記されていたので、日本円換算で今の手持ちは約16000円くらいだと分かった。
1枚で金貨は約10000円、銀貨は約1000円、銅貨は約100円の価値があって、銅貨の下には小銅貨、銅粒ときて、金貨の上は、大金貨、白金貨、王金貨となるそうで、王金貨は1枚でなんと1000万円分の価値があるそうだ。
「お、着いたぜ」
そんなこんなでゲイルと色々話していたら、あっという間に街に着いてしまった。
近くで見ると、その街の防壁はかなり高く、10mはないだろうが6~7mはありそうだった。
「かなり高い防壁ですね」
「そうだな、土魔法使い達が頑張って建てたらしいぜ?」
「そうなんですね」
(魔法すごいな。 僕もやろうと思えばこれくらいの高さの壁を作れるんだろうか)
「止まれ!」
そんな事を思っていると、おそらく門番であろう人が待ったをかけてきた。
「怪しい服装だな。 身分証は持っているか?」
「いえ、持っていません。 検査をすれば通れると聞いたのですが、ダメなのでしょうか?」
「確かにそうだが、誰に聞いたんだ?」
「俺だよ」
僕の後ろにいたゲイルさんが身を乗り出してくる。
「おや、あなたはゲイル殿か。 この男と知り合いで?」
「いや、さっき森で会ってな、相当な田舎から来たみたいで、この辺の事さっぱり分かんないみたいだから案内してやろうと思ってな。 話してみた感じ、危険はないと思うぜ」
なにやらゲイルは有名人のようだった。
「あなたがそう言うなら大丈夫でしょうね。 すまない、一応門番だから、怪しい服装の者とかを簡単に通すわけにはいかないんだ」
「いえいえ、立場があるんですから当然ですよ。 それで、検査ってなにすればいいんでしょう?」
「ああ、こっちに来てくれ」
そう言われて連れてきて来られたのは、占いとかで使うような水晶の前だった。
「これに触れてくれればいい」
「分かりました」
早速、手の平を水晶の上に置く。
「OKだ。 もう離していいぞ」
「早いですね。 何が分かったんですか?」
「これに触れて水晶が赤く光ると犯罪歴、つまりは殺人や強盗の経験があると分かるんだ。 そう言う経験がなければ何も反応はしない」
(便利な道具だな。 さすが異世界)
「なるほど、便利ですね。 えっと、あとは、銅貨5枚を払えばいいんでしたっけ?」
匠真は財布から銅貨5枚を取り出した。
「そうだ、これは規則だから5枚は必ず貰う」
「分かりました。 でも、銅貨5枚というのは凄い良心的と聞きましたよ?」
「ああ、かなりな。 領主様は最初はただでいいと言っていたらしいが、部下に止められて泣く泣く銅貨5枚にしたらしい」
「優しい領主様なんですね」
「ああ、我々の待遇も良いし、民も殆ど不自由なく暮らすことが出来ているとてもいい街だ。 ほら、これが許可証だ。 出来ればどこかで身分証を作ることをオススメするぞ」
「お気遣いありがとうございます。 そうしますね」
「ああ、いいんだ。 引き止めて悪かったな。 もう通っていいぞ」
「ありがとうございます」
色々と教えてくれた門番に別れを告げ、門を通った。
「おう、問題なく通れたみたいだな」
先に門を通っていたゲイルが門のそばで待っていてくれた。
「はい、大丈夫でした。 すいません、お待たせしたみたいで」
「いいってことよ。 それで、どこに行きたい? 俺らのパーティーはここを拠点にして長いから大体の所は案内できるぜ」
行きたい所は山ほどあるが、最初はさっきの出来事を通して決めておいた。
「最初は服屋に行っていいですか? やっぱりこの格好だと良くも悪くも目立ってしまうので」
「ははっ、そうだな。 それじゃあ知り合いがやってる服屋があるからそこに行くか」
「よろしくお願いします」
というのも門をくぐった時から、すれ違う人達に物珍しそうにチラチラと見られているのだ。
ただ、みんな隣にいるゲイルを見て安心して去って行くが。
(ゲイルさんはかなり顔が広いみたいだな)
そんな事を思いながらゲイルの案内の下、大通りを歩いていく。
そして、門から少し歩いたところで目的地に着いたようだ。
「着いたぜ」
そこは、大通りの中だと小さめの店舗で、店先に看板が出ていた。
『服飾店 アーリ』
ゲイルについていって匠真は早速その店に入った。
「アーリー! 服売ってくれー!」
「うるさいわよゲイル! そんな大声出さなくても聞こえてるわよ……って、あら?」
服が沢山並べられている店内の奥から現れたのは、明るい緑色の髪を一つに束ねた、キリッとした目元の女性だった。
「えーっと、お客様かしら?」
「ああ、そうだ。 こいつに服売ってやってくれ」
緑髪の女性は1度こちらを見て、再びゲイルさんに視線を戻して問いかける。
「ゲイルの知り合いなの?」
「いや、ついさっきウロナの森で会って、遠いところから来て何も分かんねぇみたいだから、この街を案内してるところだ。 見たこともねぇ服装してるし、誰かが一緒にいないと街に入れないんじゃないかと思ったしな」
「ふーん、そうなんだ。 まぁ、お客様なら大歓迎よ! 私は店主のアーリって言うの! よろしくね! というか本当に見たこともない服着てるわねぇ……」
「初めましてアーリさん。 ショーマと言います。 出来れば街にいても目立たない服を売って貰えると嬉しいんですけど、大丈夫ですか?」
「もちろんよ! うちで扱う服はどれも質がいいから安心して!」
「ありがとうございます!」
(気のいい人で良かった。 なんとなくゲイルさんに口調とか雰囲気とかが似てる気がするけど、さっきのやり取りを見るに、付き合い長いのかな?)
「よし! じゃあ、あんたに似合いそうな服見繕ってくるからちょっと待ってて貰えるかい?」
「はい、大丈夫です。 ゲイルさんはどうしますか?」
「あー、どうすっかな。 アーリ、どんくらいかかる?」
「そんなにかかんないわよ。 あんたも少しくらい服見てけば? たまには着飾んなさいよ。 今日も休みなのに冒険者の仕事してたみたいだし」
「いいんだよ、俺は。 着飾るのは動きにくくなるから好きじゃねぇ」
「あっそ」
そう言ってアーリは匠真の服を見繕いに向かっていった。
「仲良いんですね」
「ん? まぁ、ガキの頃からの付き合いだからな」
「ゲイルさんもこの街出身なんですか?」
「ああ、実はな。 俺は16歳の頃に冒険者始めて各地を転々としてたんだが、今のパーティーになった時くらいにこの街の領主が変わったって聞いて戻ってきたんだ。 以来、活動しやすいからここを拠点にしてる。 しかしそん時はアーリが店やってるってのを聞いて驚いたな」
ゲイルはどうやらこの街出身だったようで、話を聞いたところ良い街になったのは結構最近らしい。
「お待たせ! あんた結構細めだけど、身長がそれなりにあるから、ちょっと試着してみてくれない? なんか違和感があったら教えて?」
「分かりました」
服を受け取り、試着室のような場所に入る。
仕切りはカーテンではなく木の板だったが、前世の服屋とそんなに差はなかった。
アーリが選んできたのは、黒のズボンに白のシャツ、それに茶色のベストのようなものを合わせたもので、ズボンは少し薄めの動きやすい素材になっており、ちょっとゴツめの色々つけられそうなベルトで留める形だ。
匠真はパパッと着替えを済ませてサイズを確認した。
(うん、サイズはピッタリだし、着心地もすごい良くて動きやすそうだね)
着替え終わったので、試着室を出る。
「お、どう? 着てみた感じは?」
「凄く着やすいです。 いい服だと思います」
「それは良かった。 気に入ったんならそれにする?」
「はい、この服を貰います。 いくらですか?」
「あー、それでね、お代なんだけど……」
アーリは何やら言いにくそうにしている。
(もしかして、この服めちゃくちゃ高かったりするんだろうか……?)
「お前の服が欲しいんだとよ」
「ちょっ! ゲイル! ストレート過ぎるだろ!?」
「いや、誤魔化す意味ないだろ。 お前がさっきからショーマの服に興味津々なのは分かってたよ」
「なにバラしてくれてんだよ! このノンデリ脳筋男!」
「なんだと!?」
「ちょっ……! 待ってください! 喧嘩しないで!」
少しの間、2人で睨み合っていたが、ショーマの手前もあってかここで喧嘩するのは自重したようだ。
「それで、僕の服が欲しいんですか?」
「あー…… そうなんだよね。 やっぱり服屋やってる身からすると、珍しい服見ると気になるっていうか、作ってみたいというか……」
最後の方の言葉はごもごもと言いにくそうにするアーリ。
「というか、この店の服って全部アーリさんが作ってるんですか?」
「流石に全部ではないよ。 古着とかは違うし、有名なブランドとも提携しててそういうのも並べてるから、私が作ってるのは6、7割ってところかな?」
(いや、十分すごいと思うけどな?)
「それで、さっきの話なんだけど…… その服のお代はいらないから、代わりにあんたが元々着ていた服を譲ってくれないかい?」
「いいですよ。 こんな素敵な服を売ってくれたアーリさんには感謝してますから。 こんなもので良ければどうぞ」
「ほんと? いやー、ありがとう! 全く、この性格の良さをゲイルにも見習って欲しいもんだよ」
「聞こえてるぞ」
不機嫌そうにゲイルがそう文句を言うが、アーリはどこ吹く風だ。
「じゃあ、取引成立ね! 今後も、服が必要になったら、ぜひ来てよ! あんたには精一杯サービスするからさ!」
「ありがとうございます。 そうさせてもらいますね」
ゲイルの文句をまるっと無視してアーリは匠真に対して礼を言った。
「ゲイルさん、お待たせしました」
「おう、いいってことよ。 アーリ、がんばれよ」
ゲイルはそう言うとニカっと笑い先に店を出ていく。
「アーリさん、ありがとうございました」
「こちらこそ、今日はありがとね! また来てよ!」
「はい、また来ます」
アーリとそう言葉を交わして匠真もその後に続いていった。
ゲイルによる街案内はまだ始まったばかりだ。
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