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#2 再会

21時にもう一話投稿します


このお話を見てくださりありがとうございます!


まだ送ってない方は☆☆☆☆☆評価やブックマーク、いいね等を送ってくださると嬉しいです!


作者の更新と執筆のモチベが上がりますので!


感想もいつでもお気軽に送ってください!

 爆発的な光に包まれた匠真は、その光が晴れると、よく知っている生前の自分の部屋の中にいた。



「ここは?」


「匠真さんと手を繋いだ時に、少し記憶を覗かせてもらって、両親と話すのならばここが一番話しやすいかなと思ったので、似たような空間を再現しましてみました」


「なるほど…… 確かに話しやすいと思う、ありがとう。 それで、父さんと母さんは……?」


「リビングの方にいると思います。 それでは私は別のところで待っていますので、一時間後に迎えにきますね」



 フォルティはそう言うとシュンッとどこかに消えてしまった。



「リビングの方にいると言っていたよな……」



 匠真はリビングに向けて、自分の部屋を出た。


 階段を降り、廊下を抜け、リビングの扉の前に立つ。


 そこにあるのは見慣れた扉のはずなのに、何故だか開くのを躊躇ってしまう。



(……躊躇っていてもしょうがないな)



 息を吐き出し、意を決して扉を開いた。


 見慣れたリビング、その真ん中にある机と椅子。


 そこには……



「おう、おかえり」



 五年振りに会った何も変わってない父と、



「おかえりなさい、匠真」



 かつて写真で見た時のままの微笑みでこちらを見つめる、母がいた。


 匠真がその二人を見た瞬間、とにかく色々な感情が込み上げてきた。



「父さん…… 母さん…… その……」



 言葉が出てこない。


 二人に会えたらこれを言おう、あれを言おうと思っていたことが沢山あった。


 それなのに、いざ目の前に2人が来たら何も考えられなかった。



「おいこら、匠真」



 そんな少しパニックになっていた匠真に、父が強い口調で声をかけてきた。



「こっちは、おかえりって言ったんだぞ? なら、初めに言うことは決まってんだろうが」


「もう、お父さんったら、そんな強い口調で言わなくてもいいじゃない。匠真が困ってるわよ?」


「……うるせぇ」



 初めて見る、両親同士の会話に呆気にとられた。


 同時に、父と母の関係性が少し分かった気がして、自然に笑みがこぼれてしまう。



(何を迷っていたんだろう)



 家に帰って、家族に会ったら、言うことなんてただ一つしか無かった。



「……ただいま。父さん、母さん」



 匠真が少し鼻声で両親の方を見てそう言うと、2人とも笑って、



「「おかえり、匠真」」



 帰ってきた息子に、親愛がこもった声をかけた。


 その瞬間、匠真の目からは大粒の涙が零れた。


 

(ああ、帰ってきたんだ…….)




 *




「落ち着いたか?」


「うん…… ありがとう父さん、母さん」


「おう、気にすんな」


「いいのよ、ふふっ」



 匠真が泣いている間、父さんと母さん優しく匠真に寄り添い、頭や背中を撫でてくれた。


 その慈愛のこもった優しい表情を隠そうともせずに。

 

 それから少ししてからお礼を言うと、母が父の方を見て、やけにニコニコしていた。



「……なんだ?」


「いえいえ、なんでもありませんよ? ただ、私がいない間、しっかりお父さんしていたんだなー、と思っただけで」


「うるせぇよ」



さっきも見たようなやりとりが繰り返される。



「二人とも、仲良いよね」


「あら、そう見える? 息子に見られるとちょっと照れ臭いわね」


「……………」



 母さんはニコニコとしながら、ちょっと恥ずかしそうに、父さんは照れ隠しなのかそっぽを向いてしまった。



「それで、父さん、母さん…… 二人に会ったら、まずは謝りたいと思ってたんだ。 僕のせいで、関係ない二人が死んでしまうことになってしまって、本当にご………… 痛ったぁ!!!」


「バカ言ってんじゃねぇよ」



 匠真が謝ろうと頭を下げようとしたところに、父の強烈なデコピンが入った。



(これっ…… 久しぶりに食らった…… 小さい頃、悪いことをした時には、決まって父さんにはデコピンされて、その後、頭を撫でられて笑って許されるということが何回かあったけど……)


 

 思わずジト目になって父を見ると、父はふん、と鼻を鳴らして匠真のことを見ていた。



(なんで、デコピンされたんだろうか? 僕は謝ろうとしただけなのに……)



その行動の意味は、父さんの言葉を継いで母さんが答えてくれた。



「そうよ、匠真。 謝ることなんてなんもないの、お父さんとお母さんは匠真のことを生んだことに後悔はないし、もし、そのせいで私達が死ぬって分かっていても匠真のことを生んだと思うわよ?」



 母さんの言葉に頭が真っ白になった。



(なんで、そんな風に言えるんだ……? いくら親だからと言って……)



「親だからだよ」



 僕の表情から、なにを考えているか察したのだろう。

 

 父はそう言った後に続けていく。



「親っつーのはそういうもんなんだ。 子供のためだったらなんだって出来る。 それは…… あー、その、なんだ…… 」


「ふふ、愛してるからよ」


「……そう、それだ。 だから、謝んじゃねぇよ。 息子から謝られたら、お前を産んだことを否定されてるようじゃねぇか」



 ぶっきらぼうに父はそう言い放った。


 母の方を見ると、父と同じ考えなのかうんうんと頷いていた。



「……ほんとにごめ」


「謝んなつってんだろうが」


「……はい」



 そう言われて、匠真は頭を上げた。


 今度は父と母の顔を真っ直ぐ見つめて、さっきみたいな悲しみや申し訳なさではなく、とびっきりの感謝、そして愛を込めて……



「父さん、母さん、本当に…… ありがとう。 僕を産んでくれて、育ててくれてありがとう。 僕は二人の子供で幸せだよ」



 思いを告げた。



「……おう」


「いいのよ。 こちらこそ、生まれてきてくれてありがとうね」



 母は、とても嬉しそうな表情で言葉を返してくれた。


 その表情は子への愛に満ち溢れ、とても魅力的な表情だと感じた。


 父は顔を背けてしまったので表情が読み取れなかったが、顔を背ける直前、目尻に光るものが見えた気がする。


 ただこれは指摘するのも野暮だと思うので、黙っておくことにした。



(……少しは親孝行出来ただろうか? 生前は、なにも返すことは出来なかったけど、少しは両親にもらったものを返すことが出来ただろうか)

 

 

 どこか、幸せそうな雰囲気を見せる両親を見て、匠真はそんなことを思った。

 

 そうして気持ちを伝え合って、安らかな気持ちになったところで、色々と匠真は気になったことを聞いてみることにした。



「そういえば、二人共、よく僕のことが分かったね? 父さんはともかく、母さんは僕の顔なんて全く知らないのに、この部屋に入って来た時、確信持ってたみたいだけど、なんで分かったの?」


「んー、話すと長くなるんだけど…… そうね、匠真はここに来る前に女神さんに会った?」


「フォルティを知っているの?」


「知ってるもなにも、私もお父さんもあの女神さんに会っているのよ。 ね、あなた?」


「ああ、会ったな。 んで、対面した瞬間土下座されたな」



(あー、父さんも母さんもフォルティに土下座されたのか……)

 

「それでね、匠真の不幸体質のことを教えてもらったの。 それと同時に、『お詫びとして、匠真さんが死んでしまった時に、会って話すことを望みますか?』 って聞かれた」


「……そうだったんだ」


「もちろん望みますって即答したわ。 もう話すことも叶わないと思ってたことが叶うと聞いて、いてもたってもいられなかったからね。 そこからは、色々話を聞いて、その時が来るまで備えようって話になっていたんだけど……」


「けど?」


「俺が死んじまったんだよな」



 ずっと母の横で話を聞いていた父が、母の代わりにそう告げてきた。



「そうなのよ。 今まではお父さんが、匠真の近くにいたから安心していたけど、お父さんが死んでしまって、とても不安になったわ。 それで、私達二人で女神さんに、どうにかして匠真のことを見守れないかって頼んでみたら、すごい悩んでたけど女神さんと一緒に匠真の生活を見せてもらえることになったのよ。 だから、匠真がどんな顔でどんな性格なのかとかは知っていたの」


「そうだったんだ」


「そう。 だから、匠真が最後に女の子を庇ってトラックにひかれた所も見ていたわ。 その瞬間を見た時は、死んでいるのに心臓が止まったかのような感覚だったわね……」



(そんなところまで見られていたのか…… 確かに、自分の子供が死ぬところなんて見たくないに決まっているよな…… あ、そういえば……!)



「もしかして、その場面を見てたなら、あの女の子がどうなったか分かったりする?」


 

 匠真が気になったのはあの時、匠真が庇った女の子のことだ。


 庇ったはいいものの、その後どうなったのかは死んでしまったため匠真には分からなかった。



「ああ、あの女の子なら無事だぜ。 流石に骨の何本かはヒビ入ったりしたみたいだが、匠真がしっかりと抱え込んで庇っていたおかげで命に別状はなかったみたいだ」


「そっか…… 助かったんだ。 それなら良かった……」


「ついでに言っておくと、その後が気になってちょっと見てたんだが、匠真の葬式にも来てたぜ。 お前の写真の前で、泣きながら謝ってたよ。 それで、最後は『私のことを守ってくれてありがとう。 お兄ちゃんの分も頑張って生きていきます』って言ってたな」


「そう言ってもらえたなら、助けた甲斐があったかな」



(僕のことは忘れてくれていいんだけど、そうもいかないならせめて、あの子が強く生きれるように願うことにしよう)



「匠真が死んでしまったのはとても悲しかったけど、そのおかげで一つの命が救われたって思うと、少し誇らしく思うわ。 ほんと、自分より他人を助けようとするなんて誰に似たのやら」



 そう言いながら母は、クスクス笑いながら父の方を見る。


 父はそれを受け、明後日の方向を向いた。



「どういうこと?」


「ふふっ、お父さんも昔、私が高校生の頃ガラの悪い人達に絡まれて困っていた私を助けてくれてね。 三人くらいだったかしら? そんなガラの悪い人達に向かって『困っているから離してやれ』って言ってくれたのよ」


「それで、どうなったの?」


「もちろん、向こうは拒んだわ。 人数も多いし負けるわけないと思ったんでしょうね。 そこからはもう、大喧嘩よ」


「え、三対一で? 大丈夫だったのお父さん?」



 じっと話を聞いていた父さんに視線を向ける。



「ああ、一応それなりに武道の経験があったからな。 お前も行っていた、道場の師範代の爺さんに色々仕込まれていたし」


「あー、あのお爺さんか……」



(僕がその道場に行っていたのは父さんが死んでしまった時までだったけど、結局、あのお爺さんには一撃も入れることは出来なかったな)



「それでね、流石に武道をやっていたと言っても三対一だったから、不良達が逃げていく頃にはお父さんもボロボロになっててね。 なのにまず私の事を気遣って 『怪我はないか?』って言ってくれたのよ? そこで私はお父さんに惚れちゃったわ♡」


「それは確かにカッコいいね」


「でしょー? それで、その後、平気そうな顔してたけど、やっぱりキツかったみたいで、お父さん倒れちゃってね。 私の実家の近くだったからそこに運んで介抱したの。 それで、目を覚ましたお父さんはお礼だけ言って、さっさと行こうとしたんだけど、私は呼び止めてこう言ったの。『あなたの姿を見て惚れました。 私とお付き合いしてください』ってね」


「おぅ…… それはなんというか、行動が早いね?」

 

 

(でも確かに、そこで別れてしまったら、二度と会えないかもしれないって考えると、その行動も理解できるのかな?)



「父さんは、それでどうしたの?」



 なんとなく居心地悪そうに黙ったままの父にも話を聞いてみたくなったので、匠真は話を振ってみた。



「……最初は断った。 俺みたいなつまらん男を好きになってもいい事はない。 君にはもっといい人がいるって言ったよ」


「そしたら?」


「怒られた」


「へ?」


「『勝手に私の気持ちを否定しないでください。 私があなたを好きになったのは間違いないことで、私にとってのいい人はあなたです。 それに、あなたがつまらないかどうかも私が決める事です。 なので、連絡先を教えてください。 あなたをもっと知りたいんです』ってな」



 母はものすごく強い女性だった。



「それで、お父さんも折れたのか連絡先教えてくれてね? それからは、私のことを好きになってもらいたくて猛アタックしたわ。 告白も私からで、改めて付き合ってくださいって言ったら、お父さんもOKしてくれたの」



(母さん、すごい行動力だな……)



「そこから付き合い始めて、お父さんは高校卒業した後すぐに実家の鍛冶師の仕事を継いで、私はそんなお父さんを支えたかったから進学して、色んなことを学んでその後、私が大学卒業して二年くらいした時に、お父さんからプロポーズしてくれたの」


「お父さんからだったんだ?」


「……最後まで母さんに言わせてたら情けないだろ」



 明後日の方向を向いたまま、父さんはそう言う。



「それでね、お父さんのプロポーズの言葉がね……」


「オイ。 そこまででいいだろ」


「え~、匠真にも聞いてもらいましょうよ~」


「ダメだ」


「なんでよー?」


「……二人だけの秘密ってことでいいだろ」


「それもあるかもしれないけど、一番は恥ずかしいからでしょ?」


「……チッ」



 父は不機嫌そうに舌打ちした。



「まぁ、二人だけの秘密ということにしましょうか。 ……とてもいい言葉だったのに、匠真に教えられなくて残念だわ」


「あはは…… いいよいいよ。 ここまでの話で父さんと母さんの馴れ初めは十分、分かったから」



 これ以上匠真が聞いたら、本当に父が怒りそうだったから自重した。



「匠真も好きな人が出来たら、ちゃんと自分から言うのよ? 出来ればその子が喜びそうなことをね! 女の子はそういうことを、好きな人に言われたら本当に嬉しいものだから」


「いや、母さん、僕もう死んでるんだけど?」



(死んだ自分に好きな人なんて出来ることはないだろう)



「え? あ、もしかして、まだ聞いてないのかしら?」


「そうみたいだな」


「ん? どういうこと?」


「うーん、なんでもないわ! この後、女神さんが話すと思うし、私たちは余計なことは言わない方がいいわね」


「そうだな」



 なにやら二人で納得してしまった。


 

(一体なんなんだろうか?)



 


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