最終話 あなたの人生の物語
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それから数日は、葬儀屋や清掃業者が屋敷を出たり入ったりして、割と忙しかった。
屋敷の周囲で死んだ人たちの葬儀が終わると、サナの死刑が取り消されたことを示す書面が届いた。
イストマロン孤児院も無事に修復が終わって、メイリャさんと子供たちはそちらに帰っていった。
ロデリアさんも、ナール王国各地で平和について講演したりして、平和外交派の仲間を増やしているそうだ。
「……今回の件で、王国の情勢は大きく変わったのです」
僕とサナは汽車に乗っていた。
蒸気機関とかいうすごい仕組みで動く乗り物で、何十人もの人々や大量の荷物を一度に運ぶことができるのだという。
窓の外を眺めながら、サナは言葉を続ける。
「王国騎士団の団長が国境の戦闘で死亡したことにより、団長が交代。ヴァイスニクス家の息のかかったものが後任を務めることになったそうなのです。また、ゼステイウ家の当主は乗馬中の事故により死亡。当主の突然死による跡継ぎ問題で内乱状態なのだそうですよ。ですので、現在の政治機能は実質ヴァイスニクス家が独占していることになるのです」
なるほど、難しいことはよく分からないが色々大変なんだな。
誰がそんな原因を作ったのか全く心当たりがない。
……まさか僕?
いや仮にそうだとしても、それは相手の自業自得っていうか……。
ふと、シュイミ・ヴァイスニクスの顔が脳裏を過った。
「……その話なんですけど、つまり、今回の件はヴァイスニクス家の一人勝ちってことですか?」
サナが頷く。
「軍事組織である騎士団の実権の確保と政治機能の独占。シュイミにとっては願ってもない結果になったのだと思うのです」
「じゃあ、僕たちは……」
「シュイミの掌で踊らされただけ、という考え方もできるのですよ」
「……………………でもお嬢様の死刑は回避されたわけですし」
「その通りなのです。イル君は私のために精一杯頑張ってくれたのです。問題はそれを利用して自らの利益にしようとする人間がいること。私の命さえも結局は政治の道具として使われたのです。私がサウザントルル家の人間で、ナール王国にいる限り、そうした思惑からは逃れられません」
「なんだか……疲れましたね」
「ええ。だからこそ私たちは、ナール王国の外に出るべきだと思ったのです。部屋の中で平和を求めるだけではいけないと、分かりましたからね」
汽車が速度を落とし、停車する。
次の駅――僕たちの目的とする駅に到着したのかもしれない。
外を見ると、看板には【シュルルツ】の文字があった。
シュルルツ――魔導国グラヌスの首都の名前だ。
「見た目は案外変わりませんね、僕の知ってる街と」
僕は座席の上の棚から荷物を下ろしながら言った。
「それは分かりませんよ。まだ私たちは到着したばかりなのですから」
「変な人に会わなきゃいいですけど」
僕らは狭い通路を抜けて、汽車を降りた。
「……では行きましょうか、イル君」
「はい、お嬢様」
サナが荷物を引いて歩き出す。
僕はその後を追って歩き始めた。
そしてこれからもずっと、そうしていくのだろう。
僕はサナの執事なのだから。
それが、僕の選んだ生き方なのだから。
くぅ~疲れましたw これにて完結です!
実は、ラノベ新人賞取った流れでなろうでも書籍化できるんじゃねと思ったのが始まりでした。
本当は話のネタなかったのですが←
思い付きを無駄にするわけには行かないので流行りのネタで挑んでみた所存ですw
最後ですが、この作品を少しでも面白い、楽しかったと思っていただけたならページ下部の評価欄☆☆☆☆☆から★を頂ければ幸いです。あとはレビューとか・・・。
よろしくお願いいたします!!




