第66話 剣術すら使えない無能は不要
タイトル回収しときますね~
「久しいな、イル。せめてエッヂア家の恥にならぬように死んでくれとは思っていたが……」
「僕もあんたに会うつもりは無かったよ。だけど僕にも事情があってさ」
僕の言葉に、父親――ザファーは顔を顰めた。
「王国騎士団長に向かってその口調はなんだ? お前をその年まで育ててやったのは誰だと思っている?」
「まだ僕の親のつもりでいるの? 屋敷から僕を追い出したのは誰だったっけ」
「しばらく見ない間に随分と生意気な口をきくようになったな。もう一度教育しなおす必要があるようだ」
「教育? まだそんなこと言ってるの? 僕は今日、あんたを殺しに来たんだけど――」
まあいいさ。
僕を甘く見てもらっていた方が、殺しやすいだろう。
「私を殺す? お前のような無能がか?」
笑い交じりにザファーは言った。
「あんたがサナの――サウザントルル家を襲撃したってことは知ってるんだ。そのせいでサナの両親が死んだ」
「サウザントルル? あの売国奴のことか? あいつは死んで当然のことをした。野蛮な隣国と平和的な交渉など出来るわけないだろう。だからゼステイウ家の命令で襲撃した」
「何も……思わなかったのか?」
「何を思う必要がある? 私は命令で、我が国の反乱因子を掃討しただけだ。他のサウザントルル家の人間もそうだ。ヴァイスニクス家の依頼で小娘一人は生かしておいたが―――」
そうか。
そうなのか。
「あんたは僕の敵だってことがはっきり分かったよ。今までの恨みも晴らさせてもらう」
「恨み? さっきから何を言っているのか分からんな。お前のような役立たずを生かしておいてやったのは私だ。感謝こそされても恨まれる理由は無いだろう」
「もういいよ、黙って死ね」
【付与】を限界まで重ね掛けした状態で、僕はザファーへ接近した。
その僅かな時間で、ザファーが僕に剣先を向ける。
「剣術すら使えない無能は不要だ。エッヂア家の恥さらしはやはりこの手で殺してやろう」
「――――!?」
剣が閃く。
僕は身を捩って横へ跳んだ。
剣先が僕を追って動く。
バカな。
どんな反応速度だよ――っ!
「【爆発】」
「っ!」
直後、僕の眼前で爆発が起こった。
全身が爆炎に包まれ、身体中が引き裂かれるような衝撃が走った。
地面が抉れ、砕けた岩が周囲に弾け飛んだ。




