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第63話 事故ならば


「じゃあどうするんですか? 戦争するしかないってことですか?」


 シュイミは首を振る。


「緊張状態を保ち、開戦させない(・・・・・・)のよ。その上で問題を解決するタイミングを待つの」


「緊張状態が限界を超えるとどうなるんですか?」


「お互いの国が亡びるまで争い続けるしかないでしょうね。少なくとも現在は、シュバルツマヴロ帝国と魔導国、そしてこのナール王国が互いを牽制し合っている状態が維持されている。そんな状態で、この国だけが武力を捨てて平和路線に転向すればどうなると思う?」


「他の二国から侵攻されて滅びる―――ですか」


「私もそう思うわ。だから、表立って平和を謳うわけにはいかない。だから―――サナの父親は殺すしかなかった。実際あの当時、サナの父親によって平和外交派の勢力が強まった瞬間、他の二国は軍隊を国境付近に動かし始めたのよ。いつでもこちらに侵攻できるようにね」


「だったら――どうしてサナのお母さんまで殺したんですか? 影響を持っているのがサナのお父さんだけなら、殺すのはその人だけで良かったんじゃないですか?」


「あ、それは私関わってないから」


「え」



 あまりに軽妙な返事に、僕は思わず声を漏らした。



「だから、私が計画したのはサナの父親の暗殺だけ。本来なら馬車の事故に見せかけて殺害する予定だったのよ。晒し首なんて野蛮な方法を考えたのはゼステイウ家。もちろん、サウザントルル家を潰しにかかったのもゼステイウ家よ」


「な―――」


「ちなみに、ゼステイウ家に命じられてサウザントルル家を襲撃したのはエッヂア家」



 言葉が出なかった。

 聞き間違えたかと思った。

 しかし、僕の耳にはシュイミの声がはっきり残っていた。



「エッヂア家が……僕の父親や兄が、サナの家族を……?」


「君のお兄さんはまだ小さかっただろうから、やったのは君のお父上。現騎士団長のザファー・エッヂア。当時は副団長クラスじゃなかったかしら。君のお父上は、サウザントルル家を滅ぼした功績を称えられて騎士団長になったのよ」


「………………」



 僕はソファから立ち上がった。

 シュイミは驚いたような顔をして、言った。



「あら、どこへいくの?」


「話はもう充分でしょう。国境の戦闘地帯へ行きます。準備をお願いします」


「そう。ではすぐに馬を用意しましょう」


「一つ確認なんですけど」


「何かしら?」



 シュイミが首を傾げる。


「騎士団の救援にはいきます。彼らが撤退できる時間は稼ぎます。しかし―――騎士団長の命は保証できませんよ。何らかの事故で死んで(・・・・・・・・・・)しまうかもしれない(・・・・・・・・・)


 僕が言うと、シュイミは薄い笑みを浮かべた。


事故・・ならば、仕方ありませんね」




※※※




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