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第59話 両親の仇


「お互い思い出話もあるでしょうけれど、さっそく本題に入りましょうか。ゼステイウ家が画策したサナ・サウザントルルの殺害計画。これによって降りたサナの死刑判決を取り消すよう政治的に働きかけて欲しい――それが、平和外交派から受けた話だけど、これに間違いはない?」

「間違いありません」

「もう、どうしてそんな話し方するの? 前みたいに仲良くお話しましょうよ」

 わざとらしく頬を膨らませながら、シュイミは言葉を続ける。

「それとも―――両親の仇とは仲良くできないかしら?」


 ぎりっ、とサナが歯を食いしばる音がした。

 シュイミは愉快そうに笑い声をあげる。


「あはは、やっと正直に反応してくれたわね。嬉しいわ。幼馴染同士、本心で話し合いましょうよ」


 両親の――仇?

 この少女がサナの両親を暗殺したってことか?


「この場で最も本心を隠しているのはあなただと思うのですよ、シュイミ」

「さあ、それは分からないわね。私の本心は私にさえ分からないのよ」

「……ヴァイスニクス家の当主になるために、自ら両親を暗殺した(・・・・・・・・・)人間の言葉とは思えないのです」

「それは私の両親が愚かだったからよ。愚かな人間に国を動かす資格はないわ」

「私のお父様も愚かだったと言いたいのですか?」

「平和を望む心が愚かだったとは言わないわ。やり方が愚かだったのよ。平和外交派なんて三流の思想集団の傀儡になるというやり方がね」

「……………」


 ロデリアさんは黙ったままだった。


 このシュイミって子、底が見えない。


 今話していることも本当のように聞こえるけれど、それが本当に本当(・・・・・)なのかが分からない。


「死者を愚弄する人間が、愚かでないと私には思えないのです」

「人間性と政治的な資質は必ずしも兼ね備えておかねばならないものではないのよ。とはいえ、サウザントルル家を根絶やしにしてしまおうっていうゼステイウ家のやり方は少々エレガントさに欠けていると思うわ」


 サナの反応を伺うように、シュイミは目を細めた。


「……あなたはゼステイウ家に反対する立場にあるということですか?」

「サナの死刑を取り消すこと自体は難しくないわ。私が直接、司法に掛け合えばそれで済む話だもの。でも、そうするとヴァイスニクス家は前面からゼステイウ家と対立することになる。諸外国と戦争になるかもしれない今、内政面での不安を増すようなことは出来ないの」

「……何が言いたいのか分からないのです。私の死刑は覆らないということですか?」

「あなたの死刑を取り消させるためには条件があるってことよ。私がゼステイウ家と交渉するためには、相手を納得させるための材料が要る。例えば、戦略的に価値の無い場所の防衛を命じ、騎士団を壊滅状態に陥らせているミスを取り返してあげる……とかね」

「騎士団が壊滅状態? どういうことなのですか?」


 サナの問いに答えるように、シュイミは口元に笑みを浮かべた。


「魔導国グラヌスが、我が国との国境沿いの戦力を増強したの。ゼステイウ家の間抜けさんはそれが気に入らなかったのね。だからすぐに騎士団を派兵した。それも、騎士団長率いる部隊を」


 騎士団長。

 その響きに僕の心臓はイヤな音を立てた。

 

 騎士団長って僕の父親のことじゃん。


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