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第53話 裁縫


「ところでお嬢様、その首の傷は誰が手当てを?」

「これですか? イル君のお兄様が専属のお医者様に命じて治療してくださったのです」

「……………」

「なんで歯ぎしりしてるんですか、イル君……」

「いや別にお嬢様の首筋に触れたその医者に嫉妬してるわけでも、傷つけたのは自分のくせにわざわざ治療させるあいつのやり口にムカついてるわけでもありません。傷跡が残らなければいいな、と思ってるだけです」


 くそ……なんだあいつ。

 カッコつけやがって。

 治療するくらいならお嬢様に怪我させるなよな。

 雨に濡れる捨て犬を拾って優しさをアピールする作戦か?


「イル君の方こそ、怪我は大丈夫なのですか? 服もずいぶん傷んでいるようですが……」


 サナに言われ着ている服を見下ろす。

 確かにひどいやられようだ。買ってもらったばかりなのに。

 服のことは真っ先に謝ろうと思っていたんだった。すっかりタイミングを逃していた。


「すみません、お嬢様。せっかくの服を……」

「気にすることはないのですよ。イル君が無事ならそれでいいのです。もしよければ私が直してさしあげましょう」

「え? お嬢様、お裁縫ができるんですか?」

「ふっふーん。私は由緒正しき御三家の生き残りです。その令嬢として一般的な作法は身に着けているに決まっているのです」


 そ、そうだろうか。

 その割には僕が来る前のお屋敷は……。

 いや、もしかすると裁縫だけが得意というパターンもあり得るかもしれない。


「お嬢様、ちなみに裁縫ではどういったものをお作りに……?」

「そうですね、ドレスの穴を直そうとして最終的に雑巾になってしまいました。すごく手触りのいい雑巾が出来たのですよ」

「…………………………」

「な、なんですかイル君その顔は! 大丈夫なのです! 私に任せるのです!」

「ありがたいんですが、お気持ちだけで……」

「もう、遠慮はいらないのです。ほら、みんなもお屋敷に戻るのですよ」


 サナが周囲で遊んでいた子供たちに声を掛ける。


 うーん。


 サナに修繕を任せるのは危険そうだから僕も手伝おう。


 というかむしろ、サナに手伝ってもらって僕がメインでやった方が……。


 いや、それだとサナのプライドを傷つけることになるのか?


 サナはプライドとか気にしない気もするけれど――そうか、僕がサナに縫い方を教えてあげればいいのか。そうすれば雑巾になるはずだったものがタオルくらいにはなるかもしれない。


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