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第46話 完璧な作戦


「つまり僕が何をしても、それは存在しない人間が行ったことになる。だからサナに迷惑が掛かることも―――あなたたち平和外交派の汚点になることもない、というわけですね」

「……その通りです、イルさん。我々をどのように罵ってくださっても構いません。我々は本当に人間として最低なことをしようとしている。それは重々承知しています。しかしそれでも――サナ様を救うには手段が無いのです。イルさん、本当に申し訳ありません」


 ロデリアさんは僕に向かって深々と頭を下げた。

 僕は何も感じなかった。


「顔を上げてください、ロデリアさん。良いですか、サナと出会うまで僕は死ぬつもりだったんです。そして僕は今でも、死ぬならサナのために死のうって思ってるんです。だからあなたたちが謝る必要はありません。あなたたちはサナの死刑を取り消すために全力を尽くしてください。僕は僕の役目を果たしますから」

「イルさん……」

「作戦の詳細と、サナの現在位置を教えてください。まだ遠くへは行っていないはずです」

「分かりました。しかしその前に……メイリャ」

「はい、ロデリア様。……イル様、こちらへ」


 メイリャさんは片手に救急箱を持っていた。


「なんですか?」

「ひどい顔です。少し治療をするべきだと思います。私個人の意見ですが」


 そういえばジャックに殴られた傷はそのままだった。

 頬のあたりを触ってみると、血の跡が残っている感触があった。


「でも、時間が……」

「そんな顔でサナお嬢様にお会いになるつもりですか?」

「…………」



 そう言われれば仕方ない。

 僕は素直に傷の手当てを受けることにした。



※※※



 ロデリアさんの立てた作戦はこうだ。


 まず、僕がサナを取り返す。

 平和外交派の交渉力でヴァイスニクス家を動かし、ゼステイウ家にサナの死刑を撤回させる。


 完璧な作戦だ。


 それが可能かどうか微妙だって点に目を瞑れば―――いや、疑うのはやめよう。ロデリアさんたちが居なければヴァイスニクス家と交渉なんて出来なかったのだから。


 信じてるぜ、ロデリアさん! ちゃんとサナを無罪にしてくれよな!


 というわけで僕は今、ジャック率いる騎士団の野営地が見下ろせる地点に来ていた。

 深い森の中で、既に日は暮れている。夜襲にはぴったりのシチュエーションだ。

 そして今の僕は、サナから送ってもらった執事の服に身を包んでいる。

 テンション的にも爆上がり、さてここからひと暴れあっという間にサナ奪還といきたいところだけど……。


「かなりの人数ですね。ここは二手に分かれて行動すべきだと思いますが。もちろん私個人の意見です」

「…………」

「イル様は多人数との戦闘にも慣れていらっしゃる様子。ここはイル様に囮となっていただき、私がサナ様をお助けしましょう」

「……いやその前になんであなたが居るんですか、メイリャさん」



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